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ティラン・ロ・ブラン 4 [中世文学]

 「ティラン・ロ・ブラン 4」 J・マルトゥレイ作 田澤耕訳 (岩波文庫)


 騎士ティラン・ロ・ブランの愛と冒険を、写実的かつ現実的に描いた長編小説です。
 2016年に岩波文庫から全四巻で出ました。その最終巻の第4巻です。


ティラン・ロ・ブラン 4 (岩波文庫)

ティラン・ロ・ブラン 4 (岩波文庫)

  • 作者: J.マルトゥレイ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/01/18
  • メディア: 文庫



 ティランは、北アフリカのモーロ人たちの間で、めきめきと頭角を現していきます。
 アスカリアヌ王と友情を結び、計略をもってモーロ人の国々を征服していきました。

 敵が穴を掘って城内に侵入するのを、ティランはどのように防いだか?
 さまよう牛の群れを、ティランはどのようにして味方にしたか?

 少ない味方を多く見せるため、ティランは女たちをどのように使ったか?
 北アフリカのモーロ人を、ほとんど支配下に加えたあと、再会した意外な人物は?

 第三巻のもやもやした展開から一転し、イケイケムードの展開で実に面白いです。
 しかし、ギリシャ帝国に帰り、何もかもうまく運んだと思ったそのとき・・・

 「今日、この素晴らしい大将殿が命を落とされるようなことがあったら、一体誰が
 世界の騎士道を代表する者となるのだ!」(P52)

 この言葉が第四巻を象徴しています。ティランの代わりなんていません。
 甥のイポリトが後を継ぎますが、彼はただ老いた皇后と結婚しただけですよ。

 ティランはまさに「騎士道を支えてきた騎士」です。4巻の帯にはこうあります。
 「この騎士が死んでしまえば、この世の騎士道も死滅するであろう」

 解説によるとティランのモデルは、14世紀の傭兵隊長ルジェ・ダ・フローとのこと。
 「アルムガバルス」という傭兵隊を率いて、オスマントルコに抵抗したと言います。

 この傭兵隊もめちゃくちゃ強くて、ギリシア帝国をトルコの脅威から救いました。
 ところが、利用されるだけ利用されたあと、皇帝によってだまし討ちに遭ったとか。

 さて、「ティラン・ロ・ブラン」が書かれたのは、1490年とのことです。
 1453年にはコンスタンチノープルは陥落し、ギリシア帝国が滅亡していました。

 オスマントルコの全盛期だったからこそ、このような小説が求められたのでしょう。
 当時の読者は、物語の中に、古き良き騎士の時代を、虚しく夢見ていたのでしょう。

 さいごに。(トルコ至宝展)

 先日の家族旅行では、乃木坂の国立新美術館の「トルコ至宝展」に立ち寄りました。
 吊るし飾りには、どでかいエメラルドが三つ。豪華さのスケールが違いました。

 また、バラ水を入れる装飾付きの瓶など、騎士道小説でおなじみの物もありました。
 バラ水は気付け薬で、物語では人が倒れるたびに、バラ水の瓶が持ち出されました。

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