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ヴェニスの商人 [17世紀文学]

 「新訳 ヴェニスの商人」 シェイクスピア作 河合祥一郎訳 (角川文庫)


 友人のため体の肉1ポンドをかたに金を借りた、ヴェニスの商人をめぐる悲喜劇です。
 シェイクスピアの中でも、とても人気のある作品で、金貸しシャイロックは有名です。


新訳 ヴェニスの商人 (角川文庫)

新訳 ヴェニスの商人 (角川文庫)

  • 作者: シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/10/25
  • メディア: 文庫



 ヴェニスの貿易商アントーニオは、積荷満杯の船をいくつも行き来させていました。
 友人のバサーニオは、貴婦人に求婚するため、アントーニオに金を借りに来ました。

 全財産が海の上を漂うアントーニオは、ユダヤ人シャイロックに信用借りをします。
 アントーニオの体の肉1ポンドをかたに、無利子で金を貸すという条件で・・・

 この作品は基本的に、シャイロック=復讐の鬼であり、悪役として演じられました。
 しかし、シャイロックの切実な訴えを読むと、彼こそ被害者だと、思えてきました。

 「ユダヤ人には目がないのか? 手がないのか。内臓が、手足が、感覚が、愛情が、
 喜怒哀楽がないとでもいうのか? キリスト教徒とどこが違う? 同じ食い物を食
 い、同じ武器で傷つき、同じ病気に罹り、同じ薬で治り、冬も夏も同じように暑が
 ったり寒がったりするじゃないか?」(P70)

 実際19世紀になると、シャイロックを悲劇の主人公とすることもあったそうです。
 キリスト教徒の偽善性を指摘した批評家が現れたりします。(「訳者あとがき」)

 だいたい、アントーニオも良くないですよ。
 バサーニオのような奴に、カネを貸すなんて。

 バサーニオは、カネもないのに派手に暮らして、身代をつぶしてしまった男です。
 しかも働いて稼ぐのではなく、金持ち女と結婚して、財産を作ろうとする男です。

 1本の矢を失くしたら、同じ方向にもう1本の矢を放ち、2本とも見つけるのだ。
 友人にカネを出させるため、そんなギャンブルみたいなことを平気で言う男です。

 そりゃあ、シャイロックだって、カネを貸すのを渋るでしょう。
 肉1ポンドの条件は、シャイロック流のアントーニオに対する警告だったのでは?

 というように、私はシャイロック寄りの視点で、この劇を読み進めました。
 娘が駆け落ちしたり、財産を没収されたり、シャイロックがかわいそうで・・・

 さて、作品の冒頭付近には、アントーニオによる名言があります。
 「世の中は世の中にすぎんよ、誰もが自分の役を演じる舞台だ。」

 ところが、存分に自分の役を演じているのは、貴婦人ボーシャのように思えます。
 後半部に入ると、主人公はボーシャか、とさえ思えてしまいます。

 そういう意味で、いろんな楽しみ方ができる作品でした。
 ただ、最後の指輪の場面は蛇足でしょう。裁判の終了とともに幕にするべきです。

 さいごに。(河津桜は見ごろを過ぎました)

 2月の中旬に見ごろを迎えた河津桜は、近所のお寺にも植えられています。
 所々、葉が出て来ています。見ごろを少し過ぎたようです。

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コメント 2

サンフランシスコ人

「ヴェニスの商人」をニューヨークで観たことがあります...ダスティン・ホフマンがシャイロックを演じました...
by サンフランシスコ人 (2019-03-10 06:45) 

ike-pyon

ダスティン・ホフマンのシャイロック!
見たいですね。
by ike-pyon (2019-03-16 20:18) 

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