聖なる酔っぱらいの伝説 [20世紀ドイツ文学]
「聖なる酔っぱらいの伝説」 ロート作 池内紀訳 (岩波文庫)
タイトル作は、ある紳士に200フラン恵まれた酔っぱらいの、不思議な物語です。
デビュー作「蜘蛛の巣」から遺作のタイトル作まで、全5編収録の作品集です。
以前白水Uブックスから出ていましたが、現在は岩波文庫に入っています。
池内紀氏の訳は、軽やかなリズムがあって分かりやすく、読みやすかったです。
タイトル作「聖なる酔っぱらいの伝説」は、ロートが死ぬ直前に書いた短編です。
セーヌ川の橋の下に住むアンドレアスは、ある日金持ちの紳士に出会いました。
「二百フランを受け取ってもらえないものだろうか。」
はからずも大金を手に入れたアンドレアスは、この時から急にツキはじめました。
安酒場では割のいい仕事をもらい、買った財布にはお金が入っていて・・・
昔の女に会い、旧友に会い、美しい踊り子に会い、そしてテレーズに会って・・・
「願わくは、かくも軽やかな、かくも美しい死をめぐみたまえ!」
という言葉で作品を締めくくってから間もなく、ロート自身も天に召されました。
軽やかなのに、しみじみしていて、楽しいのに、もの悲しい、独特の味わいです。
パリに行きたくなります。この本をもってセーヌ河畔を歩いてみたいです。
といっても、パリなんかには行けないので、せめて映画だけでも見てみたい。
1988年のイタリア映画「聖なる酔っぱらいの伝説」は、評判が良いようです。
他の三つの短編もみな、しみじみとした味わいがある、叙情豊かな作品です。
中でも「皇帝の胸像」では、作者のオーストリアに対する郷愁が伝わってきます。
「まことの祖国、つまり、『祖国喪失者』にも祖国であるような、唯一ありうる
祖国、他民族国家のオーストリア君主国は、まさしくそのような国だった。」
常にはみ出し者のユダヤ人にとって、そこは安心できる国だったようです。
ロートは生涯、崩壊したオーストリアを、懐かしく思い出していたそうです。
「蜘蛛の巣」はデビュー作で、過激な民族主義に走る青年を描いた中編です。
ナチスの台頭とヒトラーの独裁を先取りして描いた異色の作品です。
「ナチ党は熱気をはらんでいた。興奮につつまれていた。つぎつぎと人びとが
馳せ参じる。」「ヒトラーは一つの『危険』そのものだった。」(P87~P88)
これが書かれたのは1923年。ヒトラーが頭角をあらわすかなり前のことです。
のちにこの作品を読み返した人々は、その予見的な内容に驚いたといいます。
さて、代表作「ラデツキー行進曲」は、岩波文庫から上下二分冊で出ています。
いつ絶版になるか分からない(?)ので、機会があればぜひ読んでおきたいです。
さいごに。(セブンブリッジ)
娘にセブンブリッジを教えてもらいました。娘は学校の先生に教わったとのこと。
休み時間に先生も含めてやっているとか。娘はかなり強い方なのだそうです。
タイトル作は、ある紳士に200フラン恵まれた酔っぱらいの、不思議な物語です。
デビュー作「蜘蛛の巣」から遺作のタイトル作まで、全5編収録の作品集です。
以前白水Uブックスから出ていましたが、現在は岩波文庫に入っています。
池内紀氏の訳は、軽やかなリズムがあって分かりやすく、読みやすかったです。
タイトル作「聖なる酔っぱらいの伝説」は、ロートが死ぬ直前に書いた短編です。
セーヌ川の橋の下に住むアンドレアスは、ある日金持ちの紳士に出会いました。
「二百フランを受け取ってもらえないものだろうか。」
はからずも大金を手に入れたアンドレアスは、この時から急にツキはじめました。
安酒場では割のいい仕事をもらい、買った財布にはお金が入っていて・・・
昔の女に会い、旧友に会い、美しい踊り子に会い、そしてテレーズに会って・・・
「願わくは、かくも軽やかな、かくも美しい死をめぐみたまえ!」
という言葉で作品を締めくくってから間もなく、ロート自身も天に召されました。
軽やかなのに、しみじみしていて、楽しいのに、もの悲しい、独特の味わいです。
パリに行きたくなります。この本をもってセーヌ河畔を歩いてみたいです。
といっても、パリなんかには行けないので、せめて映画だけでも見てみたい。
1988年のイタリア映画「聖なる酔っぱらいの伝説」は、評判が良いようです。
他の三つの短編もみな、しみじみとした味わいがある、叙情豊かな作品です。
中でも「皇帝の胸像」では、作者のオーストリアに対する郷愁が伝わってきます。
「まことの祖国、つまり、『祖国喪失者』にも祖国であるような、唯一ありうる
祖国、他民族国家のオーストリア君主国は、まさしくそのような国だった。」
常にはみ出し者のユダヤ人にとって、そこは安心できる国だったようです。
ロートは生涯、崩壊したオーストリアを、懐かしく思い出していたそうです。
「蜘蛛の巣」はデビュー作で、過激な民族主義に走る青年を描いた中編です。
ナチスの台頭とヒトラーの独裁を先取りして描いた異色の作品です。
「ナチ党は熱気をはらんでいた。興奮につつまれていた。つぎつぎと人びとが
馳せ参じる。」「ヒトラーは一つの『危険』そのものだった。」(P87~P88)
これが書かれたのは1923年。ヒトラーが頭角をあらわすかなり前のことです。
のちにこの作品を読み返した人々は、その予見的な内容に驚いたといいます。
さて、代表作「ラデツキー行進曲」は、岩波文庫から上下二分冊で出ています。
いつ絶版になるか分からない(?)ので、機会があればぜひ読んでおきたいです。
さいごに。(セブンブリッジ)
娘にセブンブリッジを教えてもらいました。娘は学校の先生に教わったとのこと。
休み時間に先生も含めてやっているとか。娘はかなり強い方なのだそうです。
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