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芽むしり仔撃ち [日本の現代文学]

 「芽むしり仔撃ち」 大江健三郎 (新潮文庫)


 戦争中に集団疎開した感化院の少年たちが、自分たちの王国建設を目指す物語です。
 1958年に刊行された作者初の長編小説です。「万延元年」と色んな点で似ています。


芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

  • 作者: 健三郎, 大江
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/04/30
  • メディア: 文庫



 「人殺しの時代だった。永い洪水のように戦争が集団的な狂気を、人間の情念の襞ひ
 だ、躰のあらゆる隅ずみ、森、街路、空に氾濫させていた。」(P14)

 戦時中に、感化院の少年たちが、ある村の山奥に集団疎開しました。
 村長は言いました。「お前らは厄介者だということを忘れるな」と。

 最初の作業は、犬、猫、ネズミなど、数々の動物の死体を埋めるというものでした。
 村で疫病が流行り始めていたのです。ある夜、村人たちは隣の村へ逃げて行きました。

 村に取り残されて絶望していた少年たちは、自分たちで生きていく覚悟を決めて・・・
 同じく見捨てられた少女、朝鮮人の少年、脱走兵らと協力しながら生活を始めて・・・  

 やがて雪が降りました。その雪は、祝祭の合図だったのか、崩壊の合図だったのか?
 突然はやり始めた疫病・・・そして、不意に現れた大人たちは・・・

 「出来ぞこないは小さいときにひねりつぶす。俺たちは百姓だ、悪い芽は始めにむし
 りとってしまう」(P218)・・・

 「万延元年のフットボール」が思いのほか面白かったので、この作品を読みました。
 閉ざされた寒村で自分たちの世界を作ろうとする点で、「万延元年」と似ています。

 しかし、「万延元年」と違って、まったく救いがありません。本当に23歳の作品か?
 ラストは、もう少し希望が感じられる終わり方をしてほしかったです。

 さて、大江健三郎の作品でもう1冊外せないのが、「個人的な体験」だそうです。
 機会があったら読んでみたいです。


個人的な体験 (新潮文庫)

個人的な体験 (新潮文庫)

  • 作者: 大江 健三郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1981/02/27
  • メディア: ペーパーバック



 さいごに。(名古屋ドーム)

 以前妻と娘は、ジャニーズのコンサートを見るために、名古屋ドームに行きました。
 今度は妻ひとりで、なんと、セパ交流戦の中日対オリックスを見に行くのだそうです。

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