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地霊・パンドラの箱 [19世紀ドイツ北欧文学]

 「地霊・パンドラの箱 ルル二部作」 ヴェデキント作 岩淵達治訳 (岩波文庫)


 世紀末を生きる奔放な女ルルが、男たちを破滅させてゆくさまを描いた戯曲です。
 「地霊」と続編の「パンドラの箱」を合わせて、ルル二部作となっています。

 1984年に岩波文庫から出ていますが、品切れになっていることが多い本です。
 今年復刊されたので、手に入れるチャンス。正直に言って、読みにくかったです。


地霊・パンドラの箱――ルル二部作 (岩波文庫 赤 429-1)

地霊・パンドラの箱――ルル二部作 (岩波文庫 赤 429-1)

  • 作者: F.ヴェデキント
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/12/17
  • メディア: 文庫



 「地霊」は、衛星顧問官ゴル、画家シュバルツ、編集長シェーンを渡り歩きながら、
 彼らを次々と破滅させてゆき、最後は自分自身をも破滅させてしまう悲劇です。

 ルルの周りには、多くの男が集まっていますが、彼らとの関係がよくわかりません。
 場面が展開するに従って、人間関係が明かされ、ルルの出生の秘密も分かります。

 ところが私は、その目まぐるしい展開に、なかなかついていけませんでした。
 なんで?なんで? と思っているうちに、一人死に、二人死に・・・

 そういう意味で、読みにくい戯曲でした。
 しかし、次のような気の利いたやり取りが随所にあって、楽しかったです。

 ルル  :あの人はわたしを愛してるわ。
 シェーン:なるほどそいつは致命的だ。
 ルル  :わたしを愛している・・・
 シェーン:越えがたい溝だね。

 ルルを愛することは、男にとって致命的で、二人にとって越えがたい溝になる!
 ルルはまさに「地霊」です。我々に恵みをもたらすと同時に災厄ともなります。

 「地霊」が男どもを破滅させる物語だとしたら、「パンドラの箱」はルル自身が
 破滅してゆく物語です。ルルの脱獄から始まり、さらに多彩な人物が登場します。

 愛人の力士、レズの令嬢、詐欺師、極めつけは切り裂きジャック・・・
 「パンドラの箱」をぶちまけたような、ごちゃごちゃした話で読みにくかったです。

 さて、作者の代表作「春のめざめ」は、今年の4月に岩波文庫から出ました。
 性の目覚めを描いた戯曲です。2009年に出た訳か。読みやすさを期待したい。


春のめざめ (岩波文庫)

春のめざめ (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/04/15
  • メディア: 文庫



 さいごに。(川内、サニブラウン、よくやった)

 男子マラソンで最後に猛追したものの、入賞を3秒差で逃し9位に終わった川内。
 瀬古さんも「引退することはない」と、めずらしく暖かい言葉をかけていました。

 それから男子200mで、サニブラウンが決勝進出したことを忘れてはいけない。
 18歳ながら、世界の強豪と堂々と渡り合った姿は、本当にすばらしかった!

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