SSブログ

論語 [古代文学]

 「論語」 齋藤孝訳 (ちくま文庫)


 すらすら読めて分かることを目指した、「論語」の書き下し文と現代語訳です。
 数多く出ている「論語」本の中で、文の歯切れの良さはピカイチだと思います。


論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 文庫



 中学のとき初めて「論語」に接しました。「吾れ十有五にして学に志ざす。」
 そのころは、どこか説教くさい感じがして、好きになれませんでした。

 ところが高校で学んだとき、次のような文に出会って「論語」にはまりました。
 自分の進むべき道を、寸暇を惜しんでひたすら歩む姿が、カッコ良かった。

 「逝くものは斯くのごときか、昼夜を舎かず。」
 「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。」

 大学受験のときには、「論語」の参考書を使って、漢文を勉強しました。
 あれから30年以上たち、当時覚えた文章は、ほとんど忘れてしまいました。

 今回、齋藤孝の「論語」を読み、当時の受験勉強を懐かしく思い出しました。
 あの頃と同じように、次のような地味な文が、とても心に染み入りました。

 「疏食(そし)を飯(く)らい水を飲み、肱を曲げて之れを枕とす。
  楽しみ亦た其(そ)の中に在り。
  不義にして富み且つ貴きは、我に於いて浮雲(ふうん)の如(ごと)し。」

 (粗末な飯を食べ、水を飲み、椀を枕にする。
  このような生活の中にも楽しみはあるものだ。
  義(ただ)しくないことをして金持ちになり、身分が高くなるようなことは、
  私にとっては浮き雲のようにはかないことだ。)

 こういう文を読むと、「論語」は生き方の書なんだなあと、つくづく思います。
 ほか、次の文も心に残りました。「三国志演義」で引用された言葉もあります。

 「人の将に死なんとするや、其の言や善し。」
 (顔回が死んで)「噫(ああ)、天、予れ(われ)を喪(ほろぼ)せり。」
 「未まだ生を知らず。焉(いずく)んぞ死を知らん。」
 「死生命有り。富貴天に有り。」
 「天何をか言わん哉(や)。四時行わる、百物生ず。天何をか言わん哉。」

 さて、私が愕然とした文章があります。それは、「後生畏るべし。」の一節。
 「焉(いず)くんぞ来者の今に如(し)かざるを知らんや。」に続く文は・・・

 「四十五十にして聞ゆること無くんば、斯れ亦た畏るるに足らざるのみ。」
 四十や五十で評判がたたなきゃ畏れるに足りないという。51歳には耳が痛い。

 さて、このちくま文庫版は、重要な文だけ太字で書かれています。
 また、注釈がないところが潔くて良いです。シンプルで読みやすいです。

 もっと詳しい解説を求める人には、講談社学術文庫版がいいかもしれません。
 参考「論語」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-04-11

 さいごに。(初回限定版)

 先日ジャニーズWESTのニューアルバムWESTTVが発売されました。
 妻は迷った末に、DVD付きの初回版を買いました。では、なぜ迷ったのか?

 なんと、初回限定版には、通常版のうちの何曲かが入っていないのだそうだ。
 そんな売り方アリか? でも、大人しく両方買う人も多いのだとか・・・

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

絵画で読む聖書 [古代文学]

 「絵画で読む聖書」 中丸明 (新潮文庫)


 聖書にまつわる絵画を紹介しながら、旧約聖書と新約聖書について解説しています。
 多くの図版を参考にしながら、軽快な語り口で解説されていて、分かりやすいです。


絵画で読む聖書 (新潮文庫)

絵画で読む聖書 (新潮文庫)

  • 作者: 中丸 明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/11/01
  • メディア: 文庫



 エデンの園、洪水伝説、約束の地カナン、出エジプト、ダビデとソロモン・・・
 イエス誕生、聖母伝説、洗礼者ヨハネ、使徒列伝、イエスの死、イエス復活・・・

 というように、旧約聖書と新約聖書の要点を、最初から順番に解説しています。
 聖書の解説書は世に溢れていますが、この本は「絵画で読む」点が特徴的です。

 図版がとても多く、見ていて楽しめる本になっています。
 ただし、図版が小さくてモノクロである点が物足りない。文庫本の宿命ですが。

 それでも図版の威力は大きいです。旧約聖書の部は、特にそのように感じました。
 エデンの園の場面では、次のような絵画が、内容の理解を更に深めてくれました。

 「楽園の園」「イヴの創造」(ボッシュ)、アダムの創造(ミケランジェロ)、
 「アダムとイヴの誘惑」(ティツィアーノ)、「楽園追放」(マザッチオ)・・・

 それだけではありません。イヴの出産スタイルについて言及したところはすごい。
 ちゃんとその場面を彫刻した像がP28にあって、私はこの図を見て仰天しました!

 このように、この本は、聖書をただ流れに沿って紹介しただけではありません。
 所々で開陳される著者独特の考えや深読みが、またまた非常に面白いのです。

 エデンの園は神の植民地であり、アダムとイヴは神の奴隷だった?
 禁断の木の実はイヴのおっぱいだった? カインは蛇小僧とイヴの子だった?

 この調子で、さまざまな仮説・俗説・勝手な想像を交えながら、軽快に進みます。
 全550ページ以上、読んでいてまったく飽きませんでした。 

 新約聖書の部では、第九章「イエスに葬られた帝国と神々」が面白かったです。
 ここでは、聖書の内容から少し離れて、当時の歴史的背景を説明しています。

 この章で語られる、聖ペテロが復活したキリストに出会う場面は印象的でした。
 私はこの記述から、シェンキエヴィッチの「クオ・ヴァディス」を知りました。

 「クオ・ヴァディス」は、2013年にダントツで「私のベスト1」でした。
 「クオ・ヴァディス」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09
             http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-10-12

 似たような本で、ふくろうの本の「図説聖書物語(旧約・新約)」があります。
 単行本なので図が大きくて、ほとんどがカラーなので見やすいです。


図説 聖書物語 旧約篇 (ふくろうの本)

図説 聖書物語 旧約篇 (ふくろうの本)

  • 作者: 山形 孝夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/02/20
  • メディア: 単行本



図説 聖書物語 新約篇 (ふくろうの本)

図説 聖書物語 新約篇 (ふくろうの本)

  • 作者: 山形 孝夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/02/20
  • メディア: 単行本



 さいごに。(ヲタノート)

 うちの娘は、「ヲタノート」なるものを書いています。
 ジャニヲタ(ジャニーズのオタク?)のノート、ということのようです。

 そのトップページには、「ヲタ活は人生を豊かにする」と書いてあります。
 内容は、JUMPのコンサートに行く夢を見たなど、無害なもので安心しました。

nice!(2)  コメント(3) 
共通テーマ:

論語 [古代文学]

 「論語」 加地伸行 (角川ソフィア文庫)


 中学生に語るように、孔子の人生と思想について易しく解説した本です。
 角川文庫の、「ビギナーズ・クラシックス中国の古典」の一冊です。


論語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)

論語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)

  • 作者: 加地 伸行
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/10/23
  • メディア: 文庫



 第一部は、「孔子の生涯」です。
 当時の中国の様子を理解した上で、孔子の人生をたどることができます。

 魯の事情、少年時代、母方の事情、学校運営、不遇時代、魯の政治事件、
 孔子の政治手腕、斉による計略、流浪時代、弟子の死、孔子の死・・・

 特に「未だ生を知らずんば、焉んぞ死を知らんや」の解釈は印象的です。
 孔子は死を語らないのかという疑問が、ようやく氷解しました。

 この第一部を読むことで、 孔子が遠い昔の遠い 国の人ではなくなります。
 孔子がとても身近に感じられて、第二部がすっきり頭に入ってきます。

 第二部は、「『論語』のことば」です。
 孔子の有名な言葉を読みながら、思想の要点をつかむことができます。

 家族、生命の連続、友情、学問、人間的魅力、教養人と知識人、弟子たち、
 思いやりの大切さ、生き方、政治、幸福論、運命、死という宿命・・・

 言葉遣いが易しく、構成が工夫されているため、読みやすかったです。
 「将来、中学生になったときの孫を想定して」書いたのだそうです。

 この本はあとがきまで含めて、著者のあたたかい心にあふれています。
 とても丁寧に作られた本で、孔子とお孫さんへの深い愛が感じられました。

 そこで、加地伸行全訳注「論語」(講談社学術文庫)を読んでみました。
 こちらも評判は良く、すばらしい本であることは確かなのですが・・・

 全訳だと、「丁寧」な訳が「バカ丁寧」に感じられ、読みにくかったです。
 補足が多すぎるため、読んでいてまどろっこしくて仕方がなかったです。


論語 (講談社学術文庫)

論語 (講談社学術文庫)

  • 作者: 加地 伸行
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 文庫



 私はむしろ、齋藤孝訳が、歯切れがよくて、分かりやすく感じました。
 斎藤孝の言葉のセンスは、ピカイチですね。


論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 文庫



 さいごに。(一六本舗の)

 近所のスーパーで、高知県一六本舗の自家製餡シュークリームを買いました。
 「生クリーム + アン」のシュークリームです。娘と一つずつ食べました。

 とてもおいしかったのですが、全て食べるのはたいへんでした。
 こういうのが、パクパク食べられなくなりました。ちなみに2つで500円です。

P1070917-2.jpg

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

イソップ寓話集 [古代文学]

 「イソップ寓話集」 塚崎幹夫訳 (中公文庫)


 古代ギリシアのアイソーポスが語ったと伝えられる、様々な寓話を集めたものです。
 時代を経るに従って、多くの寓話が加えられ、世界中に広まっていきました。

 現在「イソップ寓話集」の決定版は、1999年刊の岩波文庫新訳版でしょう。
 411ページに471話を収録しています。訳はとても分かりやすいです。


イソップ寓話集 (岩波文庫)

イソップ寓話集 (岩波文庫)

  • 作者: イソップ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/03/16
  • メディア: 文庫



 私が学生のときは、1987年刊の中公文庫版が「新訳決定版」とされていました。
 358話を細かく分類して収録しています。しかし、現在は絶版です。


新訳 イソップ寓話集 (中公文庫)

新訳 イソップ寓話集 (中公文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1987/09
  • メディア: 文庫



 「カメとウサギ」「キツネとブドウ」「肉をくわえた犬」「アリとハト」
 「セミとアリ」「ライオンと恩返ししたネズミ」「野ネズミと家のネズミ」
 「悪ふざけをする羊飼い」「北風と太陽」「塩を運ぶロバ」・・・

 これらの寓話は、一度は聞いた事がある話ばかりだと思います。
 が、それはイソップ寓話のほんの一部。初めて聞く話が次から次に出てきます。

 358話もあるので、最初からひとつひとつ読んでいくと、飽きてしまいます。
 気まぐれにぱらぱらページをめくりながら、気まぐれに読んでいくのが正しい。

 ちなみにマイ・ベストは「守銭奴」(P60)です。
 わずか12行の物語ですが、ちょっとした小説になりそうです。

 「守銭奴が全財産を金に換え、金塊を作り、ある場所にうずめた。彼はそれと
 同時に心も気力もそこにうずめたのであった。・・・」

 金塊を盗まれた守銭奴が嘆くのを見て、ある人は何と言ったか?
 そしてその人は、どのような提案をしたのか?

 ついでながら、「ビーバー」(P49)も面白いです。
 人々はなぜビーバーを追うのか? ビーバーはいかにして逃げのびるのか?

 さて、中公文庫版の特徴は、明らかにイソップ作でない話を排除している点です。
 訳者はイソップに対するこだわりが強い。その思いが「はじめに」に出ています。

 作者は、「イソップ寓話」は、奴隷であったイソップの、反抗の書であると言う。
 そして、管理社会で生きる我々自身もまた奴隷である、と・・・
 (そう言われると、なんかイソップに親近感を持ってしまいます。)

 さいごに。(4×100mリレーチーム銅メダル)

 世界陸上が終って楽しみが無くなりましたが、寝不足も無くなりました。
 最も感動したのは、4×100Mリレーの日本チーム銅メダル獲得です。
 
 ケンブリッジを外して、タイムで劣る藤光を入れた。この判断がスゴイ!
 藤光はベテラン。ぎりぎりのバトンをやってのけ、3位に食い込みました。

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:

古代文学のベスト20を選びました2 [古代文学]

 前々回、古代文学のベスト20を、独断で次のように選びました。
 古代文学ベスト20→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27

 1 「ギルガメシュ叙事詩」(メソポタミア)●前1500年~前1000年
 2 「イリアス」ホメロス(ギリシア)●前8世紀
 3 「オデュッセイア」ホメロス(ギリシア)●前8世紀
 4 「ギリシア悲劇 アイスキュロス」(ギリシア)●前5世紀
 5 「ギリシア悲劇 ソポクレス」(ギリシア)●前5世紀
 6 「ギリシア悲劇 エウリピデス」(ギリシア)●前5世紀
 7 「歴史」ヘロドトス(ギリシア)●前5世紀
 8 「歴史」ツキディデス(ギリシア)●前5世紀
 9 「ソクラテスの弁明・クリトン」 プラトン(ギリシア)●前4世紀
10 「ガリア戦記」カエサル(ローマ)●前1世紀
11 「アエネーイス」ウェルギリウス(ローマ)●前1世紀
12 「変身物語」オウィディウス(ローマ)●1世紀
13 「史記」司馬遷(中国)●前1世紀
14 「サテュリコン」ペトロニウス(ローマ)●1世紀
15 「黄金の驢馬」アプレイウス(ローマ)●2世紀
16 「年代記」タキトゥス(ローマ)●2世紀
17 「ダフニスとクロエー」ロンゴス(ギリシア)●2世紀
18 「英雄伝」プルタルコス(ギリシア)●2世紀
19 「トロイア戦記」クイントゥス(ギリシア)●4世紀
20 「シャクンタラー姫」カーリダーサ(インド)●4世紀

 今回は、古代文学の流れを、私なりにイメージしたいと思います。
 世界文学大事典や世界史参考書等を参考にし、若干の仮説を入れました。

◎ 古代文学の流れ

 人類は文字誕生以前から、神々や英雄たちの物語を口頭で伝えてきました。
 それは継承される間に洗練され、独自の韻律を持ち、叙事詩となりました。

 前3500年頃、最古の文明の地メソポタミアで、楔形文字が生まれました。
 そこで、最古の文学「ギルガメシュ叙事詩」が、粘土板に刻まれました。

 メソポタミアは開かれているため、楔形文字は他の民族にも広がりました。
 「ギルガメシュ叙事詩」も広まり、洪水伝説は聖書にも吸収されました。

 同じころエジプトで神聖文字が生まれ、「死者の書」等が書かれました。
 エジプトは閉ざされているため、文字も文学も外へ広がりませんでした。

 ただしエジプトの特産品パピルスは、フェニキア人によって広まりました。
 パピルスはアルファベットと一緒に、地中海全域の民族に伝わったようです。

 紀元前8世紀にホメロスが「イリアス」「オデュッセイア」を作りました。
 これらのギリシア叙事詩は、紀元前6世紀になってから文字化されました。

 紀元前5世紀に、ペルシアに勝利したアテナイが、黄金期に入りました。
 演劇が発展し、アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスが活躍しました。

 一方、当時の事績を自由に記述するため、散文の歴史書が生まれました。
 ヘロドトスがペルシア戦争を、ツキディデスがペロポネソス戦争を記しました。

 アテナイでは哲学が興隆し、プラトンが「ソクラテスの弁明」等を残しました。
 その後、ギリシアは戦乱によって衰退し、ローマに征服されていきました。

 ローマでは紀元前1世紀にカエサルが出て、帝政への移行が始まりました。
 カエサルは軍人らしい簡潔な記述で、「ガリア戦記」等を残しました。

 初代皇帝アウグストゥスの時代から、ローマは最盛期に向かって行きました。
 時代の要請から、建国神話を題材とした「アイネーイス」が作られました。

 この時期ローマ文学は黄金期で、ウェルギリウスとホラティウスが出ました。
 「変身物語」など、ローマとギリシアの神話を集大成した作品も出ました。

 さて、西でローマが勃興していた時期に、東では中国が拡大していました。
 中国ではかなり昔から、独自の文字である漢字を使っていました。

 前1世紀に最盛期を迎えた漢は、おそらく世界一の強国でした。
 この時期、司馬遷が中国最初の正史「史記」を著し、後の規範となりました。

 アウグストゥス以降、ローマの文学は白銀時代に入りました。
 ネロなど悪名高い皇帝のもとで、享楽的で退廃的な文学を生み出しました。

 その代表が、「サテュリコン」や「黄金のロバ」などの小説です。
 また「年代記」では、歴代皇帝の暴虐な振る舞いがつづられました。

 ローマ文学が独自の発展を遂げる一方で、ギリシア文学も継承されました。
 2世紀には「ダフニスとクロエー」や、膨大な「英雄伝」が書かれました。

 五賢帝の時代が終わると、ローマは再び混乱し始めました。
 そのころスミュルナでは、クイントゥスが「トロイア戦記」を書きました。

 395年にローマ帝国が東西に分裂し、古代の輝かしい時代は終わりました。
 ちょうどその時期、インドのグプタ朝は、最盛期を迎えていました。

 インドでは昔からサンスクリット語が使われ、聖典を口伝えしてきました。
 「マハーバーラタ」が現在の形で文字化されたのは、グプタ朝時代です。

 その頃が、サンスクリット文学の黄金期でもありました。
 カーリダーサが出て、「シャクンタラー」などの名作を残しました。 

 以上、ギリシアとローマの文学が中心になります。
 古代は長大な時間が流れているので、イメージをつかみにくかったです。

◎ 今年のテーマ

 今年の読書のテーマは、『中世文学』です。
 実は昨年、『古代&中世文学』をテーマにしていたのですが、甘かった!

 古代の歴史書は大作が多く、読みにくいため、なかなか進みませんでした。
 「内乱記」「同時代史」「春秋左氏伝」等は、まだ読んでいません。

 今年は、主に中世文学を読んでいきたいと思っています。
 「デカメロン」「カンタベリー物語」「アーサー王物語」等を読む予定です。


◎ さいごに。(ラスコー展)

 昨年の終わりに「ラスコー展」に行きました。意外とすいていました。
 メインである壁画のレプリカは、思ったより少なかったです。

 しかし良かったことは、フラッシュ無しなら撮影自由ということ。
 室内に強いカメラを持っていったので、たくさん撮ってきました。

DSCF2665-2.jpg
DSCF2658-2.jpg

nice!(4)  コメント(2) 
共通テーマ:

古代文学のベスト20を選びました [古代文学]

 「文学全集 第Ⅶ集 古代編」


 文庫本で自分だけの文学全集をそろえることが、私のライフワークです。
 例によって独断と偏見で、第Ⅶ集の古代編を決定したいと思います。

 すでに、第Ⅰ集から第Ⅵ集は完成しています。
 以下のページを参照してください。

 第Ⅰ集「19世紀フランス編」(20作)
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-10-23
 第Ⅱ集「19世紀イギリス編」(20作)
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-08-04
 第Ⅲ集「19世紀ロシア編」(20作)
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-12-22
 第Ⅳ集「19世紀ドイツ北欧編」(20作)
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-11-09
 第Ⅴ集「19世紀アメリカ編」(10作)
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-08-06-1
 第Ⅵ集「18世紀編」(10作)
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25-2

 まず、古代文学で取り上げた作品を、登場順にリストアップしてみます。
 解説本や、二次創作は省きました。それでも、結構ありました。

 「ギルガメシュ叙事詩」 ・ 「ソクラテスの弁明・クリトン」 プラトン
 「ギリシア悲劇 アイスキュロス」 ・ 「サテュリコン」ペトロニウス
 「旧約聖書 天地創造 創世の書」 ・ 「ギリシア悲劇 ソポクレス」
 「黄金の驢馬」アプレイウス ・ 「ギリシア哲学者列伝」ディオゲネス
 「女の平和」アリストパネス ・ 「ダフニスとクロエー」ロンゴス
 「シュメール神話集成」 ・ 「ギリシア神話」アポロドーロス
 「神統記」ヘシオドス ・ 「仕事と日」ヘシオドス
 「変身物語」オウィディウス ・ 「イリアス」ホメロス
 「トロイア戦記」クイントゥス ・ 「オデュッセイア」ホメロス
 「ギリシア・ローマ抒情詩選」 ・ 「ギリシア悲劇 エウリピデス」
 「ナラ王物語」 ・ 「歴史」ヘロドトス
 「バガヴァッド・ギーター」 ・ 「インド神話」
 「シャクンタラー姫」カーリダーサ ・ 「歴史」ツキディデス
 「饗宴」プラトン ・ 「ソクラテスの思い出」クセノポン
 「アナバシス」クセノポン ・ 「英雄伝」プルタルコス
 「ガリア戦記」カエサル ・ 「ローマ建国史」リウィウス
 「史記」司馬遷 ・ 「アレクサンドロス大王東征記」アッリアノス
 「年代記」タキトゥス ・ 「ローマ皇帝伝」 スエトニウス
 取り上げなかったけど、ウェルギリウスの「アエネーイス」は外せない。

 ここからベスト20を選び、「文学全集 第Ⅶ集 古代編」を完成!
 年代順に並べ、それぞれ、選択した理由を簡単に記しました。

 1 「ギルガメシュ叙事詩」(メソポタミア)●前1500年~前1000年
   現存する最古の文学。すべてはここから始まった。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-08-27

 2 「イリアス」ホメロス(ギリシア)●前8世紀
   西洋文学の古典中の古典。アキレウスとヘクトルの宿命に涙する。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-04-11
     http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-04-17

 3 「オデュッセイア」ホメロス(ギリシア)●前8世紀
   西洋文学の古典中の古典。オデュッセウスの冒険に胸躍る。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14
     http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-05-17

 4 「ギリシア悲劇 アイスキュロス」(ギリシア)●前5世紀
   アテナイ三大悲劇詩人の1人目。ギリシア悲劇の確立者。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-04-21
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-05-14

 5 「ギリシア悲劇 ソポクレス」(ギリシア)●前5世紀
   アテナイ三大悲劇詩人の2人目。なんといってもオイディプス。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-12-16
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-12-20

 6 「ギリシア悲劇 エウリピデス」(ギリシア)●前5世紀
   アテナイ三大悲劇詩人の3人目。ギリシア悲劇の革新者。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-06-04
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-06-13

 7 「歴史」ヘロドトス(ギリシア)●前5世紀
   歴史の父による最古の歴史書。物語性が豊かで文学的。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-07-04

 8 「歴史」ツキディデス(ギリシア)●前5世紀
   ペロポネソス戦争の歴史を、凝った文体でつづる。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-08-01
     http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-08-01

 9 「ソクラテスの弁明・クリトン」 プラトン(ギリシア)●前4世紀
   ソクラテスの命がけの訴え。気迫のこもった文章。生き方の書。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-08-31

10 「ガリア戦記」カエサル(ローマ)●前1世紀
   軍人らしく簡潔に分かりやすく記した戦記。ラテン語の名文。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09

11 「アエネーイス」ウェルギリウス(ローマ)●全1世紀
   ローマ文学の傑作。この作品だけ読めなかった。復刊を期待。

12 「史記」司馬遷(中国)●前1世紀
   中国最初の正史。多くの英雄たちのドラマティックな物語。
   「本紀」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-11-18
   「列伝1」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-11-27
   「列伝2」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-12-09

13 「変身物語」オウィディウス(ローマ)●1世紀
   ギリシア・ローマ神話の集大成。西洋における教養の書。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-03-03

14 「サテュリコン」ペトロニウス(ローマ)●1世紀
   現存するのはわずかだが、悪漢小説の元祖として重要。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-12-02

15 「黄金の驢馬」アプレイウス(ローマ)●2世紀
   完全な形で現存する最古の小説。しかもハチャメチャ。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-10-06

16 「年代記」タキトゥス(ローマ)●2世紀
   著者独自の味付けがされている歴史書。緊張感ある文体。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-12-13
     http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-12-21

17 「ダフニスとクロエー」ロンゴス(ギリシア)●2世紀
   恋愛小説の古典的傑作。後世に与えた影響は大きい。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25-1

18 「英雄伝」プルタルコス(ギリシア)●2世紀
   ギリシアとローマの英雄たちのドラマティックな物語。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27

19 「トロイア戦記」クイントゥス(ギリシア)●4世紀
   「イリアス」と「オデュッセイア」の懸け橋として重要。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-05-02

20 「シャクンタラー姫」カーリダーサ(インド)●4世紀
   サンスクリット文学の古典的傑作。
   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-07-26

* 古典編は「ギリシア悲劇集」「史記」などの大作が多かったです。
  全20作集めると、何ページになるのか、また、いくらになるのか。

  1年を振り返ると、本に結構な金額をつぎ込んでいました。(あーあ)
  ちくまの「プルタルコス英雄伝」のような選集が、もっと出てほしい。


 さいごに。(クリぼっち)

 クリスマスをひとりぼっちで過ごすことを「クリぼっち」と言うらしい。
 ヘンな言葉を作ったもんだ。

 「将来クリぼっちになりたくない」と、小4の娘が今から心配しています。
 「毎年うちに帰ってくればいい」と言ったら、すぐに安心していました。

 ちなみに今年のクリスマスは、昨年に続いてチーズフォンデュ大会でした。
 ケーキは、シャトレーゼ。庶民的な味ですが、安くておいしかったです。

DSCF2642-2.jpg
DSCF2643-2.jpg

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

年代記2(タキトゥス) [古代文学]

 「年代記 ティベリウス帝からネロ帝へ(下)」 タキトゥス (岩波文庫)


 初代ローマ皇帝アウグストゥスの死から、五代皇帝ネロまでの年代記です。
 岩波文庫から出ています。下巻は「第二部 クラウディウスとネロ」です。


年代記〈下〉ティベリウス帝からネロ帝へ (岩波文庫)

年代記〈下〉ティベリウス帝からネロ帝へ (岩波文庫)

  • 作者: タキトゥス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/04/16
  • メディア: 文庫



 原典の一部が欠落しているため、下巻はクラウディウス帝とネロ帝の治世です。
 二人の治世を彩るのは、告発と毒殺。不名誉で破廉恥な時代です。

 誠実な人間は、卑怯な人間の不当な告発によって、破滅させられてしまいます。
 偉大な人間は、つまらない人間による謀略によって、毒殺されてしまいます。

 元首は悪党の親玉と化し、お追従しか言わない連中だけが生き残っていきます。
 読んでいて、げんなりしてきました。時々タキトゥス自身のぼやきも入ります。

 クラウディウス帝の3人目の妻はメッサリナ、4人目の妻はアグリッピナ。
 彼は体の不具合のせいか、この妻たちにみごとなぐらい尻に敷かれました。

 そして、王のようにふるまった妻たちが、政治をめちゃくちゃにしました。
 彼女たちは、情夫と不倫の関係を結んで、道徳もめちゃくちゃにしました。

 メッサリナに毒され、その情夫となったシリウスの一言が、とても印象的です。
 「おおっぴらに破廉恥を犯した者は、厚顔無恥な手段で身を救うべきだ。」(P40)

 しかし、なんといっても抜群の存在感を示したのは、女傑アグリッピナでしょう。
 ネロを命懸けで皇帝の座に就かせ、そのネロに自分の命を奪われていく・・・

 「占星師は、『ネロは政権をとるだろう、そして母親を殺すだろう』と答え、それを
 聞いて彼女は、『ネロが天下をとれば、私を殺してもよい』と言っていた」(P181)

 五代皇帝ネロについては説明不要でしょう。母を殺し、弟を殺し、師を殺し・・・
 ローマに火を放ち、キリスト教徒のせいにして、残酷な方法で殺し・・・

 「ネロは自然、不自然を問わず、あらゆる淫行でもって身を汚し、もうこれ以上堕落
 のしようがあるまいと思えるほどに悖徳(はいとく)の限りを尽くした。」(P263)

 ネロの暴虐の犠牲者のひとりが、その師であるセネカです。
 セナカの最期は胸に染みます。彼が、最後に友人たちに贈ったものは・・・

 セネカは、当時数少ない正義の人でした。
 彼の「生の短さについて」は、読んでみたい本のひとつです。


生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

  • 作者: セネカ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/03/17
  • メディア: 文庫



 最後の最後に、ペトロニウスが登場。記述は少ないけど、鮮烈な印象を残します。
 私は「クオ・ワディス」で、「美の審判者」ペトロニウスのファンになりました。

 「クオ・ワディス」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09
 「クオ・ワディス2」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-10-12

 さいごに。(私だけEメール)

 陸上仲間の忘年会がありました。私以外は全員、LINEでつながっていてビックリ。
 Eメールで連絡が来たのは私だけ。幹事は私一人のために2度手間になっていた!

 私がタブレットを持っているというと、LINEをやるように皆から勧められました。
 私はどうもLINEが好きになれない。年に数回のことだし、勘弁してもらおうか。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

年代記(タキトゥス) [古代文学]

 「年代記(上)ティベリウス帝からネロ帝へ」 タキトゥス  (岩波文庫)


 初代ローマ皇帝アウグストゥスの死から、五代皇帝ネロまでの年代記です。
 タキトゥスは、紀元1世紀から2世紀にかけて活躍した歴史家です。

 岩波文庫から二分冊で出ています。古い訳ですが、分かりやすかったです。
 原典には欠落している部分があり、いいところで話が途切れたりもします。


年代記〈上〉ティベリウス帝からネロ帝へ (岩波文庫)

年代記〈上〉ティベリウス帝からネロ帝へ (岩波文庫)

  • 作者: タキトゥス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/03/16
  • メディア: 文庫



 「年代記(上)」は、二代皇帝ティベリウスの治世を描いています。
 ティベリウス帝の陰険さを反映してか、その時代は全体的に陰鬱です。

 「むごたらしい命令、のべつ幕なしの弾劾、いつわれる友情、清廉な人の破滅、
 必ず断罪で終る裁判、そういうものにがんじ搦めに縛られ、千篇一律の事件を
 見せつけられ、倦怠を覚える。」(P273)と、タキトゥスはぼやいています。

 タキトゥスの筆致は辛辣です。彼は帝政をよく思っていなかったらしいです。
 そして、共和制を懐かしむような気持ちが、随所に表れています。

 たとえば、カエサル暗殺事件を、「奴隷根性のまだ熟していなかったローマが、
 自由をとりもどそうとして失敗したあの日」(P23)と表現しています。

 さて、ティベリウス帝は、初代皇帝アウグストゥスの継子(ままこ)でした。
 アウグストゥスがリウィアと強引に結婚した時、すでにお腹の中にいたのです。

 だからアウグストゥスにとって本命は、血のつながりのあるゲルマニクスです。
 ティベリウスは中継ぎ。そういう出生の因縁が、彼を陰険にしたのかもしれない。

 しかし一方で、ティベリウスは賢帝だったという説もあります。
 実際彼は、カプリ島から離れることなく、命令一つでセイヤヌスを倒しました。
 (しかしその部分の原典が欠落しています。読みたかった!)

 さて、ティベリウスの治世の前半では、ゲルマニクスの活躍が印象的でした。
 ゲルマニアでアルミニウスと戦い、栄光に包まれながらも、最後は・・・

 後半は、護衛隊長セイヤヌスの野望とその破滅が、印象的でした。
 ティベリウスの信頼を得ながら、その陰でとてつもない計略を進めて・・・

 平和ゆえに腐敗していたティベリウス治世について、色々と分かりました。
 ティベリウスといえば青の洞窟。それしか知らなかった自分が恥ずかしい。

 「年代記」の下巻は、「第二部 クラウディウスとネロ」です。
 三代皇帝カリグラの巻が、欠落しているのが残念です。

 さいごに。(持久走大会)

 娘の持久走大会がありました。今年は仕事の関係で、応援に行けませんでした。
 順位は昨年の7位からだいぶ落ちて22位。

 それでも一生懸命に走って、ラストスパートをしてゴールしたと言います。
 なによりも、最後までがんばってくれたことがうれしいです。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

史記・列伝2 [古代文学]

 「史記・列伝」 司馬遷著 小竹文夫・小竹武夫訳 (ちくま学芸文庫)


 列伝は、国に仕えて時代を動かした人物の一代記を、年代順にまとめたものです。
 ちくま学芸文庫から4分冊で出ています。1971年の訳です。


史記〈7〉―列伝〈3〉 (ちくま学芸文庫)

史記〈7〉―列伝〈3〉 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 司馬 遷
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1995/07
  • メディア: 文庫



史記〈8〉―列伝〈4〉 (ちくま学芸文庫)

史記〈8〉―列伝〈4〉 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 司馬 遷
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1995/08
  • メディア: 文庫



 列伝は第七十巻まであります。ちくま学芸文庫版では4分冊になっています。
 3冊目、4冊目と進むうちに、登場人物が多すぎて、頭が混乱してきます。

 3冊目は、第四十巻から第五十七巻までで、呉楚七国の乱が中心となります。
 乱を起こした呉王濞(ひ)、対処した袁盎(えんおう)と鼂錯(ちょうそ)・・・

 この乱に絡んで、多くの個性的な武将や政治家が登場します。
 そのほとんどが、一時はもてはやされますが、やがて滅んでいきます。

 どの人物も、賢明さの裏には愚かさがあり、勇敢さの裏には臆病さがあります。
 そして、成功のあとには失敗があり、幸運のあとには不幸が待ち構えています。

 時代が変わっても、最後まで変わらず我が身を守り通すことは、とても困難です。
 うまくいっている時こそ、気を付けなければいけない。これは普遍的な真理か。

 その他、匈奴と戦った「李将軍列伝」と、続く「匈奴列伝」が興味深かったです。
 特に、「匈奴列伝」の中の冒頓(ぼくとつ)のエピソードが面白かったです。

 冒頓は部下たちに、自分と同じものを射るように命じ、自分の良馬を射ました。
 躊躇して射なかった者たちがいましたが、その者たちを容赦なく斬りました。

 次に冒頓は、なんと自分の愛妻を射て、射なかった部下たちを斬りました。
 そして、そのあと冒頓が射たものは・・・すごいというか、ひどいというか・・・

 列伝の4冊目に入ると、いろんな人物が登場しすぎて、もうわけが分かりません。
 特に第六十二巻以降は、一つの列伝の中に、何人もの人物が入り混じっています。

 その中でもひときわ目を引いたのは、カメの話です。第六十八巻「亀策列伝」。
 古代に、カメが神の使いとして、いかに尊ばれていたのかが分かります。

 ところで、列伝をいくら読んでも、張良や陳平等の一部の功臣が出てきません。
 そこで調べてみて、初めて知ったのですが、彼らは「世家」に入っているのです。

 「世家(せいか)」とは何かというと、それは、諸侯に関する伝記だと言います。
 ということは、「列伝」より上ではないか。(ああ、恥ずかしい)

 史記といったら紀伝体。紀伝体といったら本紀(帝)と列伝(家臣)。
 だから私は、本紀と列伝以外は、ただのおまけだと、思い込んでいました。

 私は、「本紀と列伝を読めば史記はOK」と思っていました。
 しかし、「世家」について知った今、それを読まないわけにはいきません。

 ちくま学芸文庫の第3巻と第4巻が、世家にあてられています。
 なお、ほかに「書」と「表」があり、合わせて第2巻に入っています。


史記〈3〉―世家〈上〉 (ちくま学芸文庫)

史記〈3〉―世家〈上〉 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 司馬 遷
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1995/09
  • メディア: 文庫



史記〈4〉―世家〈下〉 (ちくま学芸文庫)

史記〈4〉―世家〈下〉 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 司馬 遷
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1995/10
  • メディア: 文庫



 「世家」の登場は想定外でした。(ホントはただの知識不足)
 ほかにも、岩波文庫から出ている「春秋左氏伝」を読んでおきたいです。


春秋左氏伝〈上〉 (岩波文庫)

春秋左氏伝〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/11/16
  • メディア: 文庫



春秋左氏伝〈中〉 (岩波文庫)

春秋左氏伝〈中〉 (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/02/16
  • メディア: 文庫



春秋左氏伝〈下〉 (岩波文庫)

春秋左氏伝〈下〉 (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/05/16
  • メディア: 文庫



 さいごに。(「保育園落ちた日本死ね」確かにいっとき流行はしたが)

 あのような汚い言葉を、政治に持ち込んだのは、いかがなものだろうか。
 民〇党は、国会の品位を損なうと同時に、自らをも貶めたのではないか。

 しかし、それを選んで表彰する人がいる! 喜んで賞を受ける人もいる!
 選ぶなら「汚言大賞」でしょう。 (万智さんだけは反対したと信じたい)

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

ローマ建国史 [古代文学]

 「ローマ建国史(上)」 リウィウス著 鈴木一州(かずくに)訳 (岩波文庫)


 建国から紀元前二世紀頃までの、ローマの歴史を記した142巻の著書です。
 ローマ文学の黄金時代である紀元前17年に書かれ、35巻が現存しています。

 岩波文庫から2007年に上巻だけ出ました。中巻と下巻はいつ出るのか。
 この本に収録されているのは、現存するうちの第一巻と第二巻のみです。


ローマ建国史〈上〉 (岩波文庫)

ローマ建国史〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: リーウィウス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2007/04/26
  • メディア: 文庫



 第一巻は、ロムルスによるローマ建設から、伝説の七王の治世244年間。
 その間、さまざまな伝説的なできごとがありました。

 ザビニ族の女の略奪、ロムルスの最期、ホラティウス三兄弟の戦い、
 頭から炎を出したセルウィウス、貞女ルクレーティアの悲劇・・・

 第二巻からは共和制ローマの歴史です。前509年から前468年まで。
 国外での戦いや、国内での闘争など、さまざまな試練が続きます。

 立役者のブルータス、その相棒プーブリウス、ポルセンナ王による侵略、
 元老院と平民の闘争、ファビウス一族の活躍、コリオラヌスの反乱・・・

 私は本書をローマ正史だと思っていて、堅苦しい内容を想像していました。
 しかし、正史というより神話・伝説で、予想以上に読みやすかったです。

 また、聞いたことのあるエピソードが意外とたくさんありました。
 ロムルスの最期やザビニ女の略奪など、絵画で知っている話もありました。

 この書物が書かれたのは、ローマ帝政期の初期で、ローマの黄金期でした。
 当時の状況が、序言に記されています。この記述が、興味深い。

 「まこと、財物が少なければ、それだけ欲望も小さかった。
 最近は、富が貪欲を招き寄せ、漲る欲望が、逸楽と放埓に耽ってわが身も亡び、
 かつはすべてを亡ぼしつくすことを憧れさせている。」

 リウィウスは当時のローマを、あまりよく思っていなかったようです。
 だからこそ、建国以来の歴史を振り返ってみようと思ったのですね。

 さて、この岩波文庫版で読めるのは、最初の二巻のみです。
 そのほかの現存の巻は、京都大学学術出版界から、単行本で出ています。


ローマ建国以来の歴史〈1〉伝承から歴史へ1 (西洋古典叢書)

ローマ建国以来の歴史〈1〉伝承から歴史へ1 (西洋古典叢書)

  • 作者: リウィウス
  • 出版社/メーカー: 京都大学学術出版会
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本



 いつかは塩野七生の「ローマ人の物語」を、通して読みたいです。
 少しずつ買い集めているので、全45冊のうち35冊ほどが揃いました。


塩野七生『ロ-マ人の物語』の旅 コンプリ-トセット 全43巻

塩野七生『ロ-マ人の物語』の旅 コンプリ-トセット 全43巻

  • 作者: 塩野七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011
  • メディア: 文庫



 さいごに。(サンタに財布を頼む)

 うちの娘は、今年のクリスマスに、サンタに財布を頼むのだそうです。
 最近持ち物にこだわるようになったので、プレゼント選びが大変です。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ: