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西行花伝2 [日本の現代文学]

 「西行花伝」2 辻邦生 (新潮文庫)


 【注意】今回もネタバレが多いです。


 様々な者たちの語りによって、西行の人生を浮き彫りにした傑作小説です。
 1999年に新潮文庫に入りました。その年、辻邦生は亡くなりました。


西行花伝 (新潮文庫)

西行花伝 (新潮文庫)

  • 作者: 辻 邦生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1999/06/30
  • メディア: 文庫



 西行が待賢門院を垣間見たのは、おそらく北面の武士として奉公したときです。
 二人の年齢差は17歳。西行が20歳ぐらい、待賢門院は37歳ぐらいの頃でしょう。

 西行が、身分違いの恋に悩み、やがて出家するのが1140年で23歳のことです。
 待賢門院は、実子が崇徳天皇であったため、いまだ権勢を保っていました。

 ところが1141年に、崇徳天皇は半ば強制的に、近衛天皇に譲位させられました。
 翌1142年に、待賢門院は法金剛院で出家し、1145年には崩御していまいました。

 西行にとって永遠の女性待賢門院の死は、「西行花伝」の半ばで描かれます。
 こののち、近衛の急死、後白河の即位、保元の乱、平治の乱、平家の滅亡・・・

 「西行花伝」後半で、激動の時代を生きる西行の姿が描かれています。
 西行は、死んだ待賢門院を、常に身近に感じ続けていたのでした。

 出家とは生きながら死ぬことであり、死者の眼を獲得することであると言う。
 死者の眼には、森羅万象が「花咲くすがた」として立ち現れていて・・・

 「亡くなられたことで、女院はこの森羅万象のなかに変成され、この世界と一
 つになられたように思われるのだ。」(P368)

 西行が、女院は山であり川であり雲であり太陽であると悟る場面は感動的です。
 そして、自分自身もまた、山であり川であり雲であり太陽であると悟ります。

 山を歩きながら、森羅万象の哀歓を呼吸しているのだと感じるようになり・・・
 私が山を見ているのではなく、山が私を通して現れるのだと思うようになり・・・

 特に一五帖、一六帖、二一帖に現れている西行の言葉は、どれも見逃せません。
 辻邦生も、西行について書くうちに、西行と一体になってしまったのではないか。

 「西行花伝」で西行の人生と思想に触れて、西行の歌に新たな魅力を感じました。
 西行の歌は、「新古今和歌集」に94首入っていて、ここでの入撰数は第一位です。


新古今和歌集〈上〉 (角川ソフィア文庫)

新古今和歌集〈上〉 (角川ソフィア文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
  • 発売日: 2007/03/31
  • メディア: 文庫



 辻邦生の作品には、もう一つ「背教者ユリアヌス」という傑作があります。
 旧版を全三冊購入しながら読んでいません。読みたい本が多すぎて。


背教者ユリアヌス(一) (中公文庫)

背教者ユリアヌス(一) (中公文庫)

  • 作者: 辻 邦生
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/12/22
  • メディア: 文庫



 さいごに。(憧れのガスト)

 先日のバレエ発表会のあと、がんばった娘のために外食しました。
 「どこで食べたい?」と聞いたところ、「ガスト!」という返事。

 外食といえばいつもうどん屋なので、娘にとってガストは憧れなのです。
 安い女に育ててしまった・・・

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