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モデラート・カンタービレ [20世紀フランス文学]

 「モデラート・カンタービレ」マルグリット・デュラス作 田中倫郎訳(河出文庫)


 情痴事件を見たことがきっかけで、酒場に通うようになった裕福な夫人の物語です。
 1958年刊行の中編小説。デュラスの小説は、この作品を境に変化したと言われます。


モデラート・カンタービレ (河出文庫 509A)

モデラート・カンタービレ (河出文庫 509A)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1985/05/01
  • メディア: 文庫



 裕福な夫人のアンヌ・デバレードは、息子をピアノのレッスンに通わせています。
 しかし、息子はまったくやる気がなく、ピアノの教師は手を焼いています。

 「モデラート・カンタービレって、どういう意味?」「知らない」
 それは「普通の速さで歌うように」という意味ですが、息子は覚えようとしません。

 そのとき、女の叫び声がして、ざわめきが起こったので、アンヌは見に行きました。
 その酒場では、ひとりの男が、死んだ女を抱擁したり、口づけしたりしていました。

 翌日の夜、アンヌはその酒場に行き、居合わせた男と例の事件について話しました。
 この日からアンヌは酒場に通うようになり、その男と事件について語り合いました。

 男と女(夫も子供もいた)はどんな関係だったのか? なぜ男は女を殺したのか?
 女は撃ち殺されることを望んでいたのか? そして、男もそれを察していたのか?

 毎夜、酒場でさまざまな想像をするうちに、アンヌと男は親密になっていきます。
 また、不思議とふたりの関係は、例の事件と二重写しのようになっていき・・・

 わずか140ページしかありませんが、鮮烈な印象を残す小説です。
 アンヌと男も同じ事件を繰り返すのでは、という予感めいた空気が漂っています。

 「あなたは死んだ方がよかったんだ」
 「もう死んでるわ」

 ふたりは殺人事件をネタに、一時的に死の世界に遊んでみただけなのか?
 それとも、ふたりは本気で死の世界に憧れ、何ごとかをなすつもりだったのか?

 ミステリーっぽい雰囲気で、ただ会話している場面ばかりなのにスリリングです。
 先が気になるので、あっというまに読めてしまいます。活字も大きいし。

 ただし、どうしても分からない点がひとつありました。タイトルの意味です。
 「普通の速さで歌うように」という意味が、物語とどのように関わっているのか?

 さいごに。(世界陸上、ありがとう!)

 男子100mでサニブラウンが6位入賞、男子3000mSCで三浦が6位入賞。
 男子400mでは佐藤拳の日本記録、そして、女子やり投げ北口榛花の金メダル!!!

 今回の世界陸上は、本当に見どころが多かったです。
 それなのに私的には、少々物足りなさがありました。織田裕二が出ていないので。

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