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孤独について [哲学・歴史・芸術]

 「孤独について」 中島義道 (文春新書・文春文庫)


 孤独だった自分の過去を披露したうえで、孤独を選び楽しむことを勧めた本です。
 1998年に出た文春新書版は絶版ですが、現在は文春文庫に入っています。

 (私が読んだのは文春新書版です。以下の引用のページも、新書のページです。)


生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春文庫)

生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春文庫)

  • 作者: 中島 義道
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/11/07
  • メディア: 文庫



 「ごまかすのはやめなさい! あなたはまもなく死んでしまうのだ。あなたをまもな
 く襲う『死』をおいてほかにもっと大切な問題があるだろうか?(中略)もうすぐ死
 んでしまうあなたが、必死に日常的な問題にかかずらっていること、それはたぶん最
 も虚しい生き方である。」(p12)

 と、本書でも序盤から中島節がさく裂しています。
 日常的な問題に関わるのは虚しい生き方だと断定。では、どうしたらいいのか?

 中島は、時間を与えることをやめて自分のためだけに使え、と言います。
 この考えは「人生を〈半分〉降りる」という考えに通じます。孤独のススメです。

 自分をもっと大事にしようという中島の考え方には、私も救われたことがあります。
 しかし同時に、自分のことしか考えないような姿勢は、病んでいるように思えます

 病んで屈折し、毒を抱え込んでいます。(そこが、たまらなく魅力的なのですが)
 どうして彼は、そのような考えを持つに至ったのか。本書ではそこが分かります。

 「死ぬのが嫌だ! 死ぬのが嫌だ!」と言って、小学校を休んだ日々。
 「ぼくは死んでしまう。そして生き返らない。」と呪文のように唱え続けた日々。

 そして、学校からの帰り道、世界が折れ曲がって、おかしな空間が見え始めて・・・
 異次元の世界の入り口がぽっかり穴を開け、「私」はそこに入っていき・・・

 この本の面白いのは、中島の変人ぶりがよく分かる数々のエピソードです。
 特に、少年時代からの死に対する恐怖を大事にしている点に、深く共感しました。

 「子供のころから、『死』を免れることができないのならごまかして死にたくないと
 私は思っていた。私が抱いている実感を大切にして死にたいと願った。つまり、から
 っぽの宇宙のただ中で、数百億年の宇宙の歴史のうちで、今与えられた生命の火を消
 すこと、そしてその後何億年しても何兆年しても・・・永遠にふたたび生きることは
 ないという背筋の寒くなるような実感を大切にして死ぬことを願った。」(P193)

 普通の人はそれほど強くないので、不死を願ったり思考停止したりします。
 ちなみに、私は生まれ変わりを信じることで、死への恐怖を緩和させています。(笑)

 ところで、本書は文春新書版を持っているのに、文春文庫版も買ってしまいました。
 「人生を〈半分〉降りる」も、新潮OH!文庫版とちくま文庫版の両方を買いました。

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 さいごに。(ロシア、ウクライナ侵攻)

 北京五輪が終わったらロシアがウクライナに侵攻するかも、とは聞いていました。
 バイデン大統領も、ウクライナがやばい、と言い続けていました。

 「まさかね」と思っていましたが、驚くことにロシアは実際に侵攻を始めたのです!
 第三次世界大戦という言葉も聞こえ始めました。「まさかね」と思っていますが・・・

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