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美の旅人 フランス偏2 [哲学・歴史・芸術]

 「美の旅人 フランス偏Ⅱ~Ⅲ」 伊集院静 (小学館文庫)


 作家の伊集院静が「一枚の素晴らしき絵画」を求めて、フランスを巡ります。
 今回は、全3巻のうち第2巻の後半から第3巻まで(印象派以降)を紹介します。


美の旅人 フランス編 (2) (小学館文庫)

美の旅人 フランス編 (2) (小学館文庫)

  • 作者: 静, 伊集院
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/11/05
  • メディア: 文庫



美の旅人 フランス編 (3) (小学館文庫)

美の旅人 フランス編 (3) (小学館文庫)

  • 作者: 静, 伊集院
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/12/07
  • メディア: 文庫



 1874年、サロン展に対抗して第1回印象派展が開かれた時、近代絵画が始まりました。
 印象派展では、モネの「印象・日の出」など、伝統を無視した絵画が展示されました。

 印象派の若い画家たちは、見たまま感じたままに、自由に絵を描こうとしました。
 これによって、絵画の自由解放が起こり、絵画は大衆のものとなっていったのです。

 印象派の巨匠といったら、クロード・モネ、オーギュスト・ルノワールの2人です。
 後期印象派には、フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・セザンヌらがいます。

 さらに、エドゥアール・マネ、エドガー・ドガ、トゥールーズ・ロートレック、
 パブロ・ピカソ、アンリ・マティス、マルク・シャガール等、多くの巨匠が・・・

 圧巻は、ゴッホの「星月夜」です。1889年にサン・レミの精神病院で描かれました。
 死の前年です。翌年、ゴッホは発作に襲われ、自身を銃で撃って死んでいきました。

Van_Gogh_-_Starry_Night_-_Google_Art_Project.jpg

 ゴッホの発作の原因は、てんかんか統合失調症だという説が、有力なのだそうです。
 「星月夜」に見られるゴッホの感性も、てんかんの症状によるものなのではないか?

 「ゴッホの眼には大好きな糸杉は天に昇ろうとし、星と風は天空を自由に駆け回って
 いるように映っていたのではなかろうか。」(P20)というのが、伊集院の感想です。

 しかし私は、もっと不安をかきたてる何か恐ろしいものを、この絵から感じます。
 星や月が空間を破って突如出現し、奈落の底に吸い込もうとしているような・・・

 そういう不安を、ゴッホは「星月夜」に描き込んだのではないでしょうか。
 それにしても、普通の人の感性ではないですよ。天才なのか、病人なのか?

 ところで、ゴッホと深く関わったゴーギャンは、少ししか触れられていません。
 その点がとても不満でした。私にとってゴーギャンは、とても興味深い画家なので。

 さて、ほかにも、ピカソやシャガールなど、興味深い箇所もありました。
 しかし、もっとも印象に残っているのは、フレデリック・バジールです。

 バジールは、医学部に入学しながら、自分の興味に従って絵画を学び始めました。
 まだ貧しかったモネやルノワールを、時にアトリエに住まわせるなど援助しました。

 そして、1870年に普仏戦争が勃発すると、自ら志願して戦争に行ってしまうのです。
 すでに、モネや他の画家たちは、いちはやくロンドンに逃れていったにも関わらず。

 そこに彼の人間性が表れています。困っている人を放っとけない性格だったのでは?
 結局、まったく無意味な戦闘によって、30歳で亡くなってしまいました。

 「私は自分が殺されることはないと確信しています。なぜなら私には人生の中で他
 にしなければならないことがたくさんありますから」(P37)

 バジールは戦いの前にそう言ったといいます。あまりにも惜しい死でした。
 彼の作品「村からの眺め」を見ると、本当は平和を愛した人なのだと分かります。 

村からの眺め.jpg

 この本を読み終わって、改めて近代絵画を、体系的に学び直したいと思いました。
 幸い家に、高階秀爾の「近代絵画史(上)(下)」(中公新書)がありました。

 なんと大学時代に大学の生協で購入した本です。35年ほど積ん読状態だったのです。
 値段は「544円+税」で560円。消費税3%の時代でした。懐かしい。

 ところが、最近(数年前)カラー版が出たと言うではありませんか。
 それなら、ぜひカラー版で読みたいです。買い直さなければ!


カラー版 - 近代絵画史(上) 増補版 - ロマン主義、印象派、ゴッホ (中公新書)

カラー版 - 近代絵画史(上) 増補版 - ロマン主義、印象派、ゴッホ (中公新書)

  • 作者: 高階 秀爾
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: 新書



カラー版 - 近代絵画史(下)増補版 - 世紀末絵画、ピカソ、シュルレアリスム (中公新書)

カラー版 - 近代絵画史(下)増補版 - 世紀末絵画、ピカソ、シュルレアリスム (中公新書)

  • 作者: 高階 秀爾
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: 新書



 高階秀爾の「名画を見る眼」(岩波新書)は、大学時代に絵画の見方を学んだ本です。
 この本は、今年2023年にカラー版が出ていました。こちらも、買い直さなければ!


カラー版 名画を見る眼Ⅰ 油彩画誕生からマネまで (岩波新書 新赤版 1976)

カラー版 名画を見る眼Ⅰ 油彩画誕生からマネまで (岩波新書 新赤版 1976)

  • 作者: 高階 秀爾
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2023/05/20
  • メディア: 新書



名画を見る眼Ⅱ 印象派からピカソまで (岩波新書 新赤版 1977)

名画を見る眼Ⅱ 印象派からピカソまで (岩波新書 新赤版 1977)

  • 作者: 高階 秀爾
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2023/06/21
  • メディア: 新書



 さいごに。(増税反対だが、しかし)

 私は自民党支持です。かつて民主党に投票して騙され、さんざん後悔したので。
 しかし、増税路線が決定的になった今、久々に野党にがんばってほしいと思う。

 とはいえ、増税しないと言って政権を取り、結局増税するというのは最悪です。
 信用できる野党がいるのか? やむなく自民党を支持し続けるしかないのか?

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