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太平洋の防波堤 [20世紀フランス文学]

 「太平洋の防波堤」 デュラス作 田中倫郎訳 (河出文庫)


 仏領インドシナで、海水に浸る土地を買わされた一家3人の苦難を描いた物語です。
 初期の作品でとても評価が高く、のちにその一部が「愛人」へと受け継がれました。

 かつて出ていた河出文庫版は、訳が分かりやすかったのですが、現在は絶版です。
 河出書房の世界文学全集にも、「愛人」とともに収録されています。


太平洋の防波堤 (河出文庫)

太平洋の防波堤 (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/05
  • メディア: 文庫



太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-4)

太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-4)

  • 作者: フランソワーズ・サガン
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2008/03/11
  • メディア: 単行本



 母は、息子と娘を育てながら長年必死に働き、やっと払い下げ地を手に入れました。
 しかしその土地は、夏に高潮で浸水するため、全く耕作できない土地だったのです。

 母は高潮を防ぐため、土地の人と協力して、長大な防波堤を築き上げました。
 ところが高潮によって、防波堤も彼らの希望も、崩れ去ってしまいました。

 17歳のシュザンヌは、いつかこのみじめな境遇から逃れることを夢見ています。
 ある夜、一家で街の酒場に出たとき、見慣れぬリムジンがとまっていて・・・

 第一部の中心は、ヒロインのシュザンヌと、ムッシュウ・ジョーとの恋愛事件です。
 私は、大富豪の青年ジョーに感情移入して読みましたが、実に切なかったです。

 「金があるからって幸福になれるわけではありませんよ」(P35)
 ちなみに「愛人」では、彼は華僑ということになっていました。

 さて、私の目的は第一部を読むことだったのですが、面白かったのは第二部でした。
 第二部の中心は、兄のジョゼフと富豪の女リーナにまつわる出来事です。

 ダイヤを売るため街に出てきた一家でしたが、子供たちには別の影響がありました。
 シュザンヌはカルメンによって、ジョゼフはリーナによって、自我に目覚めます。

 私は第二部では、ジョゼフに感情移入しながら読んでいました。
 ジョゼフが自分の経験を語る部分は、とても印象に残りました。

 「重い荷物を足で引きずってあくせくすることにしかむかない人間ってのもいる
 もんなんだよ、いつも同じ重荷をさ。それを引っ張ってないと三歩も歩けなくな
 っちゃうこともある・・・」(P210)

 きっとそれは、自分の母のことであり、また自分のことでもあったのだと思います。
 のち にジョゼフは、その重い荷物をすべて投げ捨てて・・・

 母は防波堤で土地を守ろうと必死でしたが、その土地は子供たちを縛っていました。
 もし防波堤が決壊していなかったら、子供たちは解放されなかったかもしれません。

 太平洋の防波堤は、母の執念の象徴であり、徒労の象徴でもあります。
 そして防波堤は母自身でもあって、子供たちはそれを突き破る必要があったのです。

 さて、私は「愛人(ラマン)」を読んだついでに、この作品に立ち寄りました。
 しかし、「太平洋の防波堤」の方が読みやすく、私的にははるかに面白かったです。

 さいごに。(バレンタインもホワイトデイも)

 バレンタインデイの前に、娘はママといっしょに、友チョコを手作りしていました。
 ホワイトデイの前にも、娘はママといっしょに、友チョコを手作りしていました。

 こちらがあげてないのに、友チョコをくれた友達が何人もいたから、ということです。
 バレンタインデイも、ホワイトデイも、ママさんは大忙しでした。

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