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ガラスの鍵 [20世紀アメリカ文学]

 「ガラスの鍵」 ハメット作 池田真紀子訳 (古典新訳文庫)


 一賭博師がボスのために命がけで陰謀を暴く、ハードボイルド探偵小説です。
 1931年に発表され、ハメット自身が最も愛した作品と言われています。

 2010年に古典新訳文庫から出ました。訳はとても分かりやすかったです。
 創元推理文庫の大久保訳は絶版ですが、硬質な文体で根強いファンがいます。


ガラスの鍵 (光文社古典新訳文庫)

ガラスの鍵 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ダシール ハメット
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/08/10
  • メディア: 文庫



ガラスの鍵 (創元推理文庫 130-3)

ガラスの鍵 (創元推理文庫 130-3)

  • 作者: ダシール・ハメット
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1960/05/20
  • メディア: 文庫



 主人公ボーモントは賭博師で、マドヴィッグ家の食客として暮らしています。
 マドヴィックは親友でありボスであり、その街の市政を握る実力者です。

 ボーモントはマドヴィッグから、選挙で上院議員を後押しすると聞きました。
 さらに上院議員の娘と結婚するとのこと。どこか陰謀の匂いがします。

 その後、上院議員の長男が死体で発見されました。
 そして、マドヴィックの犯行を匂わす手紙が、主要な人々に送られました。

 上院議員の息子を殺したのは誰か? 陰謀を企んでいるのは誰か?
 ボーモントは、マドヴィックの無実を信じて、この陰謀に立ち向かい・・・

 冒頭の会話部分から、いっきに物語の世界に引き込まれました。
 そして、最後までぐいぐいと引っ張られるように、読み続けました。

 この物語の魅力は、主人公のボーモント。悪党ですが、魅力的な悪党です。
 非情ですが独特の流儀を持っていて、親友のためなら命がけで行動します。

 彼は賭博師で、生活は危なっかしいが、その行動はもっと危なっかしい。
 必要とあれば、一人で敵陣に乗り込んでいくようなバカなことをします。

 しかし、その行動の裏には冷徹な計算があります。
 状況から正しい意味を見い出し、相手の2手も3手も先を読んでいます。

 物語を盛り上げているのが、無駄をそぎ落としたハードボイルドの文体です。
 登場人物の行動や言葉から、気持ちや狙いを読み取らなくてはなりません。

 そのため、先の展開が読めないので、緊張感があります。
 「え、そうなるの?」と驚くことが、しばしばでした。

 さて、ハメットには「血の収穫」と「第三の男」という傑作があります。
 しかし、私的には「ガラスの鍵」がベストでした。

 「血の収穫」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-05-23-1
 「第三の男」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-05-19

 さいごに。(夢で魔法は使えない?)

 夢の中で夢だと分かっても魔法は使えないというのが、娘と妻の意見です。
 理由は、夢だと分かった瞬間、現実に戻ってしまうから、とのこと。

 そういえば先日、私は夢の中で夢だと分かって、宇宙に行こうとしました。
 しかし、私はその瞬間に目覚めてしまいました。難しいものですね。

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