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見知らぬ乗客 [20世紀アメリカ文学]

 「見知らぬ乗客」 パトリシア・ハイスミス 白石朗訳 (河出文庫)


 偶然列車に乗り合わせた見知らぬ乗客に、交換殺人を持ちかけられた男の物語です。
 ハイスミスの記念すべきデビュー作であり、ヒッチコックにより映画化されました。


見知らぬ乗客 (河出文庫)

見知らぬ乗客 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/10/05
  • メディア: 文庫



 才能に恵まれた建築家ガイ・ヘインズは、別居中の妻ミリアムに悩まされていました。
 ミリアムは浮気性で、他人の子供を身ごもり、ガイに助けを求めてきたのでした。

 妻のもとへ向かう列車の中で、ガイはブルーノという金持ちの青年と出会いました。
 完全殺人のアイディアがいくつもあると言うブルーノは、ガイに話を持ちかけました。

 「殺す相手を交換したらどうでしょう? ぼくはあなたの奥さんを殺し、あなたはぼく
 の親父を殺す。(中略)完璧なアリバイだ! わかります?」(P54)

 もちろんガイは取り合いません。列車を降りて、それきり縁を切ったつもりでした。
 ところが、ブルーノは後日、勝手にミリアムを殺してしまって・・・

 ブルーノという変な男に会ったばかりに、ガイの人生は悲劇へと進み始めました。
 自分の望まない方向へブルーノに引っ張られ、ずるずると流されていくのです。

 それにしても、どうしてとっととブルーノを警察に突き出さなかったのでしょうか。
 ブルーノのストーカー行為が、催眠術のようにガイを支配していったのでしょうか。

 交換殺人を行うに至って、ガイとブルーノは切っても切れない関係となります。
 さらには、ガイはブルーノに嫌悪しながらも、愛着を抱くようにさえなるのです。

 私が最も興味深く感じたのは、まさにこの点です。
 さらに、ふたりの異常で妖しい関係は、同性愛的な傾向を帯びていくのです。

 この小説は、初めて交換殺人を描いたということで、評価がとても高い作品です。
 しかし作者が描きたかったのは、ふたりの関係の微妙な変化だったように思います。

 さて、物語の随所に、イミシンな言葉が登場します。
 次のような言葉から、ハイスミスの作品に一貫して見られるテーマが垣間見えます。

 「きょうの朝この服を身につけて自分がある人物になったのだとすれば、今夜この服
 を脱げばまた別人になり、そのあとはその人物でいられるのではないか。」(P173)

 「二重なんだ! どんな人間のなかにもふたりの人間がいる。この世界のどこかには、
 きみと完全に正反対の人間もいるーーいわば、きみの見えない一部分のようなもので、
 そいつは隠れひそんでいるんだ」(P443)

 ところで、私はラストシーンがいまいちだと思いました。
 映画版はチャンドラーが脚本を書いています。どう変わっているか? 気になります。


見知らぬ乗客 [DVD] FRT-106

見知らぬ乗客 [DVD] FRT-106

  • 出版社/メーカー: ファーストトレーディング
  • 発売日: 2006/12/14
  • メディア: DVD



 さいごに。(クリスマス・プレゼントは?)

 娘が小さいときは、クリスマスプレゼントを買ってあげることが小さな喜びでした。
 娘が無邪気にサンタさんを信じていたのは遠い昔の思い出です。あの頃が懐かしい。

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