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木曜日だった男 [20世紀イギリス文学]

 「木曜日だった男」 チェスタトン作 南條竹則訳 (光文社古典新訳文庫)


 無政府主義者たちの集会に紛れ込んだ刑事が、荒唐無稽な体験をする物語です。
 探偵小説の形をとっていますが内容は幻想的で、哲学的な面もあります。

 光文社古典新訳文庫で出ています。訳は新しくて分かりやすいです。
 創元推理文庫の吉田健一訳も、根強いファンを持っています。 


木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)

木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: チェスタトン
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/05/13
  • メディア: 文庫



木曜の男 (創元推理文庫 101-6)

木曜の男 (創元推理文庫 101-6)

  • 作者: G.K.チェスタトン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1960/01
  • メディア: 文庫



 詩人サイムは秘密厳守の約束で、無政府主義の隠れ家に連れて来られました。
 その集会で彼は、急逝した評議員「木曜日」の後任に選任されてしまいました。

 こうして秘密組織の一員となったサイムは、実は刑事でもあったのです。
 彼は、組織の陰謀を阻止し、議長「日曜日」の正体を暴こうとしますが・・・

 と書くと、探偵小説のようですが、実際ははちゃめちゃなドタバタ劇です。
 副題は「一つの悪夢」。まさに、悪い夢です。

 敵だと思っていたら味方だったり、味方だと思っていたら敵になっていたり。
 相手に追われている展開が、いつのまにか追っている展開になっていたり。

 物語はどんどん抽象的になり、曖昧になって、わけがわからなくなります。
 正直に言って、途中から物語の流れに付いていけなくなりました。

 組織のボス「日曜日」とは、結局何者だったのでしょうか?
 この大騒ぎには、いったいどんな意味があったのでしょうか?

 「この世界の秘密を教えてやろうか? それはね、僕らは世界の裏側しか知ら
 ないっていうことなんだ。我々はすべて物を後ろから見る。・・・」(P292)

 結局、警察も無政府主義者も、見方が違うだけで同じだ、と言いたかったのか。
 現代社会に対する風刺と皮肉が込められている、ということは分かるのですが。

 訳者の解説では、作品の解釈についてはほとんど書かれていませんでした。
 解釈のヒント、あるいは考える糸口のようなものを、示してほしかったです。

 さて、チェスタトンはむしろ、「ブラウン神父」シリーズで知られています。
 同じ南條訳で、ちくま文庫から「ブラウン神父」シリーズの新訳が出ています。


ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

  • 作者: G.K. チェスタトン
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/12
  • メディア: 文庫



ブラウン神父の知恵 (ちくま文庫)

ブラウン神父の知恵 (ちくま文庫)

  • 作者: G.K. チェスタトン
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/01/07
  • メディア: 文庫



 さいごに。(魔法を使えよ)

 娘は、「不審者に追いかけられる夢をよく見る」と言っていました。
 そのとき「これは夢だ」と分かっていながら、何もできないのだそうです。

 「夢だと分かっているなら、魔法を使って逃げろよ」と言ってやりました。
 でも、そんなことはできない、と言うのです。自分の夢なのに!

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