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夕暮まで [日本の近代文学]

 「夕暮まで」 吉行淳之介 (新潮文庫)


 処女にこだわる若い杉子との交際を軸に、中年男佐々のけだるい生活を描いています。
 七章からなる連作小説で、1978年に出て話題となり、1980年には映画化されました。


夕暮まで (新潮文庫)

夕暮まで (新潮文庫)

  • 作者: 淳之介, 吉行
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1982/05/27
  • メディア: 文庫



 40過ぎで、妻と中学生の娘を持つ佐々は、杉子という若い女性と付き合っています。
 杉子は、処女性にこだわっていて、ホテルでは最後の一線だけを許そうとしません。

 杉子との交際が1年半ほどになったとき、彼女の周りに若い男の影がちらつき・・・
 そしてあるとき杉子は・・・

 正直に言って私には、やや難解な小説でした。よく分からない部分がありました。
 第一、杉子との性行為の描写があるのに、処女というのはどういうことなのか?

 「杉子は仰向けになって、全身を真直ぐに伸ばしている。
  両脚が堅く合さって、横腹にはそれぞれ左右の腕が貼りついたようになっている。
 強く締め合せた腿の付根の窪みに、オリーブオイルを滴らせ、佐々は覆いかぶさって
 ゆく。」(P40)

 要するにこれは、風俗で言う「スマタ」というやつです。
 刊行当時、「スマタ」で終わらせる設定が、話題となったのだそうです。

 杉子がそこにこだわるのは、処女であることが大事な武器だと考えているからです。
 そしてこの状況は、家庭のある佐々にとっても、心地よいものだったのではないか。

 逆に、佐々にとって一番怖いのは、杉子の次のような一言だったのではないか。
 「佐々さん、あたしと結婚することはできないの」(P87)

 杉子が一線を許さなかったのは、佐々に無理やり奪ってほしかったからではないのか?
 だから、わざと若い男といちゃついたり、佐々を挑発したりしたのではないか?

 しかし、佐々は決して杉子とそのことで、向き合おうとしませんでした。
 だから絶望した杉子は、あのような行動を取ったのではないのか?

 私自身もこの小説を読んで、佐々という男の生き方に、いらだちを覚えました。
 男は、特に父親は、こんなふうになっちゃダメですよ。もっと家庭を大事にしろ!

 佐々にはほかにも、みえ子、祐子、園子などの女がいました。
 でも、どうして不倫に走ってしまうのか描かれていないので、共感できませんでした。

 不倫は、自分も含めて、誰も幸せにしません。ただただ虚しいだけです。
 ということを、私を含めて世の男たちに分からせたことが、この作品の美点でしょう。

 私のとって「夕暮まで」は、けだるくてむなしいエロ小説でしかありませんでした。
 吉行淳之介の代表作は、やはり娼婦小説かなあ。
 「原色の街・驟雨」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2020-12-21

 さいごに。(私の株が一瞬上がる)

 家の中に蜘蛛が出ました。娘のてのひらぐらいある大きな蜘蛛です。
 それをつかまえて、庭に放しました。そのときだけ、「さすがパパ」と言われました。

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