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せどり男爵数奇譚 [日本の現代文学]

 「せどり男爵数奇譚」 梶山季之 (ちくま文庫)


 せどりをなりわいとする主人公が、数々の事件に遭遇する連作古書ミステリーです。
 100万部雑誌の編集長だった作者が、1974年に連載した作品6編を収めています。


せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)

せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)

  • 作者: 梶山 季之
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2000/06/07
  • メディア: 文庫



 主人公は、その業界で「せどり男爵」と呼ばれる男、笠井菊哉です。
 22歳で男爵を世襲し、南順之助老と出会ってから、古書の世界に入り込みました。

 菊哉は、田舎の焼き芋屋の店先で、割れた窓ガラスに貼られた和紙を目撃しました。
 それはなんと、芸術品として名高い嵯峨本「光悦謡本」の中の1冊のようなのです。

 店の老婆が収入役の土蔵からもらったというその古書は、あと78冊残っていました。
 それをもらい受けると、残りの22冊を捜し求めて、菊哉の古書漁りが始まりました。

 「幻の一冊を手に入れるまでは〇〇を守り抜く」と、最後の1巻を求めて12年・・・
 ある未亡人が、その一巻と引き換えに要求したものとは?(以上第一話)

 第二話は、永井荷風「ふらんす物語」にまつわる話で、探偵小説ぽくて面白いです。
 千鳥家の家宝であるその本の蔵書票には、ある暗号が記されていて・・・

 第三話は、新羅王朝時代のコインにまつわる話で、しみじみした味わいがあります。
 第四話は、シェイクスピアの初版にまつわる話で、実に腹立たしい。

 第五話は、キリシタン版と盗書狂にまつわる話で、最も凝った展開でした。
 第六話は、姦淫聖書と装丁家の話で、あと味が悪い。これだけは読みたくなかった。

 話の内容はさまざまですが、いずれも本に対する異常な愛情が感じられます。
 本好き、特に古書マニアには、たまらない作品集です。

 書かれたのは1970年代。活字がまだ魔力を持ち、本がオーラを放っていた時代です。
 新聞を跨いだら親に怒鳴られ、本を踏んだら親に張り倒された、古き良き時代です。

 さいごに。(基礎英語2)

 夕食後に、家族3人でNHKラジオの「基礎英語2」を聴いています。
 昔はラジオで聴くしかなかったけど、今はストリーミング再生でいつでも聴けます。

 さて、この「基礎英語2」の話がファンタジー小説で、とても面白いのです。
 中学1年生の娘には、少し内容が難しいですが、結構楽しく続けています。

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コメント 1

サンフランシスコ人

「中学1年生の娘には、少し内容が難しいですが....」

サンフランシスコの中学1年生は、非常に難しい本を読んでいます...
by サンフランシスコ人 (2019-05-07 07:14) 

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