SSブログ

回転木馬のデッド・ヒート [日本の現代文学]

 「回転木馬のデッド・ヒート」 村上春樹 (講談社文庫)


 何人かの人から話を聞き、ほぼそのまま書き写した8編を集めた短編集です。
 1985年に出た、村上春樹の初期の短編集で、現在講談社文庫から出ています。


回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)

回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫



 この短編集のテーマは、冒頭の「はじめに」という前書きで分かります。
 村上は、人生をメリー・ゴーラウンドにたとえて、次のように言います。

 「どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない。
 誰をも抜かないし、誰にも抜かれない。
 しかしそれでも我々はそんな回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈な
 デッド・ヒートをくりひろげているように見える。」(P15)

 ぐるぐる回る回転木馬の人生、そこで突然味わうどうしようもない無力感。
 その無力感こそが、この短編集のテーマです。

 「レーダー・ホーゼン」は、若い頃に読んで強烈な衝撃を受けた作品です。
 ある婦人が、ドイツ旅行中、夫の半ズボンを買っているわずかな時間に・・・

 人生の途中で不意に訪れる、不思議で恐ろしい瞬間!
 「え? そういうものなの?」と、独身だった私はとても驚きました。

 「タクシーに乗った男」もまた、忘れられない短編です。
 画廊の女主人が若い頃に、タクシーに乗った男の、平凡な絵を買いました。

 そして彼女はその絵を・・・そして後日アテネで・・・
 そんなバカなと思うと同時に、分かる気がするなと思わせる作品です。

 「今は亡き王女のための」は、この短編集を代表する作品だと思います。
 大事に育てられ、その結果スポイルされた少女と「僕」の物語です。

 彼女はとても美しかったが、僕は一目見たときから彼女が苦手でした。
 ところが、ひょんなことから二人は同じ部屋で寝ることとなり・・・

 上の三作がオススメです。また、「まえがき」も面白いです。
 「プールサイド」も興味深い作品ですが、登場人物が少し鼻につきました。

 ところで村上春樹は、今回もノーベル文学賞を、受賞できませんでした。
 ノーベル文学賞を取るには、世界的になりすぎたような気がします。

 これほどビッグになると、今さらノーベル文学賞を与えにくいのではないか。
 そういう意味で、村上春樹はタイミングを逃してしまったのかもしれません。

 さいごに。(またやってしまった)

 うちの食品庫に、うまい棒が2本あったので、小腹がすいたときに食べました。
 しかし、それは娘が大切にとっておいたお菓子だったのです。

 数日後に娘はそれに気づきましたが、意外なことに全く怒りませんでした。
 こういうことがしょっちゅうあるので、もう諦めているようです。(よかった)

nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。