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リプリー [20世紀アメリカ文学]

 「リプイー」 パトリシア・ハイスミス作 青田勝訳 (角川文庫)


 貧しい青年のトム・リプリーが、友達になりすまして大金をせしめる物語です。
 1960年のアラン・ドロン主演映画、「太陽がいっぱい」の原作として有名です。


リプリー (角川文庫)

リプリー (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2021/10/07
  • メディア: 文庫



 トム・リプリーは、あるときグリーンリーフという紳士からある依頼を受けました。
 それは、放蕩息子のディッキーをイタリアから連れ戻してほしいというものでした。

 彼は、トムとディッキーを親友だと思っていたようです。トムは承知しました。
 トムは、グリーンリーフ氏に旅行代金を出してもらい、イタリアに向かいました。

 ディッキーはモンデベロで、マージという女友達と毎日気ままに暮らしていました。
 トムはすぐにディッキーに気に入られて、一緒に遊び歩くようになりました。

 ところが、トムはやがてディッキーの気まぐれに振り回されるようになりました。
 そして、金持ちで磊落なディッキーに対して、複雑な感情が生じてきました。

 「トムは、ディッキーの閉じたまぶたを見つめていると、憎悪と、愛情と、あせり
 と挫折感との狂おしい気持が胸いっぱいにこみあげてきて、息がはずんだ。ディッ
 キーを殺してやりたい。そう思ったのは、いまが初めてではなかった。」(P132)

 トムは他人のものまねがうまく、ディッキーに少し似ていることに気付き・・・
 サンレモでボートを借りたときに、トムはとうとう・・・

 私の脳裏には、以前見た「太陽がいっぱい」のラストシーンが焼き付いています。
 だから「リプリー」も、自分の罪から逃げられないだろうと思っていました。

 そのため、いつばれるか、いつばれるかと、ヒヤヒヤしながら読みました。
 一度読み始めたら止まりません。ハラハラドキドキの連続でした。

 ところが、びっくりです。まさか、映画と原作がこれほど違うとは!
 私は原作に違和感を覚えました。原作の方が間違っているような気がしました。

 ラストの部分に、「これは冗談だろうか?」(P384)とあります。
 私には、この物語自体が、ひとつのよくできた冗談のように思えました。

 ところで、トムを犯罪に向かわせたのは、上流階級への憧れだけではありません。
 ディッキーへの愛情と嫉妬も、大きかったようです。

 トムは、どこでも一流の生活をするディッキーという存在に憧れていました。
 憧れはいつか愛となり、ディッキー自身になりたいという思いにまで達しました。

 マージが見抜いたように、トムには同性愛者的な傾向があったのでしょうか。
 マージに対する嫉妬が見え隠れしますが、トムの心理は非常に屈折していました。

 さて、「リプリー」はシリーズ化されました。「贋作」など続編があります。
 また2016年には、河出文庫から「太陽がいっぱい」として新訳が出ています。


太陽がいっぱい (河出文庫)

太陽がいっぱい (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/05/07
  • メディア: 文庫



 なお、1960年の「太陽がいっぱい」は名画です。アラン・ドロンがいい。
 また、1999年の「リプリー」はもう少し原作に忠実だと言う。気になります。


太陽がいっぱい [DVD]

太陽がいっぱい [DVD]

  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
  • 発売日: 2002/10/25
  • メディア: DVD



リプリー [DVD]

リプリー [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント
  • 発売日: 2021/07/21
  • メディア: DVD



 さいごに。(「インターステラー」すごい)

 10歳の娘に「必ず帰る」と約束し、その約束を本当に守って・・・
 しかし、二人が再会したのは〇〇年後で、すでに娘のマーフは・・・

 娘と別れる場面も泣けましたが、再開の場面も泣けました。
 重力と時間について、ユーチューブでおさらいしています。




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