ゴルディアスの結び目 [日本の現代文学]
「ゴルディアスの結び目」 小松左京 (角川文庫)
タイトル作は、憑きものにつかれた少女の心の中を、装置を使って探検する物語です。
1977年に刊行された短編集です。全4作が収録されています。
「かつて、それは『部屋』だった。(中略)いま、それは、直径二十五センチ弱の、
表面にわずかな凹凸のあるボールになっている。」(P75)
間口5m、高さ4m、奥行き7mの鉄筋の部屋が、今では小さな球体となっている!
しかも重量は50トン・・・冒頭から驚愕しました。いったいどういうことか?
サイコ・エクスプローラー(心理探検家)の伊藤は、山奥の病院に呼ばれました。
そこでは、18歳の少女マリアが、4本の鉄の帯で寝台に縛り付けられていました。
マリアの口には3センチほどの牙があり、頭には3本の角が生えていました。
そして彼女は、縛られたまま寝台を持ち上げ、岩や石を降らせるというのです。
マリアは八ヶ月前、四歳年上の恋人をかみ殺し、その心臓を食べたのだそうです。
伊藤は彼女を救うべく、装置を使って彼女の心の中に入り込んで・・・
マリアには何が憑いているのか? なぜ何もない空間から岩が降ってくるのか?
院長は何を探ろうとしているのか? 病院を運営する財団の真の目的は何か?
「彼女は、憑きものを・・・つまり超常現象を、精密な科学観測の場へもたらしてく
れる媒体だ。」(P132)
伊藤は、マリアの心の奥に何を見たのか?
そして、恐るべき結末!・・・
私はNHK「100分de名著」の小松左京スペシャルで、この小説を知りました。
短編ながら、壮大なスケールです。そして、描写がすごい。いろんな意味で。
「一見野菊に似た花の一つ一つは、膿みただれた痔瘻の肛門そっくりの色と形をして
おり、花びらには血と膿がしたたり、花芯のまわりには淫らな毛がはえ、乾いた糞便
さえこびりついている。時おりいくつかの花の中心がひらいて、中から血まじりの太
い糞便がのろりと吐き出されてきた。(中略)はい出して来た黄褐色の糞便は、巨大
なみみずのように、自分であたりをのろのろと這いまわり・・・」(P145)
この物語の真の魅力は、小松一流のユニークで壮大な宇宙観にあると思います。
しかしどうしても、うんこのミミズが這いまわる光景ばかりが、印象に残りました。
さて、冒頭の「岬にて」は、人が死ぬために集うという、不思議な島の物語です。
しかし難解で、私には結末がどういうことなのか、まったく分かりませんでした。
「すぺるむ・さぴえんすの冒険」は、ある男に不思議なメッセージが届く物語です。
そのメッセージは次のような内容で、眠っている間に、何度も届けられてきました。
「お前を人類の中からただ一人えらんで、宇宙の一切の秘密と真理を教えよう。そ
の代償に、こちらは二百二十億の全人類の生命をうばう・・・」(P157)
どうやらこのメッセージは、超空間のゲートを通って、送られてきているようです。
何者からのメッセージか? なぜ彼が選ばれたのか? 彼はどのように対応するか?
「あなろぐ・らう゛」もまた、作者一流の宇宙観が味わえる作品です。
しかし、全体を通して小難しいことばかり述べていて、物語の魅力はいま一つです。
以上、全4編ありますが、完成度は「ゴルディアスの結び目」が突出していました。
「ゴルディアスの結び目」を読むためだけにも、この本を買う価値はあります。
さいごに。(「逃げるんですか」に思う)
G7の会見を終えて立ち去る総理に、「逃げるんですか」と言った記者がいました。
もちろん、逃げたのではないのは明らかでした。これはただの無礼な言葉です。
だから、首相はスルーしても良かったのに、すぐに戻ってきて質問に答えました。
無礼な人にも向き合って答える首相を、このときばかりはかっこいいと思いました。
タイトル作は、憑きものにつかれた少女の心の中を、装置を使って探検する物語です。
1977年に刊行された短編集です。全4作が収録されています。
「かつて、それは『部屋』だった。(中略)いま、それは、直径二十五センチ弱の、
表面にわずかな凹凸のあるボールになっている。」(P75)
間口5m、高さ4m、奥行き7mの鉄筋の部屋が、今では小さな球体となっている!
しかも重量は50トン・・・冒頭から驚愕しました。いったいどういうことか?
サイコ・エクスプローラー(心理探検家)の伊藤は、山奥の病院に呼ばれました。
そこでは、18歳の少女マリアが、4本の鉄の帯で寝台に縛り付けられていました。
マリアの口には3センチほどの牙があり、頭には3本の角が生えていました。
そして彼女は、縛られたまま寝台を持ち上げ、岩や石を降らせるというのです。
マリアは八ヶ月前、四歳年上の恋人をかみ殺し、その心臓を食べたのだそうです。
伊藤は彼女を救うべく、装置を使って彼女の心の中に入り込んで・・・
マリアには何が憑いているのか? なぜ何もない空間から岩が降ってくるのか?
院長は何を探ろうとしているのか? 病院を運営する財団の真の目的は何か?
「彼女は、憑きものを・・・つまり超常現象を、精密な科学観測の場へもたらしてく
れる媒体だ。」(P132)
伊藤は、マリアの心の奥に何を見たのか?
そして、恐るべき結末!・・・
私はNHK「100分de名著」の小松左京スペシャルで、この小説を知りました。
短編ながら、壮大なスケールです。そして、描写がすごい。いろんな意味で。
「一見野菊に似た花の一つ一つは、膿みただれた痔瘻の肛門そっくりの色と形をして
おり、花びらには血と膿がしたたり、花芯のまわりには淫らな毛がはえ、乾いた糞便
さえこびりついている。時おりいくつかの花の中心がひらいて、中から血まじりの太
い糞便がのろりと吐き出されてきた。(中略)はい出して来た黄褐色の糞便は、巨大
なみみずのように、自分であたりをのろのろと這いまわり・・・」(P145)
この物語の真の魅力は、小松一流のユニークで壮大な宇宙観にあると思います。
しかしどうしても、うんこのミミズが這いまわる光景ばかりが、印象に残りました。
さて、冒頭の「岬にて」は、人が死ぬために集うという、不思議な島の物語です。
しかし難解で、私には結末がどういうことなのか、まったく分かりませんでした。
「すぺるむ・さぴえんすの冒険」は、ある男に不思議なメッセージが届く物語です。
そのメッセージは次のような内容で、眠っている間に、何度も届けられてきました。
「お前を人類の中からただ一人えらんで、宇宙の一切の秘密と真理を教えよう。そ
の代償に、こちらは二百二十億の全人類の生命をうばう・・・」(P157)
どうやらこのメッセージは、超空間のゲートを通って、送られてきているようです。
何者からのメッセージか? なぜ彼が選ばれたのか? 彼はどのように対応するか?
「あなろぐ・らう゛」もまた、作者一流の宇宙観が味わえる作品です。
しかし、全体を通して小難しいことばかり述べていて、物語の魅力はいま一つです。
以上、全4編ありますが、完成度は「ゴルディアスの結び目」が突出していました。
「ゴルディアスの結び目」を読むためだけにも、この本を買う価値はあります。
さいごに。(「逃げるんですか」に思う)
G7の会見を終えて立ち去る総理に、「逃げるんですか」と言った記者がいました。
もちろん、逃げたのではないのは明らかでした。これはただの無礼な言葉です。
だから、首相はスルーしても良かったのに、すぐに戻ってきて質問に答えました。
無礼な人にも向き合って答える首相を、このときばかりはかっこいいと思いました。
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