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たんぽぽ娘 [20世紀アメリカ文学]

 「たんぽぽ娘」 R・F・ヤング作 伊藤典夫編 (河出文庫)


 タイムマシンものの傑作「たんぽぽ娘」など、全13編収録の短編集です。
 日本では長い間絶版だったため、幻の名作として知られていました。


たんぽぽ娘 (河出文庫)

たんぽぽ娘 (河出文庫)

  • 作者: ロバート・F・ヤング
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/01/07
  • メディア: 文庫



 『たんぽぽ娘』はわずか20ページほどですが、とても印象に残る作品です。
 「ビブリア古書堂の事件手帖」で紹介されて、改めて注目を集めました。

 ある日44歳のマークは、丘の上でたんぽぽ色の髪の少女に出会いました。
 「わたし、いまから二百四十年後のコーヴ・シティから来たんです」

 「タイムマシンでこちらに来たわけか」と、マークは話を合わせました。
 そして、この風変わりな少女と会うたびに、 どんどん惹かれていきました。

 数日後、少女が去りました。やがて妻と二人の生活に戻りましたが・・・
 妻の不安の原因は? たんぽぽ娘はどこへ?・・・そして、感動の結末!

 『河を下る旅』もまた、短いながら印象的な作品です。
 イカダで河を下っていたファレルは、ニコルズという女性と出会いました。

 「おそらく現実には人間が知らない無数の相があるんだ。
 いまぼくらがいるのも、そういう相のひとつだろうね・・・」(P33)

 無数の相とはどういうことか? 彼らのいる河は何なのか?
 読者はしだいに、驚くべき状況を理解していきます。

 『荒寥の地より』は、ヤングの遺作となった作品です。
 このような重たい作品を、最後に残したところに、作者の悲哀を感じます。

 「人類の問題というのは、彼らがまったく見当違いの場所で奇跡をさがし求め
 ているせいではないんでしょうかね。奇跡が目と鼻の先で起こっているのに、
 それに気づこうともしないのです」(P127)という言葉はイミシンです。

 以上、『たんぽぽ娘』『河を下る旅』『荒寥の地より』が、マイベスト3です。
 以下、『主従問題』『スターファインダー』『ジャンヌの弓』の3作が次点です。

 『主従問題』は、メビウス宇宙という異色な宇宙論を題材にしています。
 「メビウス宇宙においては、地球とシリウス21は同時存在していることになる」?

 タイトルの意味がなかなか分からないのですが、最後にようやく理解できます。
 しかし、結末のどんでん返しは必要だろうか?

 ほか、『スターファインダー』と『ジャンヌの弓』は、読みごたえがありました。
 『スターファインダー』に出てくる「宇宙クジラ」は、面白いアイディアです。

 さいごに。(熱心に読んでいたのは)

 娘が、漢字の読み方をママに聞きながら、10分以上も新聞を読んでいました。
 読んでいたのはテレビ番組欄。そういうページはいつまでも飽きないらしい。

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