フランス革命史 [19世紀フランス文学]
「フランス革命史」 ミシュレ著 桑原武夫ほか訳 (中公文庫)
英雄中心ではなく「人民中心」の、当時としては画期的なフランス革命史です。
国立古文書保管所の歴史部主任であり、歴史家でもあるミシュレの代表作です。
中公文庫から二分冊で出ています。全訳ではなく、所々要約されています。
中公公論の「世界の名著」シリーズの文庫版で、冒頭に詳細な解説があります。
ミシュレは実証的に革命史を描きましたが、文章には時々感情が混じります。
たとえばバスチーユ襲撃を扱った部分は、歴史書というより小説に近いです。
「朝の光とともにパリの上に一つの考えが輝き、そして、すべての人が同じ光 をみ
た。人々の心のうちに一つの光がさし、ひとりひとりの胸に一つの声が聞こえた。
『行け、そしてバスチーユを攻略するのだ!』」(P133)
人々の心に光がさしたり、声が聞こえたり・・・
でも、こういう文学的な表現だからこそ、読んでいて面白いのです。
そして、もうひとつの特徴が、主役がなんでもない「人々」であることです。
名も無き人々のエピソードが集積して、ひとつの大きな物語となっています。
バスチーユを攻撃する人々。ヴェルサイユへ行進する女たち。
扇動されて、虐殺を行う人々。政治に飽きて、無関心になる人々。
善人もいれば、悪人もいます。英雄もいれば、俗物もいます。
そういう雑多な人々すべてをひっくるめた「人民」が、革命を推進します。
「第一ページから最終ページにいたるまで、この歴史にはひとりの英雄
しかいない。すなわち、人民である。」(P75)
それだからといって、英雄をないがしろにしているわけではありません。
たとえば、ミラボーやダントンに対しては、思い入れたっぷりに描いています。
また、何人かの小さな英雄たちも、印象的に描かれています。
危険を顧みず王を弁護し、断頭台に消えた老マルセルブ(下・P70)は素晴らしい。
ところで、この本は所々に飛躍があって、少し分かりにくかったです。
それもそのはず。原作の5分の1しか訳されてないのだそうです。
さて、ミシュレには、ライフワークである長大な「フランス史」があります。
藤原書店から全六巻で抄訳が出ています。単行本で1冊5000円ほど。文庫化を期待!
さいごに。(安心してください)
最近、娘(小3)がはまっているのが、「とにかく明るい安村」です。
お風呂に入る前、パンツ一丁で、「安心してください、はいてます」をやる。
「品のない芸はやめなさい」と注意すると、余計に面白がってやるのです。
困ったことです。でも、こんなことするのも、せいぜいあと1年でしょうか。
英雄中心ではなく「人民中心」の、当時としては画期的なフランス革命史です。
国立古文書保管所の歴史部主任であり、歴史家でもあるミシュレの代表作です。
中公文庫から二分冊で出ています。全訳ではなく、所々要約されています。
中公公論の「世界の名著」シリーズの文庫版で、冒頭に詳細な解説があります。
ミシュレは実証的に革命史を描きましたが、文章には時々感情が混じります。
たとえばバスチーユ襲撃を扱った部分は、歴史書というより小説に近いです。
「朝の光とともにパリの上に一つの考えが輝き、そして、すべての人が同じ光 をみ
た。人々の心のうちに一つの光がさし、ひとりひとりの胸に一つの声が聞こえた。
『行け、そしてバスチーユを攻略するのだ!』」(P133)
人々の心に光がさしたり、声が聞こえたり・・・
でも、こういう文学的な表現だからこそ、読んでいて面白いのです。
そして、もうひとつの特徴が、主役がなんでもない「人々」であることです。
名も無き人々のエピソードが集積して、ひとつの大きな物語となっています。
バスチーユを攻撃する人々。ヴェルサイユへ行進する女たち。
扇動されて、虐殺を行う人々。政治に飽きて、無関心になる人々。
善人もいれば、悪人もいます。英雄もいれば、俗物もいます。
そういう雑多な人々すべてをひっくるめた「人民」が、革命を推進します。
「第一ページから最終ページにいたるまで、この歴史にはひとりの英雄
しかいない。すなわち、人民である。」(P75)
それだからといって、英雄をないがしろにしているわけではありません。
たとえば、ミラボーやダントンに対しては、思い入れたっぷりに描いています。
また、何人かの小さな英雄たちも、印象的に描かれています。
危険を顧みず王を弁護し、断頭台に消えた老マルセルブ(下・P70)は素晴らしい。
ところで、この本は所々に飛躍があって、少し分かりにくかったです。
それもそのはず。原作の5分の1しか訳されてないのだそうです。
さて、ミシュレには、ライフワークである長大な「フランス史」があります。
藤原書店から全六巻で抄訳が出ています。単行本で1冊5000円ほど。文庫化を期待!
さいごに。(安心してください)
最近、娘(小3)がはまっているのが、「とにかく明るい安村」です。
お風呂に入る前、パンツ一丁で、「安心してください、はいてます」をやる。
「品のない芸はやめなさい」と注意すると、余計に面白がってやるのです。
困ったことです。でも、こんなことするのも、せいぜいあと1年でしょうか。
従妹ベット2 [19世紀フランス文学]
「従妹ベット」 バルザック作 (新潮文庫)
老嬢ベットが復讐のためマルネフ夫人と組んで、ユロ一族を破滅に導く物語です。
私は新潮文庫版で読みました。初版が1968年ですが、訳は分かりやすかったです。
下巻に入ってベットとマルネフ夫人は絶好調です。
二人は最強タッグですね。
主人公のベットは、相変わらず黒幕的な存在で、老獪に立ち回ります。
ユロ一家の味方を演じながら、じわじわと破滅に追い込んでいきます。
表立って悪をなすのは、魔性の女マルネフ夫人です。
彼女の堕落ぶりときたら!
自分の欲望を満たすために、男どもを誘惑し破滅させる毒婦、マルネフ夫人。
特に二十二章で、スタインボックを誘惑するところが印象的でした。
下巻は、マルネフ夫人を中心に展開します。
その悪徳ぶりといい、壮絶な最後といい、「マルネフ夫人の物語」です。
我々男たちは、アドリーヌのような貞淑で敬虔な女性を理想としていながらも、
悲しいことに、ついついマルネフ夫人のような妖婦に惹かれてしまうものです。
だから、ユロの気持ちも分かる気がします。
とはいえ、この結末は! いやはや、やりきれないですね。
ところで、ユロ男爵は、「絶対の探求」のバルタザールによく似ています。
どちらも最初はまともな人間で、どちらも奥さんは善良な人でした。
しかしユロは女に狂い、バルタザールは化学に狂い、一家を破滅させました。
二人のきちがいじみた熱情は、バカを通り越して、崇高でさえあります。
さて、これで文庫で読めるバルザック作品は、ほとんど読んでしまいました。
文庫化されていない他の作品を、読みたいです。
さいごに。(バンニーキルク)
「バンニーキルク」と聞いてピンとくる人は、相当の陸上おたくでしょう。
南アフリカの選手で、ケニアのベットとともに、アフリカ陸上界の英雄です。
8月の世界陸上で、男子400mを43秒48という驚異的なタイムで制しました。
やけくそのように最初からぶっとばしていく走りは、とても感動的でした。
老嬢ベットが復讐のためマルネフ夫人と組んで、ユロ一族を破滅に導く物語です。
私は新潮文庫版で読みました。初版が1968年ですが、訳は分かりやすかったです。
下巻に入ってベットとマルネフ夫人は絶好調です。
二人は最強タッグですね。
主人公のベットは、相変わらず黒幕的な存在で、老獪に立ち回ります。
ユロ一家の味方を演じながら、じわじわと破滅に追い込んでいきます。
表立って悪をなすのは、魔性の女マルネフ夫人です。
彼女の堕落ぶりときたら!
自分の欲望を満たすために、男どもを誘惑し破滅させる毒婦、マルネフ夫人。
特に二十二章で、スタインボックを誘惑するところが印象的でした。
下巻は、マルネフ夫人を中心に展開します。
その悪徳ぶりといい、壮絶な最後といい、「マルネフ夫人の物語」です。
我々男たちは、アドリーヌのような貞淑で敬虔な女性を理想としていながらも、
悲しいことに、ついついマルネフ夫人のような妖婦に惹かれてしまうものです。
だから、ユロの気持ちも分かる気がします。
とはいえ、この結末は! いやはや、やりきれないですね。
ところで、ユロ男爵は、「絶対の探求」のバルタザールによく似ています。
どちらも最初はまともな人間で、どちらも奥さんは善良な人でした。
しかしユロは女に狂い、バルタザールは化学に狂い、一家を破滅させました。
二人のきちがいじみた熱情は、バカを通り越して、崇高でさえあります。
さて、これで文庫で読めるバルザック作品は、ほとんど読んでしまいました。
文庫化されていない他の作品を、読みたいです。
さいごに。(バンニーキルク)
「バンニーキルク」と聞いてピンとくる人は、相当の陸上おたくでしょう。
南アフリカの選手で、ケニアのベットとともに、アフリカ陸上界の英雄です。
8月の世界陸上で、男子400mを43秒48という驚異的なタイムで制しました。
やけくそのように最初からぶっとばしていく走りは、とても感動的でした。
従妹ベット1 [19世紀フランス文学]
「従妹ベット」 バルザック作 平岡篤頼訳 (新潮文庫)
老嬢ベットが復讐のためマルネフ夫人と組んで、ユロ一族を破滅に導く物語です。
バルザック最晩年に書かれた傑作で、「従兄ポンス」の姉妹編です。
新潮文庫と岩波文庫から出ていましたが、現在はどちらも品切れです。残念。
私は新潮文庫版で読みました。初版が1968年ですが、訳は分かりやすかったです。
舞台は1830年代から1840年代のパリです。
陸軍省局長のユロ・デルヴィ男爵邸を中心に、物語が繰り広げられます。
ユロ男爵は60歳になりながらも、女に血道をあげて一家を窮地に陥れています。
美しくて善良な夫人アドリーヌは、ダメ男ユロとの生活を耐え忍んでいます。
男爵夫人アドリーヌの従妹が、中年の独身女「従妹ベット」です。
ベットは、若い亡命貴族のスタインボックをかくまい、密かに愛しています。
しかしベットは、アドリーヌの娘にスタインボックを取られて復讐を誓い・・・
そして、同じアパルトマンに住む魔性の女マルネフ夫人と協定を結んで・・・
「この公理は心に留めておくといい。パリでは、やましい人間のなれ合いこそ、
神聖同盟のように弾力無比なのだという公理を。利害関係だけで結ばれた人間
はいつかかならず仲間割れするが、堕落した人間は同士はいつまでたっても仲
がいい。」(P252)
主人公は、老嬢ベット。彼女が密かに企てる復讐が、この小説のテーマです。
しかし上巻を読んだ段階では、ベットはどちらかというと影武者的な存在です。
なんといっても、強烈な個性を発揮してすばらしいのは、ユロ男爵です。
本当にどうしようもない好色ジジイです。(ユロ男爵、バンザイ!)
ユロは、美しい女を見つけたら、いてもたってもいられなくなってしまいます。
家では食べる物にも困っているのに、愛人のためにお金をじゃんじゃん使います。
「お前を思う気持ちが、どんなにひどいことまでわしにさせるか、わかったかね?
・・・家族にたいする罪だって、平気で犯させるんだ・・・」(P299)(アホか)
本当にアホなことに、メカケに逃げられると悔しがって、妻に愚痴ってしまう。
アドリーヌはアドリーヌで、そんなユロを慰めてしまう。なんというお人よし!
さて、私は上巻を読み終わったばかりです。
下巻でユロは、ますますひどいことになりそうで、楽しみです。
さいごに。(ケニアのベット)
「ケニアのベット」といって、ピンときた人は、相当の陸上オタクです。
今年の世界陸上の400mハードルで、ケニア勢初の金メダルを獲得した選手です。
「ケニアといえば長距離」というイメージを、一新した歴史的なレースでした。
手に汗を握りながら、私は何度も何度も録画を見てしまいました。
老嬢ベットが復讐のためマルネフ夫人と組んで、ユロ一族を破滅に導く物語です。
バルザック最晩年に書かれた傑作で、「従兄ポンス」の姉妹編です。
新潮文庫と岩波文庫から出ていましたが、現在はどちらも品切れです。残念。
私は新潮文庫版で読みました。初版が1968年ですが、訳は分かりやすかったです。
舞台は1830年代から1840年代のパリです。
陸軍省局長のユロ・デルヴィ男爵邸を中心に、物語が繰り広げられます。
ユロ男爵は60歳になりながらも、女に血道をあげて一家を窮地に陥れています。
美しくて善良な夫人アドリーヌは、ダメ男ユロとの生活を耐え忍んでいます。
男爵夫人アドリーヌの従妹が、中年の独身女「従妹ベット」です。
ベットは、若い亡命貴族のスタインボックをかくまい、密かに愛しています。
しかしベットは、アドリーヌの娘にスタインボックを取られて復讐を誓い・・・
そして、同じアパルトマンに住む魔性の女マルネフ夫人と協定を結んで・・・
「この公理は心に留めておくといい。パリでは、やましい人間のなれ合いこそ、
神聖同盟のように弾力無比なのだという公理を。利害関係だけで結ばれた人間
はいつかかならず仲間割れするが、堕落した人間は同士はいつまでたっても仲
がいい。」(P252)
主人公は、老嬢ベット。彼女が密かに企てる復讐が、この小説のテーマです。
しかし上巻を読んだ段階では、ベットはどちらかというと影武者的な存在です。
なんといっても、強烈な個性を発揮してすばらしいのは、ユロ男爵です。
本当にどうしようもない好色ジジイです。(ユロ男爵、バンザイ!)
ユロは、美しい女を見つけたら、いてもたってもいられなくなってしまいます。
家では食べる物にも困っているのに、愛人のためにお金をじゃんじゃん使います。
「お前を思う気持ちが、どんなにひどいことまでわしにさせるか、わかったかね?
・・・家族にたいする罪だって、平気で犯させるんだ・・・」(P299)(アホか)
本当にアホなことに、メカケに逃げられると悔しがって、妻に愚痴ってしまう。
アドリーヌはアドリーヌで、そんなユロを慰めてしまう。なんというお人よし!
さて、私は上巻を読み終わったばかりです。
下巻でユロは、ますますひどいことになりそうで、楽しみです。
さいごに。(ケニアのベット)
「ケニアのベット」といって、ピンときた人は、相当の陸上オタクです。
今年の世界陸上の400mハードルで、ケニア勢初の金メダルを獲得した選手です。
「ケニアといえば長距離」というイメージを、一新した歴史的なレースでした。
手に汗を握りながら、私は何度も何度も録画を見てしまいました。
魔の沼 [19世紀フランス文学]
「魔の沼」 ジョルジュ・サンド作 杉捷夫訳 (岩波文庫)
迷い込んだ森の中で夜を明かすうちに、運命を変えた若い農夫と娘の愛の物語です。
ジョルジュ・サンドの田園小説の傑作として名高い小説です。
岩波文庫で出ていましたが現在は品切れ。うちには1990年の復刊版がありました。
初訳は1948年。旧字体で言葉遣いが古いですが、その割には分かりやすかったです。
村一番の働き者で正直なジェルマンは、2年前に最愛の妻を亡くしていました。
彼は今28歳。小さな子供が3人いるため、周りから再婚を勧められています。
死んだ妻を忘れられず、気乗りがしないまま、彼は相手の家に向かいました。
近所の16歳の娘マリを、同じ方角の村に送るため、一緒に出発しました。
ところが、森の道で魔法にかけられたように迷い・・・
一夜を明かすうちに、ジェルマンが気づいた自分の本心は・・・
すがすがしい印象が残る作品です。とても健全な恋愛小説だと思いました。
特に、「世紀児の告白」でどろどろした恋愛を読んだあとなので。
ジェルマンもマリも、誠実でとても好感が持てる人物です。
物語の展開も、ほぼ期待どおりに進んで裏切ることが無く、好感が持てました。
ただし、「魔の沼」というタイトルは、少しホラーっぽいと思います。
森や沼の場面では、いつ魔物が出てくるのかと、変な期待をしてしまいました。
さて、ジョルジュ・サンドは日本では、田園小説ばかり読まれているようです。
しかしサンドらしい作品は、女性解放をテーマにした「アンディアナ」など。
岩波文庫の「アンディアナ」の初版は1937年。
古本ならアマゾンで1円から手に入りますが、ぜひ新訳を出してほしいです。
なお、藤原書店から「ジョルジュ・サンド・セレクション」が出ています。
「モープラ」「コンシュエロ」も入っています。ぜひ文庫化してほしい!
さいごに。(最大のイベント)
24日(月)に夏休みを取り、土日月の2泊3日で山梨にキャンプに行きます。
明日の朝出発です。これが毎年、我が家の最大のイベントです。
キャンプといっても、キャンプ場内のトレーラーハウスに泊まります。
うちは車が軽しかないため、テントや寝袋などが積めないので。
迷い込んだ森の中で夜を明かすうちに、運命を変えた若い農夫と娘の愛の物語です。
ジョルジュ・サンドの田園小説の傑作として名高い小説です。
岩波文庫で出ていましたが現在は品切れ。うちには1990年の復刊版がありました。
初訳は1948年。旧字体で言葉遣いが古いですが、その割には分かりやすかったです。
村一番の働き者で正直なジェルマンは、2年前に最愛の妻を亡くしていました。
彼は今28歳。小さな子供が3人いるため、周りから再婚を勧められています。
死んだ妻を忘れられず、気乗りがしないまま、彼は相手の家に向かいました。
近所の16歳の娘マリを、同じ方角の村に送るため、一緒に出発しました。
ところが、森の道で魔法にかけられたように迷い・・・
一夜を明かすうちに、ジェルマンが気づいた自分の本心は・・・
すがすがしい印象が残る作品です。とても健全な恋愛小説だと思いました。
特に、「世紀児の告白」でどろどろした恋愛を読んだあとなので。
ジェルマンもマリも、誠実でとても好感が持てる人物です。
物語の展開も、ほぼ期待どおりに進んで裏切ることが無く、好感が持てました。
ただし、「魔の沼」というタイトルは、少しホラーっぽいと思います。
森や沼の場面では、いつ魔物が出てくるのかと、変な期待をしてしまいました。
さて、ジョルジュ・サンドは日本では、田園小説ばかり読まれているようです。
しかしサンドらしい作品は、女性解放をテーマにした「アンディアナ」など。
岩波文庫の「アンディアナ」の初版は1937年。
古本ならアマゾンで1円から手に入りますが、ぜひ新訳を出してほしいです。
なお、藤原書店から「ジョルジュ・サンド・セレクション」が出ています。
「モープラ」「コンシュエロ」も入っています。ぜひ文庫化してほしい!
さいごに。(最大のイベント)
24日(月)に夏休みを取り、土日月の2泊3日で山梨にキャンプに行きます。
明日の朝出発です。これが毎年、我が家の最大のイベントです。
キャンプといっても、キャンプ場内のトレーラーハウスに泊まります。
うちは車が軽しかないため、テントや寝袋などが積めないので。
世紀児の告白 [19世紀フランス文学]
「世紀児の告白」 ミュッセ作 小松清訳 (岩波文庫)
憂鬱な世紀病を患った作者たち世代の、愛と青春を描いた半自伝的な小説です。
ミュッセとジョルジュ・サンドとの、熱狂的な恋愛から生まれた作品です。
岩波文庫から出ていましたが品切れ。1994年に復刊された本が家にありました。
初版は1953年。漢字は旧字体で、言葉遣いも古いので、少し読みにくいです。
帝政期の熱狂の中で生まれ、熱狂が消え去った後に青春期を迎えた「私」たち世代。
19世紀の青年たちは、空虚、憂鬱、倦怠、絶望という名の世紀病を患っていました。
ずっと信じ続けていた愛人に裏切られた「私」は、放蕩に走り始めました。
しかし心の中はいつも満たされず、自分が世紀病を患っていることを知るのです。
父の死をきっかけに、放蕩をやめますが・・・
しかし、ピエルソン夫人に出会って・・・
「世紀児の告白」は、ジョルジュ・サンドとの愛が描かれていることで有名です。
この二人の激しい恋は、当時もっとも有名な恋愛事件でした。
23歳のミュッセは、美しくダンディな青年詩人として社交界に出入りしていました。
28歳のサンドは、夫と別居中の女流作家で、男装して社交界に出入りしていました。
1833年の夏、二人は会合の席で運命的な出会いをしました。
二人は愛し合い、傷つけ合い、翌年の春にはヴェネチアで破局を迎えました。
その後も1836年まで、くっついたり離れたりしながら二人の関係は続きました。
そして、この恋愛は二人の人生と作品に、大きな影響を与えたのです。
ミュッセの詩の作風はがらりと変わり、内省的で深みのあるものになりました。
1936年に「世紀児の告白」を出しますが、30歳までに力を使い尽くしました。
一方サンドの方は、その後も様々なジャンルの小説をいくつも書き上げました。
そして、ショパンやリストなどとも関係を持ち、恋の方でも充実していました。
さて、この小説で感心したのは、ミュッセのカッコ悪さです。
嫉妬で泣いたりわめいたり、一転して許しを求めたり、恥ずかしい恥ずかしい。
しかし、こういう自分のかっこ悪さを隠さず、そのまま描いたところがいいです。
もしかしたら、そういうところがサンドの母性本能をくすぐったのでしょうか?
ミュッセはこの作品を、サンドを傷つけたことの償いのつもりで書いたそうです。
だから、自分はありのままに書き、夫人(サンド)は理想化して書いたそうです。
さいごに。(東京は暑かった)
お盆に4日間、東京へ出張に行きました。日中は外での仕事なので暑かったです。
家に帰って来た夜はへとへとで、そのまま11時間眠り続けました。
憂鬱な世紀病を患った作者たち世代の、愛と青春を描いた半自伝的な小説です。
ミュッセとジョルジュ・サンドとの、熱狂的な恋愛から生まれた作品です。
岩波文庫から出ていましたが品切れ。1994年に復刊された本が家にありました。
初版は1953年。漢字は旧字体で、言葉遣いも古いので、少し読みにくいです。
帝政期の熱狂の中で生まれ、熱狂が消え去った後に青春期を迎えた「私」たち世代。
19世紀の青年たちは、空虚、憂鬱、倦怠、絶望という名の世紀病を患っていました。
ずっと信じ続けていた愛人に裏切られた「私」は、放蕩に走り始めました。
しかし心の中はいつも満たされず、自分が世紀病を患っていることを知るのです。
父の死をきっかけに、放蕩をやめますが・・・
しかし、ピエルソン夫人に出会って・・・
「世紀児の告白」は、ジョルジュ・サンドとの愛が描かれていることで有名です。
この二人の激しい恋は、当時もっとも有名な恋愛事件でした。
23歳のミュッセは、美しくダンディな青年詩人として社交界に出入りしていました。
28歳のサンドは、夫と別居中の女流作家で、男装して社交界に出入りしていました。
1833年の夏、二人は会合の席で運命的な出会いをしました。
二人は愛し合い、傷つけ合い、翌年の春にはヴェネチアで破局を迎えました。
その後も1836年まで、くっついたり離れたりしながら二人の関係は続きました。
そして、この恋愛は二人の人生と作品に、大きな影響を与えたのです。
ミュッセの詩の作風はがらりと変わり、内省的で深みのあるものになりました。
1936年に「世紀児の告白」を出しますが、30歳までに力を使い尽くしました。
一方サンドの方は、その後も様々なジャンルの小説をいくつも書き上げました。
そして、ショパンやリストなどとも関係を持ち、恋の方でも充実していました。
さて、この小説で感心したのは、ミュッセのカッコ悪さです。
嫉妬で泣いたりわめいたり、一転して許しを求めたり、恥ずかしい恥ずかしい。
しかし、こういう自分のかっこ悪さを隠さず、そのまま描いたところがいいです。
もしかしたら、そういうところがサンドの母性本能をくすぐったのでしょうか?
ミュッセはこの作品を、サンドを傷つけたことの償いのつもりで書いたそうです。
だから、自分はありのままに書き、夫人(サンド)は理想化して書いたそうです。
さいごに。(東京は暑かった)
お盆に4日間、東京へ出張に行きました。日中は外での仕事なので暑かったです。
家に帰って来た夜はへとへとで、そのまま11時間眠り続けました。
二人の愛人 [19世紀フランス文学]
「二人の愛人」 ミュッセ作 新庄嘉章訳 (新潮文庫)
性格が対照的な二人の愛人の間で、愛の綱渡りを続ける25歳の青年貴族の物語です。
美しい中編小説で、ミュッセの代表作ではありませんが、捨てがたい魅力があります。
新潮文庫で出ていましたが現在は品切れ。うちには昭和62年の第46刷がありました。
訳は古いですが、読みにくくありません。アマゾンで古本が1円で出ています。
1825年のパリに、ヴァランタンという25歳の青年が住んでいました。
彼は一種の二重人格で、ある時は気障な伊達男、ある時は慎ましい倹約家でした。
そして、二つの性格に対応するかのように、二人の愛人を持っていました。
一人は金持ちで才気活発なパルヌ侯爵夫人、一人は貧しくて優しいドゥロネイ夫人。
二人にはそれぞれ違った、すばらしい魅力があります。
「どうして一人だけを愛さねばならないのだ?」(P83)
ヴァランタンは二人の間で悩み・・・(ただの優柔不断なんだよ、おまえは)
そして最後に選んだのは・・・(ただのマザコンなんだよ、おまえは)
と、ツッコミどころ満載で、そういう意味で楽しく読めました。
主人公ヴァランタンが、それほど真面目に悩んでいないところがいいですね。
二人の愛人のうち、一人は既婚者で、一人は未亡人です。
選ぶのは結婚相手ではなく、遊び相手(=愛人)ですからね。
「二人の愛人」は、愛すべき作品です。決して傑作ではありませんが。
ミュッセの傑作は、戯曲「戯れに恋はすまじ」と小説「世紀児の告白」でしょう。
「戯れに恋はすまじ」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-11-01
「世紀児の告白」→ 岩波文庫から出ていましたが、現在は品切れ。
ところで、平野啓一郎の「葬送」という長編小説が、ずっと気になっています。
ショパンとドラクロワの物語ですが、もちろんサンドとミュッセも出てきます。
さいごに。(今年もお盆は出張)
8月12日から15日まで、恒例のお盆の出張で、東京に来ています。
今回初めて、予約投稿機能を使ってみました。投稿できているかな?
性格が対照的な二人の愛人の間で、愛の綱渡りを続ける25歳の青年貴族の物語です。
美しい中編小説で、ミュッセの代表作ではありませんが、捨てがたい魅力があります。
新潮文庫で出ていましたが現在は品切れ。うちには昭和62年の第46刷がありました。
訳は古いですが、読みにくくありません。アマゾンで古本が1円で出ています。
1825年のパリに、ヴァランタンという25歳の青年が住んでいました。
彼は一種の二重人格で、ある時は気障な伊達男、ある時は慎ましい倹約家でした。
そして、二つの性格に対応するかのように、二人の愛人を持っていました。
一人は金持ちで才気活発なパルヌ侯爵夫人、一人は貧しくて優しいドゥロネイ夫人。
二人にはそれぞれ違った、すばらしい魅力があります。
「どうして一人だけを愛さねばならないのだ?」(P83)
ヴァランタンは二人の間で悩み・・・(ただの優柔不断なんだよ、おまえは)
そして最後に選んだのは・・・(ただのマザコンなんだよ、おまえは)
と、ツッコミどころ満載で、そういう意味で楽しく読めました。
主人公ヴァランタンが、それほど真面目に悩んでいないところがいいですね。
二人の愛人のうち、一人は既婚者で、一人は未亡人です。
選ぶのは結婚相手ではなく、遊び相手(=愛人)ですからね。
「二人の愛人」は、愛すべき作品です。決して傑作ではありませんが。
ミュッセの傑作は、戯曲「戯れに恋はすまじ」と小説「世紀児の告白」でしょう。
「戯れに恋はすまじ」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-11-01
「世紀児の告白」→ 岩波文庫から出ていましたが、現在は品切れ。
ところで、平野啓一郎の「葬送」という長編小説が、ずっと気になっています。
ショパンとドラクロワの物語ですが、もちろんサンドとミュッセも出てきます。
さいごに。(今年もお盆は出張)
8月12日から15日まで、恒例のお盆の出張で、東京に来ています。
今回初めて、予約投稿機能を使ってみました。投稿できているかな?
ツールの司祭 [19世紀フランス文学]
「ツールの司祭・赤い宿屋」 バルザック作 水野亮訳 (岩波文庫)
陰謀によって全てを奪われる司祭と、全てを奪っていく司祭を描いた物語です。
バルザックの中編の傑作で、写実小説として名高い作品です。
岩波文庫から出ていましたが現在は品切れ。アマゾンで比較的安価で出ています。
旧字体ですが活字が大きいので救われます。きれいな挿絵が所々に入っています。
1826年、ツールにはガマールという老嬢が営んでいる下宿屋がありました。
そこには、二人の対照的な老司祭が、下宿していました。
一人はビロトー師。親友が残した家具で快適な生活を送る、人の好い司祭です。
一人はトルーベール師。貧しい生活を送りながら、密かな野望を持っています。
ある日ビロトー師は、ガマール老嬢から疎まれていることに突然気づきました。
家主の陰湿ないじめに耐えきれず、ビロトー師は下宿を出る決心をしました。
しかし、そこに罠があることも知らずに・・・
この陰謀には、トルーベール師が絡んでいて・・・
これまたバルザックらしい、救いの無い物語です。
善良なビロトー師が財産を奪われる姿は、「従兄ポンス」にそっくりです。
ビロトー師の不幸は、悪意というをあまりにも知らなかったところにあります。
だから、自分の人生を左右する事件に真剣に向きあえず、他人任せにしてしまう。
「そして彼は自分の生活を、わづか一本の編み目がはづれると、横糸全体が引き
裂けてしまふ靴下に較べてみるのだった。」(P111)
物語のクライマックスは、トルーベール師と、リストメール老婦人の対決です。
この場面は、緊張感にあふれていてみごと。二人とも生き生き描かれています。
特に、トルーベール師の悪党ぶりがいいですね。司祭という名の悪魔ですよ。
こういう人間はホンモノです。決して敵に回したくありません。
ところで、この本を読んで二つほど疑問が残りました。
一つは題名について。もう一つは「参事会員」について。
まず、解説に「本篇の題名は(略)司祭ビロトー師を指す」と書いてあります。
しかし、トルーベール師も司祭です。題名は、この二人を指すのではないか?
また、小説冒頭で、ビロトー師は参事会員になりたがっています。
しかし、うだつの上がらないトルーベールは、すでに参事会員です。なぜか?
当時の時代背景を知らないと、分からないことが多いですね。
こういうことに詳しい方、できれば教えていただけないでしょうか。
さて、この本には「赤い宿屋」という小品も収録されています。
無実でありながら処刑された青年の話が発端となって・・・
驚くことべきに、訳は昭和18年のものです。よくぞ戦時中にこれだけの仕事を!
70年も昔の訳文なので、旧字体ではありますが、文章は分かりやすかったです。
さいごに。(氷枕大活躍)
暦の上では秋ですが、まだまだ暑い日が続きます。
うちには今年エアコンが付きましたが、リビングに1台あるだけです。
そのため寝室はむし暑いので、寝苦しい時には氷枕を使っています。
頭がひんやりして、すぐに眠れます。今年は氷枕が大活躍です。
陰謀によって全てを奪われる司祭と、全てを奪っていく司祭を描いた物語です。
バルザックの中編の傑作で、写実小説として名高い作品です。
岩波文庫から出ていましたが現在は品切れ。アマゾンで比較的安価で出ています。
旧字体ですが活字が大きいので救われます。きれいな挿絵が所々に入っています。
1826年、ツールにはガマールという老嬢が営んでいる下宿屋がありました。
そこには、二人の対照的な老司祭が、下宿していました。
一人はビロトー師。親友が残した家具で快適な生活を送る、人の好い司祭です。
一人はトルーベール師。貧しい生活を送りながら、密かな野望を持っています。
ある日ビロトー師は、ガマール老嬢から疎まれていることに突然気づきました。
家主の陰湿ないじめに耐えきれず、ビロトー師は下宿を出る決心をしました。
しかし、そこに罠があることも知らずに・・・
この陰謀には、トルーベール師が絡んでいて・・・
これまたバルザックらしい、救いの無い物語です。
善良なビロトー師が財産を奪われる姿は、「従兄ポンス」にそっくりです。
ビロトー師の不幸は、悪意というをあまりにも知らなかったところにあります。
だから、自分の人生を左右する事件に真剣に向きあえず、他人任せにしてしまう。
「そして彼は自分の生活を、わづか一本の編み目がはづれると、横糸全体が引き
裂けてしまふ靴下に較べてみるのだった。」(P111)
物語のクライマックスは、トルーベール師と、リストメール老婦人の対決です。
この場面は、緊張感にあふれていてみごと。二人とも生き生き描かれています。
特に、トルーベール師の悪党ぶりがいいですね。司祭という名の悪魔ですよ。
こういう人間はホンモノです。決して敵に回したくありません。
ところで、この本を読んで二つほど疑問が残りました。
一つは題名について。もう一つは「参事会員」について。
まず、解説に「本篇の題名は(略)司祭ビロトー師を指す」と書いてあります。
しかし、トルーベール師も司祭です。題名は、この二人を指すのではないか?
また、小説冒頭で、ビロトー師は参事会員になりたがっています。
しかし、うだつの上がらないトルーベールは、すでに参事会員です。なぜか?
当時の時代背景を知らないと、分からないことが多いですね。
こういうことに詳しい方、できれば教えていただけないでしょうか。
さて、この本には「赤い宿屋」という小品も収録されています。
無実でありながら処刑された青年の話が発端となって・・・
驚くことべきに、訳は昭和18年のものです。よくぞ戦時中にこれだけの仕事を!
70年も昔の訳文なので、旧字体ではありますが、文章は分かりやすかったです。
さいごに。(氷枕大活躍)
暦の上では秋ですが、まだまだ暑い日が続きます。
うちには今年エアコンが付きましたが、リビングに1台あるだけです。
そのため寝室はむし暑いので、寝苦しい時には氷枕を使っています。
頭がひんやりして、すぐに眠れます。今年は氷枕が大活躍です。
従兄ポンス2 [19世紀フランス文学]
「従兄ポンス」 バルザック作 水野亮訳 (岩波文庫)
病床の美術収集家ポンス老人が、貪欲な者たちの餌食となる物語です。
2013年の秋に、岩波文庫から復刊されました。今が購入のチャンス。
ポンスの受難の物語の後篇です。
とうとう最後まで救いの無い物語でした。あらすじを読んで、知ってはいましたが。
門番女、古物商、ユダヤ人骨董商、医師、法律屋、公証人、劇場主、部長夫人・・・
欲に目のくらんだ連中が、よってたかって・・・
略奪者の中で、キーパーソンは門番女のシボ夫人です。彼女の役割は大きい。
もし彼女だけでも正直な人間だったら、これほどひどい目には遭わなかったはず。
世間知らずの老人が食い物にされるこの物語は、現代にも通じる所があります。
一人暮らしの老人が押し売りの被害にあう事件は、大きな社会問題となりました。
ただし、前回も書きましたが、ポンスは自分の宝にあまりにも執着しすぎました。
宝を持っていながら、その使い道を知らなかったことが、ポンスの不幸でした。
「宝物を持っているくせにあくせく働いて、からだを終らせてしまうのは、
じつにバカげてる。」(P91)という、親友シュムケの忠告はもっともです。
さて、「従兄ポンス」を読んだら、姉妹編の「従妹ベット」を読まねばなりません。
ところが、「従妹ベット」は、現在岩波文庫でも新潮文庫でも品切れなのです。
岩波文庫で復刊されることを期待しているのですが、なかなか復刊されません。
もちろん、何度もHPで復刊リクエストをしてきました。(私ひとりか?)
愚かなことに私は、昨年新潮文庫版が復刊されたとき、購入を見送ったのです。
「新版が出る前兆だ!」と勝手に解釈したからです。あの判断は間違いでした。
それで結局、ヤフーオークションで古本を手に入れました。
定価より少し高い金額で落札しました。これから読むのが楽しみです。
さいごに。(川遊び)
先日、1日夏季休暇を取って、家族3人で山の清流へ川遊びに行きました。
山の水は冷たくて、空気がおいしくて、気持ちが良かったです。
病床の美術収集家ポンス老人が、貪欲な者たちの餌食となる物語です。
2013年の秋に、岩波文庫から復刊されました。今が購入のチャンス。
ポンスの受難の物語の後篇です。
とうとう最後まで救いの無い物語でした。あらすじを読んで、知ってはいましたが。
門番女、古物商、ユダヤ人骨董商、医師、法律屋、公証人、劇場主、部長夫人・・・
欲に目のくらんだ連中が、よってたかって・・・
略奪者の中で、キーパーソンは門番女のシボ夫人です。彼女の役割は大きい。
もし彼女だけでも正直な人間だったら、これほどひどい目には遭わなかったはず。
世間知らずの老人が食い物にされるこの物語は、現代にも通じる所があります。
一人暮らしの老人が押し売りの被害にあう事件は、大きな社会問題となりました。
ただし、前回も書きましたが、ポンスは自分の宝にあまりにも執着しすぎました。
宝を持っていながら、その使い道を知らなかったことが、ポンスの不幸でした。
「宝物を持っているくせにあくせく働いて、からだを終らせてしまうのは、
じつにバカげてる。」(P91)という、親友シュムケの忠告はもっともです。
さて、「従兄ポンス」を読んだら、姉妹編の「従妹ベット」を読まねばなりません。
ところが、「従妹ベット」は、現在岩波文庫でも新潮文庫でも品切れなのです。
岩波文庫で復刊されることを期待しているのですが、なかなか復刊されません。
もちろん、何度もHPで復刊リクエストをしてきました。(私ひとりか?)
愚かなことに私は、昨年新潮文庫版が復刊されたとき、購入を見送ったのです。
「新版が出る前兆だ!」と勝手に解釈したからです。あの判断は間違いでした。
それで結局、ヤフーオークションで古本を手に入れました。
定価より少し高い金額で落札しました。これから読むのが楽しみです。
さいごに。(川遊び)
先日、1日夏季休暇を取って、家族3人で山の清流へ川遊びに行きました。
山の水は冷たくて、空気がおいしくて、気持ちが良かったです。
従兄ポンス1 [19世紀フランス文学]
「従兄ポンス」 バルザック作 水野亮訳 (岩波文庫)
病床の美術収集家ポンス老人が、貪欲な者たちの餌食となる物語です。
バルザック最晩年の傑作です。姉妹編に「従妹ベット」があります。
2013年の秋に、岩波文庫から復刊されました。今が購入のチャンス。
初版が1930年ですが、改版されているため読みやすかったです。
老音楽家のポンスは、ある事件をきっかけに、親類から締め出されました。
貧しいポンスに寄り添うのは、同じく老音楽家で親友のシュムケだけです。
ところが、ポンスのコレクションに莫大な価値があることが分かると・・・
宝の山に目を付けた貪欲な連中は、ある陰謀をめぐらして・・・
現在、前編を読み終わったところですが、実にバルザックらしい小説です。
欲望に取りつかれた人々の醜悪さを、露骨に容赦なく描いています。
ほんと、人はカネのためには、とんでもない悪党にだってなりますよね。
そして食い物にされるのは、いつも決まって弱者です。
とはいえ、哀れなポンスにも、不幸を招いた原因があります。
それは、自分のコレクションに対する過剰な執着です。
病気で倒れた時、コレクションを少しは処分して、カネを作るべきでした。
そういう対処が自分でできないから、他人に付け入られてしまうのです。
さて、前編の最後に、次のような予告がありました。
「彼は病床にたかってくるガリガリ亡者どもの餌食となるのである」(P288)
すでにポンスは充分ひどい目にあっているのに、この先いったいどうなるのか?
(実は「あらすじ」を読んでしまったので、次の展開を知っているのだが。)
さいごに。(金魚)
町内の夏祭りで、娘が金魚すくいをやって、金魚を2匹持って帰りました。
金魚鉢に入れて飼っています。水の中を泳ぐ姿は、涼しげでいいですね。
病床の美術収集家ポンス老人が、貪欲な者たちの餌食となる物語です。
バルザック最晩年の傑作です。姉妹編に「従妹ベット」があります。
2013年の秋に、岩波文庫から復刊されました。今が購入のチャンス。
初版が1930年ですが、改版されているため読みやすかったです。
老音楽家のポンスは、ある事件をきっかけに、親類から締め出されました。
貧しいポンスに寄り添うのは、同じく老音楽家で親友のシュムケだけです。
ところが、ポンスのコレクションに莫大な価値があることが分かると・・・
宝の山に目を付けた貪欲な連中は、ある陰謀をめぐらして・・・
現在、前編を読み終わったところですが、実にバルザックらしい小説です。
欲望に取りつかれた人々の醜悪さを、露骨に容赦なく描いています。
ほんと、人はカネのためには、とんでもない悪党にだってなりますよね。
そして食い物にされるのは、いつも決まって弱者です。
とはいえ、哀れなポンスにも、不幸を招いた原因があります。
それは、自分のコレクションに対する過剰な執着です。
病気で倒れた時、コレクションを少しは処分して、カネを作るべきでした。
そういう対処が自分でできないから、他人に付け入られてしまうのです。
さて、前編の最後に、次のような予告がありました。
「彼は病床にたかってくるガリガリ亡者どもの餌食となるのである」(P288)
すでにポンスは充分ひどい目にあっているのに、この先いったいどうなるのか?
(実は「あらすじ」を読んでしまったので、次の展開を知っているのだが。)
さいごに。(金魚)
町内の夏祭りで、娘が金魚すくいをやって、金魚を2匹持って帰りました。
金魚鉢に入れて飼っています。水の中を泳ぐ姿は、涼しげでいいですね。
艶笑滑稽譚 [19世紀フランス文学]
「艶笑滑稽譚 第一輯」 バルザック作 石井晴一訳 (岩波文庫)
様々な時代の様々な人々が登場する、風刺的でエロティックな滑稽話集です。
ラブレーの「ガルガンチュア物語」のオマージュで、文豪の隠れた傑作です。
2012年に岩波文庫から出ました。美しい挿絵が豊富に収録されています。
訳は、古典的で風流な言葉遣いのため、とても分かりにくかったです。
艶かしくて笑える滑稽な話が、10話収録されています。
「教養人のためのちょっと高級な猥談集」という感じです。
中でも特に気に入ったのは、4つめの「悪魔の相続人」です。
90歳をこえてなお驚異的な精力で現役を続けている「参事会員殿」の話です。
彼には、50年も前から悪魔が住みついているという噂がありました。
あるとき、参事会員殿の足先から、恐ろしく伸びた爪がのぞいていて・・・
でも、あれは本当に悪魔だったのでしょうか?
こういう悪魔なら、いてもいいかなと思いました。
2つめの「贖い能う罪」も、印象に残る物語です。
聖リドワール様の伝説が要になっていますが、とうてい信じられない伝説です。
5つめの「ルイ十一世陛下のご遊楽」では、「くそ」という太字が頻出します。
まるで「くそ」まみれだと思ったら、その内容も・・・
この本は第一輯です。第三輯まで出ています。
すべてを訳すのに、17年かかったのだそうです。
なるほど、時間をかけて言葉を選んでいます。
古風できらびやかであじわい深い文章です。これは名訳でしょう。
しかし個人的には、もっと分かりやすい言葉で訳してほしかったです。
これでは半分古文ですよ。正直に言って、第二輯以降は読む気がしません。
ところで、ラブレーをそろそろ読みたいと思っています。
2005年にちくま文庫から、分かりやすい訳が出ているので。
さいごに。(河口湖で買った焼き物)
河口湖のハーブフェスティバルの会場で、三島手という焼き物を買いました。
作者は氏家孝法さん。山梨県大月市の工房で作っているそうです。
左の湯のみは3000円。右のマグカップは3500円。
どちらも、男心をくすぐるデザインです。
様々な時代の様々な人々が登場する、風刺的でエロティックな滑稽話集です。
ラブレーの「ガルガンチュア物語」のオマージュで、文豪の隠れた傑作です。
2012年に岩波文庫から出ました。美しい挿絵が豊富に収録されています。
訳は、古典的で風流な言葉遣いのため、とても分かりにくかったです。
艶かしくて笑える滑稽な話が、10話収録されています。
「教養人のためのちょっと高級な猥談集」という感じです。
中でも特に気に入ったのは、4つめの「悪魔の相続人」です。
90歳をこえてなお驚異的な精力で現役を続けている「参事会員殿」の話です。
彼には、50年も前から悪魔が住みついているという噂がありました。
あるとき、参事会員殿の足先から、恐ろしく伸びた爪がのぞいていて・・・
でも、あれは本当に悪魔だったのでしょうか?
こういう悪魔なら、いてもいいかなと思いました。
2つめの「贖い能う罪」も、印象に残る物語です。
聖リドワール様の伝説が要になっていますが、とうてい信じられない伝説です。
5つめの「ルイ十一世陛下のご遊楽」では、「くそ」という太字が頻出します。
まるで「くそ」まみれだと思ったら、その内容も・・・
この本は第一輯です。第三輯まで出ています。
すべてを訳すのに、17年かかったのだそうです。
なるほど、時間をかけて言葉を選んでいます。
古風できらびやかであじわい深い文章です。これは名訳でしょう。
しかし個人的には、もっと分かりやすい言葉で訳してほしかったです。
これでは半分古文ですよ。正直に言って、第二輯以降は読む気がしません。
ところで、ラブレーをそろそろ読みたいと思っています。
2005年にちくま文庫から、分かりやすい訳が出ているので。
ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル〈1〉 (ちくま文庫)
- 作者: フランソワ ラブレー
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/01
- メディア: 文庫
さいごに。(河口湖で買った焼き物)
河口湖のハーブフェスティバルの会場で、三島手という焼き物を買いました。
作者は氏家孝法さん。山梨県大月市の工房で作っているそうです。
左の湯のみは3000円。右のマグカップは3500円。
どちらも、男心をくすぐるデザインです。