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失楽園 ミルトン 1 [17世紀文学]

 「失楽園 上」 ミルトン作 平井正穂訳 (岩波文庫)


 「旧約聖書」の創世記をもとに、堕天使の逆襲と人間の楽園追放を描いた叙事詩です。
 ミルトンは17世紀の清教徒革命時に政務を執り、不遇の晩年にこの傑作を残しました。


失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

  • 作者: ミルトン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/01/16
  • メディア: 文庫



 神との戦いに敗れ、地獄でのたうちまわっていたサタンが、再び立ち上がりました。
 そして地獄の軍団に呼びかけます。自由のために戦い、あの世界を奪還しようと。

 神を打ち負かすには、正面から立ち向かわずに、隠密裏に事を謀ろうではないか。
 神から恩寵を受けている人間という種族の世界を、破壊してやろうではないか。

 サタンはただひとり、偵察のため地獄の門を出て、人間どもの住む地球へ向かい・・・
 よく言われることですが、サタンの行動が妙にカッコいいのです。

 自分を襲う疑惑や恐怖に打ち勝ち、悪に徹しようとする姿は感動的ですらあります。
 神を打ち倒すという不可能に対して、全力で立ち向かう姿は英雄的ですらあります。

 もしかしたら、ミルトン自身がサタンに投影されているのではないでしょうか?
 そう思えてしまうほど、サタンは人間的でリアルで、しかも理想的に描かれています。

 清教徒革命時にミルトンは、クロムウェルのもとで長いこと政務を執っていましたが、
 クロムウェルの死後、王政復古があり、失脚したミルトンは不遇の晩年を過ごします。

 失意の日々の中で、彼は自身が悪魔となって降臨することを、想像したのではないか?
 たとえば次のような文に、ミルトンの人間世界に対する絶望と怒りが表れています。

 「恥を知れ、と私は言いたいのだ! 呪われた悪魔でさえも、
 悪魔同士で固い一致団結を守っているのだ、それなのに、
 生けるものの中で理性的な人間だけが、神の恩寵を受ける
 希望が与えられているにもかかわらず、互いに反ゼイし合っている。
 神が、地には平和あれ、と宣(のたも)うているにもかかわらず、互いに憎悪と
 敵意と闘争の生活にあけくれ、残虐な戦争を起こしては
 地上を荒廃させ、骨肉相食(は)んでいる始末だ。」(P82)

 「失楽園」には、悪魔に魂を売り渡したくなるような、危険な魅力が潜んでいます。
 「サタンがんばれ、神を倒せ!」と、悪魔を応援したくなるような、不健全な魅力が。

 さて、岩波文庫版は初版が1981年です。比較的読みやすい訳だと思います。
 また、それぞれの巻の最初に梗概が付いているので、とても助かっています。

 さいごに。(夕食後に餅を食う?)

 育ち盛り・食べ盛りの娘は、夕食直後に「おなかすいたー」と言い出しました。
 そして、なんと、冷凍の餅を取り出し、オーブンで焼いて食べ始めたのです。

 今はまだ小学校6年生ですが、食べる量では太刀打ちできなくなりました。
 娘は最近、太るかと心配しています。そりゃ、この調子で食べたら太るでしょう。

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