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世界文学の流れをざっくりとつかむ29 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第六章≫ ルネサンス期から十七世紀の文学

 9 江戸時代の文学

 1603年に江戸幕府が成立して鎖国政策がとられると、太平の世が始まり、文化が庶民にも広がり興隆に向かいました。江戸時代は250年以上続き、その終わりは19世紀後半となりますが、書き言葉と話し言葉が明確に分かれていたこの時代までは、中世として扱いたいと思います。

 江戸時代に入ると貨幣経済が浸透したため、上方の町人階級の経済力が増大し、町人文化が花を咲かせました。それを下から支えたのが、寺子屋という日本独自の教育機関でした。寺子屋では僧侶や神官や浪人が、庶民の子弟に読み書きを教えたため、識字率が高くなり大衆文学が花開きました。

 江戸時期前期に目立った活躍をしたのが、大阪の井原西鶴でした。西鶴が取り組んだ浮世草子とうジャンルは、享楽的な生活や好色な風俗を描いた写実的小説で、まさに庶民受けするものでした。1682年に出て広く読まれた「好色一代男」は、世之介一代の好色生活を描いた物語です。その後、「好色五人女」「好色一代女」なども出ました。 さらに、金持ちになる方法を描いた「日本永代蔵」、年末に悪戦苦闘する町人を描いた「世間胸算用」、諸国の珍談集「西鶴諸国ばなし」、放蕩の果てに零落する町人を描いた「西鶴置土産」など、幅広い内容の作品を書き続けました。私は井原西鶴を、17世紀の世界文学を代表する作家のひとりだと考えています。

 西鶴と同時期に活躍した人物で忘れてはならないのが、松尾芭蕉です。芭蕉は1600年代後半に出た俳人で、「さび」を重視し蕉風を確立しました。また各地を漂泊して、「野ざらし紀行」「更科紀行」などの優れた紀行文を残しました。特に1694年頃成立した「奥の細道」は、俳文中の傑作とされています。芭蕉の活躍によって、これまで言葉遊びにすぎなかった俳諧が、庶民の高尚な芸術として認識されるようになりました。

 この時期にはほかにも、大阪の近松門左衛門の人形浄瑠璃が大流行しました。人形浄瑠璃は、人形を使った芸能で、庶民から支持されました。時代物では1715年の「国性爺合戦」、世話物では1711年の「冥途の飛脚」や1721年の「女殺油地獄」などがあります。しかし、何といってもその代表作は1703年の「曽根崎心中」です。庶民からたいへん愛された心中物語ですが、文章の美しさでも知られています。

 このように江戸時代前期には、浮世草子や俳諧や人形浄瑠璃などで優れた作品が残されました。1700年前後の元禄時代が、江戸時代前期の文学のピークでした。こののち1700年代中頃には江戸で出版文化が成立し、文学の中心は江戸に移っていきます。江戸時代後期には、読本(よみほん)や滑稽本や人情本などで多様な作品が残されました。

 読本の作者には、上方で活躍した上田秋成がいます。読本とは主に、中国の影響を受けた伝奇小説集のことを指します。その代表作は 1776年に出た「雨月物語」で、9編の怪異小説集です。ほかに、遺作となった「春雨物語」があります。秋成に続いて登場したのが、江戸で活躍した曲亭馬琴です。因果応報と勧善懲悪を重視した作風で人気を呼びました。1807年から刊行され始めた「椿説弓張月」は、保元の乱で敗れた八郎為朝の活躍を、琉球王朝再建とからめて壮大なスケールで描いています。また、1814年から1842年まで長きにわたって書き続けられた「南総里見八犬伝」は、八犬士の波乱万丈の活躍を描いた一大長編小説であり、馬琴の代表作となりました。

 十返舎一九は滑稽本の作家です。滑稽本とは笑いを目的とした小説です。代表作は、1802年から1822年にかけて書き継がれた「東海道中膝栗毛」で、弥次さんと北さんの旅を面白おかしく描いています。続いて登場したのが式亭三馬です。代表作は、1809年から1813年に書き継がれた「浮世風呂」で、庶民の社交場である銭湯を舞台にして、リアルな会話が再現されています。そのあと登場した為永春水は、人情本の代表的作者です。人情本は、遊里風俗などを描いた恋愛小説です。代表作は、1832年に刊行された「春色梅児誉美(うめごよみ)」で、ひとりの色男と三人の女をめぐる恋を描いています。馬琴や春水らの作品が、江戸時代の最後の輝きでした。

 次回からは、いよいよ西洋における近代文学について書いていきたいと思います。

 さいごに。(パパ久々の活躍)

 先日家で娘が、「パパ、すぐ来て! 活躍するチャンスだよ!」と呼びに来ました。
 何かと思って行ってみると、洗濯物に蛾が止まっていて、ママが怖がっていました。

 私はビニール袋で蛾を捕えて、外に逃がしました。こういうことは得意なのです。
 ところで、こういうこと以外で、私は最近お父さんらしいことをしただろうか?

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