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点と線 [日本の現代文学]

 「点と線」 松本清張 (文春文庫)


 *今回はネタバレが多めです。


 九州での心中事件から始まる推理小説で、時刻表を駆使したアリバイで有名です。
 清張の推理小説家としての人気を決定づけ、映画化・ドラマ化された傑作です。

 2018年3月のNHK「100分de名著」の「松本清張スペシャル」で紹介されました。
 私は文春文庫版で読みました。挿し絵が、当時の雰囲気を醸し出してくれました。


点と線―長篇ミステリー傑作選 (文春文庫)

点と線―長篇ミステリー傑作選 (文春文庫)

  • 作者: 松本 清張
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/04/10
  • メディア: 文庫



点と線 (新潮文庫)

点と線 (新潮文庫)

  • 作者: 松本 清張
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1971/05/25
  • メディア: 文庫



 九州博多の香椎海岸で、男女の情死体が発見されました。
 男は某省の課長補佐「佐山」。女は赤坂の料亭の女中「お時」。

 心中事件として処理されましたが、古参の刑事「鳥飼」が疑問を持ちました。
 食堂車の受取証が「御一人様」なのはなぜか? 鳥飼は単独で捜査を続けます。

 実は、佐山は某省の汚職事件の重要参考人だったのです。
 本庁から派遣された刑事「三原」も、「鳥飼」と対面して疑いを持ち・・・

 「佐山」と「お時」が特急あさかぜに乗るとき、3人の目撃者がいました。
 しかし、その目撃が可能なのは、わずか4分間。これは偶然か、必然か?

 「佐山とお時とはばらばらな二つの点でした。その点が相寄った状態になって
 いたのを見て、われわれは間違った線を引いて結んでしまったのです」(P256)

 「点と線」は、時刻表を駆使したアリバイのトリックで有名です。
 しかし、「四分間の目撃」は、出来過ぎていて、違和感を覚えました。

 また、本書が書かれたのは1957年。60年以上も前です。
 被疑者のアリバイも、〇〇機を使えば可能だろ、と今ならすぐ分かります。

 しかし、「点と線」の魅力は、トリック自体ではなく、社会問題です。
 描かれているのは、格差。犠牲者は、常に弱者。

 「100分de名著」においても、そのことが強調されていました。
 そして放送の前後で、森友学園問題の渦中の人物が、自殺してしまいました。

 あまりにもタイミングが合い過ぎて、怖いくらいでした。
 死んだのは近畿財務局職員で、決裁文書の書き換えを指示されたらしい。

 汚れ役は常に下の者の担当です。それにしても彼は、本当に自殺だったのか?
 「点と線」の事件と森友問題が、自然と重なって見えてきます。

 さて、文春文庫版では、藤井康栄と有栖川有栖の2人が解説を書いています。
 特に有栖川は、「三原刑事の勘の鈍さは度を超している」と批判しています。

 有栖川の「江神次郎の洞察」の中に、「四分間では短すぎる」があります。
 「点と線」の「四分間の目撃」について、興味深い分析がされていると言う。


江神二郎の洞察 <江神シリーズ> (創元推理文庫)

江神二郎の洞察 <江神シリーズ> (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/05/29
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(沖縄芸大は?)

 私の同僚の娘さんが沖縄の人と結婚して、将来は沖縄で暮らすのだそうです。
 そうなったら、父親である彼もまた、一緒に沖縄に移住すると言っています。

 その影響を受けて、小学校5年の娘に、沖縄県立芸術大学を勧めています。
 娘が沖縄で就職し、沖縄で結婚したら、我々も沖縄に移住して・・・

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サンフランシスコ人

「点と線」.......約50年前に新潮文庫版で読みました...
by サンフランシスコ人 (2018-03-28 08:05) 

ike-pyon

サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます。
50年前ですか! 古典的な名作ですね。
by ike-pyon (2018-03-30 07:20) 

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