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回想のブライズヘッド1 [20世紀イギリス文学]

 「回想のブライズヘッド(上)」イーヴリン・ウォー作 小野寺健訳(岩波文庫)


 青春時代に過ごしたブライズヘッドでの日々を、懐かしく描いた傑作長編です。
 1945年の刊行時、これまでの皮肉な路線から脱し、賛否両論を巻き起こしました。

 以前吉田健一の名訳が、ちくまから「ブライヅヘッドふたたび」で出ていました。
 小野寺訳は読みやすい新訳。今年3月に復刊されました。今が手に入れるチャンス。


回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)

回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/01/16
  • メディア: 文庫



 青年期を回想するのは、第二次大戦時に39歳の中隊長、チャールズ・ライダーです。
 ライダーの連隊は、ブライズヘッドという美しい土地に宿営することになりました。

 そこには礼拝堂を併設した豪華な屋敷があり、ライダーは懐かしい思いに浸ります。
 そこは、青年期にセバスチアンという親友と過ごした、思い出の場所だったのです。

 セバスチアンとの出会い、不良学生らと過ごした1年目、ブライズヘッドでの休暇、
 セバスチアンとのヴェニス行き、交通違反事件、そして苦悩するセバスチアン・・・

 「青春の倦怠――これほど類のない、純粋なものがあろうか! しかもそれはたちま
 ちのうちに失われて、二度と帰っては来ない!」(P149)

 まず第一に驚いたことは、この小説が実に素直で分かりやすく書かれている点です。
 作者は、ブラックユーモアの効いたヘンな物語を書く人、というイメージなので。

 以前紹介した処女作「大転落」の登場人物は、ひと癖もふた癖もあるし・・・
 「ご遺体」は途中から、「なんじゃ?」と言いたくなるような展開だし・・・
 「大転落」「ご遺体」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-03-27

 しかし、全体的に「回想のブライズヘッド」は、健全で美しい味わいがあります。
 首をかしげたくなるジョークもなく、突飛な展開もなく、安心して楽しめました。

 ただし、セバスチアンが何に苦悩しているのかが、よく分かりませんでした。
 その原因は、彼の家族(特に母親)にあることは、確かなのですが。

 彼は、由緒正しい家系で大金持ちです。美しきブライズヘッドは彼らの所領です。
 しかし、父はヴェニスで愛人とともに暮らしていて、屋敷に寄り付かないのです。

 母親はカトリックで、子供たちも敬虔なカトリックとして厳しく育てられました。
 そして、カトリックであることが、セバスチアンを苦しめているようなのです。

 「わたしには、あなたたちのその宗教というものさえなければ、セバスチアンは
 幸福で健康な人間になれるんじゃないかと思えるんです。」(P281)

 彼は、ライダーが自分の母親と話をしたとき、「ママのスパイ」と言いました。
 つまりセバスチアンは、母親に干渉されるのを、極度に嫌がっているようです。

 私のカトリックのイメージは、常に神が人間に目を光らせているというもの。
 イギリス国教会と違い(?)、厳格で、不寛容で、融通が利かないという感じ。

 ところで、どこかに「セバスチアンの愛に応えず」みたいな表現がありました。
 二人はただの友人同士ではなく、その仲はただならぬものなのでしょうか?

 現在、上巻が終わったところです。まだよく分からない部分が多いです。
 このあと下巻ではどのような展開があるのか、とても楽しみです。

 さいごに。(浦島太郎状態)

 私は、ブログを3日に1回更新しています。これがちょうどいいペースです。
 そしてそのときついでに、ツイッターを開いています。

 ところが大量のツイートが溢れていて、3日前のツイートなど、はるか昔のもの。
 浦島太郎状態です。しかし私は自分のペースを守り、3日に1度ツイートします。

 ツイッター → https://twitter.com/ikepyon10

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