点と線 [日本の現代文学]
「点と線」 松本清張 (文春文庫)
*今回はネタバレが多めです。
九州での心中事件から始まる推理小説で、時刻表を駆使したアリバイで有名です。
清張の推理小説家としての人気を決定づけ、映画化・ドラマ化された傑作です。
2018年3月のNHK「100分de名著」の「松本清張スペシャル」で紹介されました。
私は文春文庫版で読みました。挿し絵が、当時の雰囲気を醸し出してくれました。
九州博多の香椎海岸で、男女の情死体が発見されました。
男は某省の課長補佐「佐山」。女は赤坂の料亭の女中「お時」。
心中事件として処理されましたが、古参の刑事「鳥飼」が疑問を持ちました。
食堂車の受取証が「御一人様」なのはなぜか? 鳥飼は単独で捜査を続けます。
実は、佐山は某省の汚職事件の重要参考人だったのです。
本庁から派遣された刑事「三原」も、「鳥飼」と対面して疑いを持ち・・・
「佐山」と「お時」が特急あさかぜに乗るとき、3人の目撃者がいました。
しかし、その目撃が可能なのは、わずか4分間。これは偶然か、必然か?
「佐山とお時とはばらばらな二つの点でした。その点が相寄った状態になって
いたのを見て、われわれは間違った線を引いて結んでしまったのです」(P256)
「点と線」は、時刻表を駆使したアリバイのトリックで有名です。
しかし、「四分間の目撃」は、出来過ぎていて、違和感を覚えました。
また、本書が書かれたのは1957年。60年以上も前です。
被疑者のアリバイも、〇〇機を使えば可能だろ、と今ならすぐ分かります。
しかし、「点と線」の魅力は、トリック自体ではなく、社会問題です。
描かれているのは、格差。犠牲者は、常に弱者。
「100分de名著」においても、そのことが強調されていました。
そして放送の前後で、森友学園問題の渦中の人物が、自殺してしまいました。
あまりにもタイミングが合い過ぎて、怖いくらいでした。
死んだのは近畿財務局職員で、決裁文書の書き換えを指示されたらしい。
汚れ役は常に下の者の担当です。それにしても彼は、本当に自殺だったのか?
「点と線」の事件と森友問題が、自然と重なって見えてきます。
さて、文春文庫版では、藤井康栄と有栖川有栖の2人が解説を書いています。
特に有栖川は、「三原刑事の勘の鈍さは度を超している」と批判しています。
有栖川の「江神次郎の洞察」の中に、「四分間では短すぎる」があります。
「点と線」の「四分間の目撃」について、興味深い分析がされていると言う。
さいごに。(沖縄芸大は?)
私の同僚の娘さんが沖縄の人と結婚して、将来は沖縄で暮らすのだそうです。
そうなったら、父親である彼もまた、一緒に沖縄に移住すると言っています。
その影響を受けて、小学校5年の娘に、沖縄県立芸術大学を勧めています。
娘が沖縄で就職し、沖縄で結婚したら、我々も沖縄に移住して・・・
*今回はネタバレが多めです。
九州での心中事件から始まる推理小説で、時刻表を駆使したアリバイで有名です。
清張の推理小説家としての人気を決定づけ、映画化・ドラマ化された傑作です。
2018年3月のNHK「100分de名著」の「松本清張スペシャル」で紹介されました。
私は文春文庫版で読みました。挿し絵が、当時の雰囲気を醸し出してくれました。
九州博多の香椎海岸で、男女の情死体が発見されました。
男は某省の課長補佐「佐山」。女は赤坂の料亭の女中「お時」。
心中事件として処理されましたが、古参の刑事「鳥飼」が疑問を持ちました。
食堂車の受取証が「御一人様」なのはなぜか? 鳥飼は単独で捜査を続けます。
実は、佐山は某省の汚職事件の重要参考人だったのです。
本庁から派遣された刑事「三原」も、「鳥飼」と対面して疑いを持ち・・・
「佐山」と「お時」が特急あさかぜに乗るとき、3人の目撃者がいました。
しかし、その目撃が可能なのは、わずか4分間。これは偶然か、必然か?
「佐山とお時とはばらばらな二つの点でした。その点が相寄った状態になって
いたのを見て、われわれは間違った線を引いて結んでしまったのです」(P256)
「点と線」は、時刻表を駆使したアリバイのトリックで有名です。
しかし、「四分間の目撃」は、出来過ぎていて、違和感を覚えました。
また、本書が書かれたのは1957年。60年以上も前です。
被疑者のアリバイも、〇〇機を使えば可能だろ、と今ならすぐ分かります。
しかし、「点と線」の魅力は、トリック自体ではなく、社会問題です。
描かれているのは、格差。犠牲者は、常に弱者。
「100分de名著」においても、そのことが強調されていました。
そして放送の前後で、森友学園問題の渦中の人物が、自殺してしまいました。
あまりにもタイミングが合い過ぎて、怖いくらいでした。
死んだのは近畿財務局職員で、決裁文書の書き換えを指示されたらしい。
汚れ役は常に下の者の担当です。それにしても彼は、本当に自殺だったのか?
「点と線」の事件と森友問題が、自然と重なって見えてきます。
さて、文春文庫版では、藤井康栄と有栖川有栖の2人が解説を書いています。
特に有栖川は、「三原刑事の勘の鈍さは度を超している」と批判しています。
有栖川の「江神次郎の洞察」の中に、「四分間では短すぎる」があります。
「点と線」の「四分間の目撃」について、興味深い分析がされていると言う。
さいごに。(沖縄芸大は?)
私の同僚の娘さんが沖縄の人と結婚して、将来は沖縄で暮らすのだそうです。
そうなったら、父親である彼もまた、一緒に沖縄に移住すると言っています。
その影響を受けて、小学校5年の娘に、沖縄県立芸術大学を勧めています。
娘が沖縄で就職し、沖縄で結婚したら、我々も沖縄に移住して・・・
「点と線」.......約50年前に新潮文庫版で読みました...
by サンフランシスコ人 (2018-03-28 08:05)
サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます。
50年前ですか! 古典的な名作ですね。
by ike-pyon (2018-03-30 07:20)