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瘋癲老人日記1 [日本の近代文学]

 「瘋癲老人日記」 谷崎潤一郎 (中公文庫)


 息子の嫁の足を愛する、不能の老人の煩悶を、カタカナの日記でつづった作品です。
 晩年を飾るいかにも谷崎らしいヘンタイ小説ですが、毎日芸術大賞を受賞しました。


瘋癲老人日記 (中公文庫)

瘋癲老人日記 (中公文庫)

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2001/03/25
  • メディア: 文庫



 小説は冒頭、主人公の老人が、美少年の女形と同衾したときの回想から始まります。
 あっと驚くような体験談によって、いっきに物語の世界に引き込まれました。

 「事ヲ行ウニ至ッテモ、普通ノ藝妓ト普通ノ方法デ行ッテイルノト異ルトコロハナカ
 ッタ。ツマリ彼ハ最後マデ男子デアルコトヲ相手ニ感ジサセズ、女性ニナリ切ッテイ
 タ。」(P10)

 主人公の老人は77歳になります。明らかに、完結時に77歳であった谷崎の分身です。
 彼は性的に不能でありながら、息子の嫁である颯子(さつこ)に恋焦がれています。

 「既ニ全ク無能力者デハアルガ、ダカラト云ッテイロイロノ変形的間接的方法デ
 性ノ魅力ヲ感ジルコトガ出来ル。」(P27)

 「変形的間接的方法」とは、颯子の足に対して異様な執着心を抱いていることです。
 そして、そういう老人の嗜好を、颯子はなんとなく察しているらしいのです。

 老人と颯子は、お互いに良き理解者です。だから二人は自然と共犯関係になります。
 颯子の浮気を見逃す代わりに、彼女の足をしゃぶり回すことを許された老人は・・・

 「一生懸命ニ気ヲ静メヨウ、興奮シテハナラナイト自分デ自分ニ云イ聞カセタガ、オ
 カシナコトニ、ソウ思イナガラ、彼女ノ足ヲシャブルコトハ一向ニ止メナカッタ。止
 メラレナカッタ。イヤ、止メヨウト思エバ思ウホド、マスマス気狂イノヨウニナッテ
 シャブッタ。死ヌ、死ヌ、ト思イナガラシャブッタ。」(P94)

 「死ぬ、死ぬ、と思いながらしゃぶった」・・ここまでくると滑稽ではありません。
 この日、老人の血圧は200を超えました。もし死んでいたら、サイコーの最後ですよ。

 このあとも、老妻に隠れて颯子に迫る、老人のヘンタイぶりが実にいじらしいです。
 一方で、一枚上手の颯子は老人を手玉に取り、300万の指輪をまんまと手に入れます。

 改築のためのお金をせしめられた老人は、しかし勝ち誇った颯子を見て喜ぶのです。
 そんな老人が、子供のようでかわいらしいです。これはマゾ的な快楽でしょうか。

 ところで、この作品を私は、ユーチューブで聴きながら読みました。
 ユーチューブには、さまざまな文学の朗読が揃っているのですね。



 余談ですが、作中の老人は頸椎症で、首吊り機で顎の牽引をしていました。
 私も頸椎症で、同じリハビリをやりました。老人に親しみが湧いてしまいました。

 ただし彼は77歳、私は54歳。腕の痺れがくるには、私はまだ早すぎたようです。
 最近は少し良くなりました。痺れがだいぶやわらいできています。

 さいごに。(五輪開幕!)

 新型コロナの影響で史上初の1年延期となり、緊急事態宣言下で行われる東京五輪!
 よく開催してくれました。関係者の皆さん、スタッフの皆さん、本当にご苦労様です。

 この五輪は、特別な大会です。必ず歴史に残る大会です。
 今はみんなで一致団結して、オリンピックを成功に導いてほしいです。

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