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トロッコ(芥川龍之介) [日本の近代文学]

 「トロッコ・一塊の土」 芥川龍之介 (角川文庫)


 タイトル作など、大正11年と12年に書かれた、転換点を示す21作を収録しています。
 角川文庫は天野喜孝の妖艶なカバーでしたが、現在はてぬぐい柄のカバーです。


トロッコ・一塊の土 (角川文庫)

トロッコ・一塊の土 (角川文庫)

  • 作者: 芥川 龍之介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/10/24
  • メディア: 文庫



 「報恩記」は、盗人が恩に報いるところから始まる、3人の因縁の物語です。
 盗人、北条屋の主人、北条屋の息子と、3人それぞれの視点で語られています。

 北条屋の主人は、かつて命を助けた甚内という盗人に、急場を救われました。
 2年後、甚内が捕縛されさらし首になったと聞いて見に行くと、その首は・・・

 「仙人」は、芥川の遊び心が感じられる、ちょっと愉快な作品です。
 木末に登った奉公人が、右手を放して左手を放すと、いったいどうなるのか?

 「六の宮の姫君」の原典は「今昔物語」で、王朝物語最後の傑作と言われています。 
 9年目にようやく京に帰った男が、姫君の住居を訪ねてみると・・・哀切な話です。

 「雛」もまた哀切な物語です。こういう作品を書かせると、芥川は抜群にうまい。
 大切な雛人形を、明日はアメリカ人に渡すという日の夜、娘が見た光景は・・・

 「一塊の土」は、芥川の転機を明らかにする農民小説だと言われています。
 働き者の嫁と一緒に、働き続けた老婆が、やっと一息つけたのはいつか?

 と、五作ほど紹介してきましたが、この本で最も有名なのは「トロッコ」でしょう。
 トロッコに憧れていた良平は、土工たちと一緒にトロッコを押し始めましたが・・・

 内容は、紹介するまでもありません。小学校の国語の教科書に載っていました。
 ただし正直に言って、当時も今もこの作品の良さが、私にはよく分かりません。

 トロッコを押して行って、帰って来た、心細くなって泣いた、というだけでしょう。
 結末部だってそれほどうまいと思えません。「だから、何?」と言いたくなります。

 この本には、ほか15作を収録していますが、あまり見るべきものはありません。
 大正11年前後の芥川は、体調を崩しがちだったから、傑作が少ないのでしょうか。

 さいごに。(娘は「蝦夷」と書ける)

 中学生になって、国語の授業以上に、日本史で漢字を書くようになったようです。
 「蝦夷」「平等院鳳凰堂」「遷都」などなど。特に「蝦夷」にはびっくりです。

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