樹影譚 [日本の近代文学]
「樹影譚」 丸谷才一 (文春文庫)
樹の影の固定観念を持つ老小説家が、その理由を思いがけなく発見する物語です。
村上春樹の「若い読者のための短編小説案内」で、興味深い紹介がされていました。
老小説家の古屋逸平は、なぜか樹の影に惹かれ、作品中にも何度か描いてきました。
楡の夕影を見たとき、「樹の影、樹の影、樹の影」と無意識につぶやいていました。
講演旅行で郷里に帰ったとき、古屋のファンだという老女の屋敷に招かれました。
その老女が古びた写真を、古屋に手渡しました。そこに写っていたのは・・・
樹の影の記憶は、どこからもたらされたのか?
「キノカゲ、キノカゲ、キノカゲ」・・・あの言葉は、どこからもたらされたのか?
非常にうまくて面白い作品です。なんとも言えない不思議な余韻を残します。
また、最後まで謎が残ります。いったい、あの老女は何だったのか?・・・
タクシーで老女の屋敷に向かう辺りから、異界を訪れる雰囲気になりました。
そしてランプが出たところから、まったくあちらの世界へ入り込んだような・・・
それにしても、ラストの「前世へ、未生(みしょう)以前へ」とはどういうことか?
さまざまな解釈が成り立ちそうな作品です。短編小説のお手本のような作品です。
さて、この短編集には、ほか2編が収録されています。
どちらも若い世代を主人公にしていて、「樹影譚」とはまったく違う作風でした。
「鈍感な青年」は、若い男女の恋の物語です。みずみずしい青春小説です。
図書館で出会った初心(うぶ)な男女が、初めてのデートのあと・・・
私は、青年の死んだ親友のことが気になりました。何かわけがありそうだったので。
その死の理由は謎のまま残されました。私としては、そこが知りたかったのですが。
「夢を買います」は、銀座の若いホステスが一人称で語る物語です。
彼女は援助交際している宗教学者に、友人の見た夢をアレンジして語って・・・
私は女性の一人称小説は苦手なのですが、意外とすんなり物語の世界に入れました。
導入部の夢の話から興味深かった。ただし他の二編に比べてこれはオマケ的作品か。
ところでこの本には、独特の美点があります。それは活字がとても大きいことです。
ページ数を稼ぐための処置かもしれませんが、老眼に苦しむ私にはありがたいです。
このブログでは丸谷才一の「女ざかり」「文学のレッスン」等を紹介してきました。
「女ざかり」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2017-06-19
「文学のレッスン」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-10-18
しかし、なんと言っても代表作は、「笹まくら」なんだそうです。絶対読みたい!
「若い読者のための短編小説案内」でも、「樹影譚」の章で取り上げられています。
しかし「笹まくら」以上に読みたいのが、丸谷才一が翻訳している「ユリシーズ」。
ジェイムズ・ジョイスの名作です。読もう読もうと思いながらも機会がなくて・・・
さいごに。(年末ジャンボ)
今年も小遣いで年末ジャンボを3枚購入し、妻と娘に1枚ずつ配りました。
4等の5万円以下なら、ひとり占めしていい、ということにしています。
勝負事が嫌いなうちの女性陣は、「900円がもったいない」と文句を言います。
「もったいないと思ったら、当選するようしっかり祈れ」と言ってやりたい。
樹の影の固定観念を持つ老小説家が、その理由を思いがけなく発見する物語です。
村上春樹の「若い読者のための短編小説案内」で、興味深い紹介がされていました。
老小説家の古屋逸平は、なぜか樹の影に惹かれ、作品中にも何度か描いてきました。
楡の夕影を見たとき、「樹の影、樹の影、樹の影」と無意識につぶやいていました。
講演旅行で郷里に帰ったとき、古屋のファンだという老女の屋敷に招かれました。
その老女が古びた写真を、古屋に手渡しました。そこに写っていたのは・・・
樹の影の記憶は、どこからもたらされたのか?
「キノカゲ、キノカゲ、キノカゲ」・・・あの言葉は、どこからもたらされたのか?
非常にうまくて面白い作品です。なんとも言えない不思議な余韻を残します。
また、最後まで謎が残ります。いったい、あの老女は何だったのか?・・・
タクシーで老女の屋敷に向かう辺りから、異界を訪れる雰囲気になりました。
そしてランプが出たところから、まったくあちらの世界へ入り込んだような・・・
それにしても、ラストの「前世へ、未生(みしょう)以前へ」とはどういうことか?
さまざまな解釈が成り立ちそうな作品です。短編小説のお手本のような作品です。
さて、この短編集には、ほか2編が収録されています。
どちらも若い世代を主人公にしていて、「樹影譚」とはまったく違う作風でした。
「鈍感な青年」は、若い男女の恋の物語です。みずみずしい青春小説です。
図書館で出会った初心(うぶ)な男女が、初めてのデートのあと・・・
私は、青年の死んだ親友のことが気になりました。何かわけがありそうだったので。
その死の理由は謎のまま残されました。私としては、そこが知りたかったのですが。
「夢を買います」は、銀座の若いホステスが一人称で語る物語です。
彼女は援助交際している宗教学者に、友人の見た夢をアレンジして語って・・・
私は女性の一人称小説は苦手なのですが、意外とすんなり物語の世界に入れました。
導入部の夢の話から興味深かった。ただし他の二編に比べてこれはオマケ的作品か。
ところでこの本には、独特の美点があります。それは活字がとても大きいことです。
ページ数を稼ぐための処置かもしれませんが、老眼に苦しむ私にはありがたいです。
このブログでは丸谷才一の「女ざかり」「文学のレッスン」等を紹介してきました。
「女ざかり」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2017-06-19
「文学のレッスン」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-10-18
しかし、なんと言っても代表作は、「笹まくら」なんだそうです。絶対読みたい!
「若い読者のための短編小説案内」でも、「樹影譚」の章で取り上げられています。
しかし「笹まくら」以上に読みたいのが、丸谷才一が翻訳している「ユリシーズ」。
ジェイムズ・ジョイスの名作です。読もう読もうと思いながらも機会がなくて・・・
ユリシーズ 文庫版 全4巻完結セット (集英社文庫ヘリテージ)
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/02/01
- メディア: 文庫
さいごに。(年末ジャンボ)
今年も小遣いで年末ジャンボを3枚購入し、妻と娘に1枚ずつ配りました。
4等の5万円以下なら、ひとり占めしていい、ということにしています。
勝負事が嫌いなうちの女性陣は、「900円がもったいない」と文句を言います。
「もったいないと思ったら、当選するようしっかり祈れ」と言ってやりたい。
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