美の旅人 フランス偏2 [哲学・歴史・芸術]
「美の旅人 フランス偏Ⅱ~Ⅲ」 伊集院静 (小学館文庫)
作家の伊集院静が「一枚の素晴らしき絵画」を求めて、フランスを巡ります。
今回は、全3巻のうち第2巻の後半から第3巻まで(印象派以降)を紹介します。
1874年、サロン展に対抗して第1回印象派展が開かれた時、近代絵画が始まりました。
印象派展では、モネの「印象・日の出」など、伝統を無視した絵画が展示されました。
印象派の若い画家たちは、見たまま感じたままに、自由に絵を描こうとしました。
これによって、絵画の自由解放が起こり、絵画は大衆のものとなっていったのです。
印象派の巨匠といったら、クロード・モネ、オーギュスト・ルノワールの2人です。
後期印象派には、フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・セザンヌらがいます。
さらに、エドゥアール・マネ、エドガー・ドガ、トゥールーズ・ロートレック、
パブロ・ピカソ、アンリ・マティス、マルク・シャガール等、多くの巨匠が・・・
圧巻は、ゴッホの「星月夜」です。1889年にサン・レミの精神病院で描かれました。
死の前年です。翌年、ゴッホは発作に襲われ、自身を銃で撃って死んでいきました。
ゴッホの発作の原因は、てんかんか統合失調症だという説が、有力なのだそうです。
「星月夜」に見られるゴッホの感性も、てんかんの症状によるものなのではないか?
「ゴッホの眼には大好きな糸杉は天に昇ろうとし、星と風は天空を自由に駆け回って
いるように映っていたのではなかろうか。」(P20)というのが、伊集院の感想です。
しかし私は、もっと不安をかきたてる何か恐ろしいものを、この絵から感じます。
星や月が空間を破って突如出現し、奈落の底に吸い込もうとしているような・・・
そういう不安を、ゴッホは「星月夜」に描き込んだのではないでしょうか。
それにしても、普通の人の感性ではないですよ。天才なのか、病人なのか?
ところで、ゴッホと深く関わったゴーギャンは、少ししか触れられていません。
その点がとても不満でした。私にとってゴーギャンは、とても興味深い画家なので。
さて、ほかにも、ピカソやシャガールなど、興味深い箇所もありました。
しかし、もっとも印象に残っているのは、フレデリック・バジールです。
バジールは、医学部に入学しながら、自分の興味に従って絵画を学び始めました。
まだ貧しかったモネやルノワールを、時にアトリエに住まわせるなど援助しました。
そして、1870年に普仏戦争が勃発すると、自ら志願して戦争に行ってしまうのです。
すでに、モネや他の画家たちは、いちはやくロンドンに逃れていったにも関わらず。
そこに彼の人間性が表れています。困っている人を放っとけない性格だったのでは?
結局、まったく無意味な戦闘によって、30歳で亡くなってしまいました。
「私は自分が殺されることはないと確信しています。なぜなら私には人生の中で他
にしなければならないことがたくさんありますから」(P37)
バジールは戦いの前にそう言ったといいます。あまりにも惜しい死でした。
彼の作品「村からの眺め」を見ると、本当は平和を愛した人なのだと分かります。
この本を読み終わって、改めて近代絵画を、体系的に学び直したいと思いました。
幸い家に、高階秀爾の「近代絵画史(上)(下)」(中公新書)がありました。
なんと大学時代に大学の生協で購入した本です。35年ほど積ん読状態だったのです。
値段は「544円+税」で560円。消費税3%の時代でした。懐かしい。
ところが、最近(数年前)カラー版が出たと言うではありませんか。
それなら、ぜひカラー版で読みたいです。買い直さなければ!
高階秀爾の「名画を見る眼」(岩波新書)は、大学時代に絵画の見方を学んだ本です。
この本は、今年2023年にカラー版が出ていました。こちらも、買い直さなければ!
さいごに。(増税反対だが、しかし)
私は自民党支持です。かつて民主党に投票して騙され、さんざん後悔したので。
しかし、増税路線が決定的になった今、久々に野党にがんばってほしいと思う。
とはいえ、増税しないと言って政権を取り、結局増税するというのは最悪です。
信用できる野党がいるのか? やむなく自民党を支持し続けるしかないのか?
作家の伊集院静が「一枚の素晴らしき絵画」を求めて、フランスを巡ります。
今回は、全3巻のうち第2巻の後半から第3巻まで(印象派以降)を紹介します。
1874年、サロン展に対抗して第1回印象派展が開かれた時、近代絵画が始まりました。
印象派展では、モネの「印象・日の出」など、伝統を無視した絵画が展示されました。
印象派の若い画家たちは、見たまま感じたままに、自由に絵を描こうとしました。
これによって、絵画の自由解放が起こり、絵画は大衆のものとなっていったのです。
印象派の巨匠といったら、クロード・モネ、オーギュスト・ルノワールの2人です。
後期印象派には、フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・セザンヌらがいます。
さらに、エドゥアール・マネ、エドガー・ドガ、トゥールーズ・ロートレック、
パブロ・ピカソ、アンリ・マティス、マルク・シャガール等、多くの巨匠が・・・
圧巻は、ゴッホの「星月夜」です。1889年にサン・レミの精神病院で描かれました。
死の前年です。翌年、ゴッホは発作に襲われ、自身を銃で撃って死んでいきました。
ゴッホの発作の原因は、てんかんか統合失調症だという説が、有力なのだそうです。
「星月夜」に見られるゴッホの感性も、てんかんの症状によるものなのではないか?
「ゴッホの眼には大好きな糸杉は天に昇ろうとし、星と風は天空を自由に駆け回って
いるように映っていたのではなかろうか。」(P20)というのが、伊集院の感想です。
しかし私は、もっと不安をかきたてる何か恐ろしいものを、この絵から感じます。
星や月が空間を破って突如出現し、奈落の底に吸い込もうとしているような・・・
そういう不安を、ゴッホは「星月夜」に描き込んだのではないでしょうか。
それにしても、普通の人の感性ではないですよ。天才なのか、病人なのか?
ところで、ゴッホと深く関わったゴーギャンは、少ししか触れられていません。
その点がとても不満でした。私にとってゴーギャンは、とても興味深い画家なので。
さて、ほかにも、ピカソやシャガールなど、興味深い箇所もありました。
しかし、もっとも印象に残っているのは、フレデリック・バジールです。
バジールは、医学部に入学しながら、自分の興味に従って絵画を学び始めました。
まだ貧しかったモネやルノワールを、時にアトリエに住まわせるなど援助しました。
そして、1870年に普仏戦争が勃発すると、自ら志願して戦争に行ってしまうのです。
すでに、モネや他の画家たちは、いちはやくロンドンに逃れていったにも関わらず。
そこに彼の人間性が表れています。困っている人を放っとけない性格だったのでは?
結局、まったく無意味な戦闘によって、30歳で亡くなってしまいました。
「私は自分が殺されることはないと確信しています。なぜなら私には人生の中で他
にしなければならないことがたくさんありますから」(P37)
バジールは戦いの前にそう言ったといいます。あまりにも惜しい死でした。
彼の作品「村からの眺め」を見ると、本当は平和を愛した人なのだと分かります。
この本を読み終わって、改めて近代絵画を、体系的に学び直したいと思いました。
幸い家に、高階秀爾の「近代絵画史(上)(下)」(中公新書)がありました。
なんと大学時代に大学の生協で購入した本です。35年ほど積ん読状態だったのです。
値段は「544円+税」で560円。消費税3%の時代でした。懐かしい。
ところが、最近(数年前)カラー版が出たと言うではありませんか。
それなら、ぜひカラー版で読みたいです。買い直さなければ!
カラー版 - 近代絵画史(上) 増補版 - ロマン主義、印象派、ゴッホ (中公新書)
- 作者: 高階 秀爾
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/09/20
- メディア: 新書
カラー版 - 近代絵画史(下)増補版 - 世紀末絵画、ピカソ、シュルレアリスム (中公新書)
- 作者: 高階 秀爾
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/09/20
- メディア: 新書
高階秀爾の「名画を見る眼」(岩波新書)は、大学時代に絵画の見方を学んだ本です。
この本は、今年2023年にカラー版が出ていました。こちらも、買い直さなければ!
カラー版 名画を見る眼Ⅰ 油彩画誕生からマネまで (岩波新書 新赤版 1976)
- 作者: 高階 秀爾
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2023/05/20
- メディア: 新書
名画を見る眼Ⅱ 印象派からピカソまで (岩波新書 新赤版 1977)
- 作者: 高階 秀爾
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2023/06/21
- メディア: 新書
さいごに。(増税反対だが、しかし)
私は自民党支持です。かつて民主党に投票して騙され、さんざん後悔したので。
しかし、増税路線が決定的になった今、久々に野党にがんばってほしいと思う。
とはいえ、増税しないと言って政権を取り、結局増税するというのは最悪です。
信用できる野党がいるのか? やむなく自民党を支持し続けるしかないのか?
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