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エプタメロン [中世文学]

 「エプタメロン」 ナヴァール王妃作 平野威馬雄訳 (ちくま文庫)


 増水した川に橋を架けるまでの間、男女が交代で一日に10話ずつ物語ったものです。
 「デカメロン」の影響で書かれましたが、作者の死によって七日物語となりました。

 ちくま文庫から出ていますが、72話のうち27話を収めている抄訳版です。
 全訳したうえで、合理的なストーリーにして、そのエッセンスを取り出したと言う。


エプタメロン―ナヴァール王妃の七日物語 (ちくま文庫)

エプタメロン―ナヴァール王妃の七日物語 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1995/03
  • メディア: 文庫



 温泉場からの帰り道、フランス人の一行は、洪水によって川を渡れなくなりました。
 では川に橋がかかるまでの間、お互いにお話を語り合おうということになって・・・

 「デカメロン」同様、まじめな話よりも、不まじめな話の方が、ずっと面白いです。
 そして「デカメロン」同様、作品に色どりを加えているのは、堕落した聖職者ども。

 以下、特に気に入った話について、少しだけ紹介します。
 (ちくま文庫版の収録数は27話のみなので、全訳版とは話の番号が異なります。)

 第六話では、好色な男が、召使だと思いこんで、自分の妻を相手にしてしまい・・・
 その夜、若い友人にも同じことをさせた結果、その妻は・・・全体のベスト作です。

 第九話では、厳格な僧院長が、あの手この手で尼僧を誘惑します。
 「尼僧が乳房を持っていて何の用があるか? こうして触ってやらなくては・・・」

 第十話については、そのストーリーはともかく、補足説明がとても興味深いです。
 妻をフランソワ一世に寝取られた男が、捨て身でおこなった恐ろしい復讐とは?!

 ほか、第十九話の修道僧は、怠け者の令嬢を、どんなふうに「懲らしめた」のか?
 第二十話の神父は、ある花嫁のベッドで、どのような「ダンス」をしたか?

 第二十七話の、臨終間際の妻が回復してしまったのは、夫が何をしたからか?
 「まさか」と思うことが次々に起きます。しかも、著者によると全て実話だと言う。

 著者のナヴァール王妃は、フランス・ルネサンス期の王フランソワ一世の姉です。
 そして仏語で書かれた「エプタメロン」は、フランス・ルネサンスの代表作です。

 ところで、鹿島茂による解説に、興味深いことが書かれてありました。
 フランスにおける「恋愛」とは、結婚後に人妻が愛人と楽しむことを言うとか・・・

 さいごに。(佐久島)

 愛知県の南海、三河湾に浮かぶ佐久島(人口262人)に、日帰りで行ってきました。
 安くお手軽に(船賃は往復大人1640円)、南の島の雰囲気を味わってきました。

 佐久島は、地域おこしがうまくいった島で、「現代アートの島」として蘇りました。
 多くの観光客が訪れ、そのほとんどが名物の「大あさり丼」を食べています。

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封神演義 [中世文学]

 「封神演義」 許仲琳作 八木原一恵編訳 (集英社文庫)


 殷から周に変わる混乱期に、人界と仙界が入り乱れて戦う、荒唐無稽な物語です。
 漫画にアレンジされて、週刊少年ジャンプに連載され、とても評判になりました。

 集英社文庫から、八木原の編訳が上下二分冊で出ています。
 抄訳で読みやすくなっています。巻頭に登場人物の紹介があって便利です。


封神演義 前編 (集英社文庫)

封神演義 前編 (集英社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/12/14
  • メディア: 文庫



 殷の末期、紂王(ちゅうおう)は妲己(だっき)に溺れ、暴政を行っていました。
 実は妲己は、女媧(じょか)が紂王を破滅させるために遣わした、千年の狐でした。

 周の武王は姜子牙(きょうしが=太公望)の助けを得て、紂王征伐に向かいました。
 実は姜子牙は、崑崙山(こんろんざん)の道士で、元始天尊の命を受けていました。

 一方、殷の太師の聞仲(ぶんちゅう)もまた道士で、殷のために周と戦います。
 姜子牙と聞仲の戦いは、道教の二大派閥の戦いとなり、仙界を巻き込んでいき・・・

 コミック版や安能版が評判になっていた頃から、この作品が気になっていました。
 また、「封神演義」は四大奇書に並ぶ傑作だ、ということをどこかで聞きました。

 実際、妲己によって人間界が翻弄されていく場面までは、とても面白かったです。
 妲己は一種のヒロインであり、彼女を中心に展開する間は、話が分かりやすかった。

 ところが、周と殷の戦いになってからは、次から次に登場人物が現れては消えます。
 人物の名前や武器の名前を覚えることに必死で、筋道をたどることに精一杯でした。

 姜子牙は、ピンチになると元始天尊の所へ助けを求め、助っ人を遣わされるし・・・
 求めなくとも勝手に助っ人が現れるし・・・助っ人は色んな武器を持ってるし・・・

 似たような名前があるから、敵か味方か分からなくなるし・・・
 死んだと思ったら生き返るので、誰が死んでしまったのか分からなくなるし・・・

 途中から内容は、道士たちの技比べになりました。まるで、出し物大会です。
 結局私は、前編だけで投げ出してしまいました。後編も買ってあるのですが。

 しかし、読まないのももったいないから、結末だけこっそり盗み見をしました。
 ・・・そうか・・・なるほど・・・


封神演義 後編 (集英社文庫)

封神演義 後編 (集英社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/01/19
  • メディア: 文庫



 ところで、この作品がもしコミックなら、確かに面白く読めるのかもしれません。
 コミックのネタとなった、安能務の「封神演義」も買ったまま、積読状態です。


封神演義(上) (講談社文庫)

封神演義(上) (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1988/11/08
  • メディア: 文庫



 さいごに。(娘の話ばかり)

 前の職場の仲間と、久しぶりに飲み会がありました。
 「娘さんはどう?」と、なぜか娘のことばかり聞かれました。どうして?

 「だって昔から、娘さんのことしか話さなかったじゃないですか」とのこと。
 そうか。昔も今も、私の話題はいつも、娘のことばかりだったのか・・・

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中国怪奇小説集 [中世文学]

 「中国怪奇小説集」 岡本綺堂 (光文社文庫)


 六朝、唐、五代、宋、元、明、清の小説から、二百二十の怪奇談を集めたものです。
 中国の怪奇小説は、特に室町と江戸時代の日本の小説に、大きな影響を与えました。


中国怪奇小説集 新装版 (光文社文庫)

中国怪奇小説集 新装版 (光文社文庫)

  • 作者: 岡本 綺堂
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/08/10
  • メディア: 文庫



 「捜神記」「酉陽雑俎(ゆうようざっそ)」「輟耕録(てっこうろく)」・・・
 二十種ほどの怪奇小説から、選び抜かれた怪奇談が収録されています。

 「秦の時代に、南方に落頭民(らくとうみん)という人種があった。
 その頭がよく飛ぶのである。・・・」(P25)

 落頭民? 頭が飛ぶ? しかも、耳を翼にして、窓から飛んで出てゆくと言う。
 とんでもないことが、まことしやかに書かれていて、冒頭から度肝を抜かれました。

 この本は、怖くて面白い話の宝庫です。どれも短いので読みやすいです。
 中でも、マイ・ベスト10は、以下のとおりです。(時代順)

 1 「首の飛ぶ女」(捜神記) 先の、落頭民の話です。
 2 「武陵桃林」(捜神後記) 桃の林の先の、小さな洞穴に入ってみると・・・
 3 「離魂病」(捜神後記) 起きて出たはずの夫が、まだそこに眠っていて・・・
 4 「画中の人」(酉陽雑俎) 絵に筆を着けずに、精彩を加えると言うが・・・
 5 「人面瘡」(酉陽雑俎) 二の腕にできた腫物は、人の顔をしていて・・・

 6 「鬼国」(稽神録) その国の人たちには、我々の姿が見えないようで・・・
 7 「亡妻」(異聞総録) 門に立っていた女は、自分の死んだ妻であって・・・
 8 「牡丹燈記」(剪燈新話) 美しい女は実は、おしろいをつけた骸骨で・・・
 9 「名画の鷹」(池北偶談) 嫁が狐に見込まれたが、鷹の掛物をかけると・・・
10 「金鉱の妖怪」(子不語) 金鉱で生き埋めになった者の形骸はそのまま・・・

 私は、特に「捜神記」と「捜神後記」を読みたくて、この本を購入しました。
 「捜神記」25編、「捜神後記」27編。一話が短いので、もっと採録してほしかった。

 六朝時代のこの素朴な二編は、柳田國男の「遠野物語」を連想させました。
 唐時代の「酉陽雑俎」になると、洗練されている分、作り話っぽくなりました。

 そして、この手の怪談が完成するのが、清の時代でしょう。
 清の時代には、なんといっても「聊斎志異(りょうさいしい)」があります。

 この「中国怪奇小説集」の特徴は、語り手が時代の概要を説明するところです。
 語り手の説明によって、中国怪奇小説の歴史をたどっていくことができました。

 ただ、怪奇小説集の最高峰である「聊斎志異」が、なぜか入っていません。
 岩波文庫から出ているので、ぜひ読んでおきたいです。


聊斎志異〈上〉 (岩波文庫)

聊斎志異〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: 蒲 松齢
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/01/16
  • メディア: 文庫




 さいごに。(クロール克服)

 水泳の授業が始まる前に、クロールを50メートル泳げるようにしておきたいです。
 娘は息継ぎがうまくいかず、昨年の5年の時は25メートルしか泳げませんでした。

 そこで、先日の日曜日に、市民プールに連れていき、クロールの練習をしました。
 息継ぎのタイミングを少し修正しただけで、すぐに50m泳げるようになりました!

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十八史略1 [中世文学]

 「十八史略1・2」 曾先之著 丸山松幸・西野広祥訳 (徳間文庫)


 伝説時代から南宋までの18の史書を、簡潔にまとめた中国歴史の入門書です。
 14世紀前半に曾先之によって作られ、明の陳殷によって注釈が施されました。

 私が読んだのは、徳間文庫版です。全6巻ありますが、抄訳だそうです。
 読みやすいように、小見出しや註や補説が付いています。


十八史略〈1〉覇道の原点 (徳間文庫)

十八史略〈1〉覇道の原点 (徳間文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫



十八史略〈2〉権力の構図 (徳間文庫)

十八史略〈2〉権力の構図 (徳間文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫



 「史記」「漢書」「三国志」「晋書」「宋書」「魏書」「隋書」「新唐書」・・・
 ほか、全18の中国史書の膨大な内容を、略して分かりやすく記述しています。

 中国歴史のポイントを押さえ、ほとんどの故事や名言も採録してあります
 ひと通り読めば、中国歴史の基礎知識が得られるようになっています。

 第一巻は、神々の時代から、夏、殷、周、春秋、戦国までを収録しています。
 この巻では、高校の教科書 で学んだ有名な逸話が、次から次に登場します。

 「鼓腹撃壌」「臥薪嘗胆」「太公望」「管鮑の交わり」「晏子の御」
 「鶏鳴狗盗」「鶏口牛後」「刎頚の交わり」「隗より始めよ」・・・

 印象的だったのは、呉の夫差と伍子胥、越の句践と范蠡の、熱い復讐の物語!
 それから、蘇秦の合従策と、張儀の連衡策。かつての旧友同士の友情と戦い!

 春秋時代の国々、戦国の七雄と、多くの国があって、頭が整理できません。
 取り上げられる人物も多く、誰がどこの国の人なのか、すぐ忘れてしまいます。

 第二巻は、秦の統一から、項羽と劉邦を経て、漢の時代までを収録しています。
 基本は秦と漢だけなので、第一巻に比べて、歴史の流れが整理しやすいです。

 始皇帝、趙高、陳勝と呉広、項羽と劉邦、韓信、呂后、文帝、武帝、王莽・・・
 中国の雄大な歴史を、お手軽に振り返ることができるという意味は大きい。

 しかし、あまりにも簡略化されているので、物足りなさを感じてしまいます。
 そこで、つい何度も「史記」を開いて、同じ場面を読み返してしまいました。

 ところで、私が読んだ徳間文庫版は、1975年に出た本の文庫化で全6冊です。
 講談社学術文庫版とちくま学芸文庫版は、なんと、一巻に圧縮しています。


十八史略 (講談社学術文庫)

十八史略 (講談社学術文庫)

  • 作者: 竹内 弘行
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/10
  • メディア: 文庫



十八史略 (ちくま学芸文庫)

十八史略 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 曾 先之
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2014/07/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(走ることにキョーミ?)

 娘が珍しく、「走り方を教えて」と言ったので、公園で2回ほど教えました。
 少し教えただけで、見違えるようにフォームが大きくなり、良くなりました。

 娘も手ごたえがあったようで、教えを意識してリレーを走ると言っています。
 ああ、それなのに、小学校最後の運動会が、仕事と重なってしまうとは・・・

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中国名詩選 [中世文学]

 「中国名詩選(中)」 川合康三編訳 (岩波文庫)


 杜甫・李白を中心に、初唐・盛唐・中唐の詩の代表作を収録しています。
 白文、書き下し文、注、現代語訳、補足説明と、丁寧に作られた本です。


新編 中国名詩選(中) (岩波文庫)

新編 中国名詩選(中) (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/02/18
  • メディア: 文庫



 初唐においては、南朝の流れを引き継ぎ、文学は主に宮廷で行われました。
 盛唐になると、文学は宮廷から離れ、文学は政治から距離を置きました。

 李白や杜甫など、放浪の中で作られた詩が、唐詩の黄金期を形成しました。
 これらの詩は、世界に広がり、日本にももたらされ、広く愛されました。

 「中国名詩選(中)」には、全盛期の代表的な唐詩が収められています。
 孟浩然、王維、李白、杜甫、韓愈、柳宋元・・ ・

 特に突出しているのが、李白26首と杜甫43首。何といってもこの二人です。
 ちなみに私は、厳しい現実を詠んだ杜甫より、空想に遊んだ李白が良い。

 李白には、「黄鶴楼に孟浩然の広陵に之くを送る」「子夜呉歌」、
 「山中問答」「山中にて幽人と対酌す」「黄鶴楼」などがあります。

 しかし、なんといってもすばらしいのは「春日酔いより起きて志を言う」。
 「世におるは大夢のごとし なんすれぞ其の生を労す・・・」(!)

 杜甫には、「月夜」「春望」「江亭」「岳陽楼に登る」などがあります。
 実に160ページにわたって、杜甫の切なく悲しい詩が続いています。

 ほか、陳子昂の「幽州台に登る歌」、王翰の「涼州詩」、孟浩然の「春暁」、
 王維の「 元二の安西に使いするを送る」と「竹里館」、柳宗元の「江雪」・・・

 この本は、どこかで聞いたことのある有名どころを網羅していて良いです。
 今後、何度も読み返す本になりそうです。

 さいごに。(ミス・デビル)

 娘は、「ミス・デビル」を毎回見ています。佐藤勝利が出ているからです。
 「まったく、くだらない」と思いながら、一緒に見ていたら、面白くて・・・

 第3話では、言うことを聞かないバカ社員を、最後にはちゃんと成敗!
 ミス・デビルには、何か隠された使命があるようで、この先も気になります。

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水滸伝2 [中世文学]

 「水滸伝(中・下)」 施耐庵作 松枝茂夫編訳 (岩波少年文庫)


 梁山泊に集まった108人の英雄が、様々な活躍する姿を描いた伝奇歴史小説です。
 講談として広まった多くの話を、明代に施耐庵が集大成して出来上がりました。


水滸伝 中 (岩波少年文庫 542)

水滸伝 中 (岩波少年文庫 542)

  • 作者: 施 耐庵
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/06/18
  • メディア: 単行本



水滸伝 下 新版 (岩波少年文庫 543)

水滸伝 下 新版 (岩波少年文庫 543)

  • 作者: 施 耐庵
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/06/18
  • メディア: 単行本



 「水滸伝」上巻では、主役が次から次に、めまぐるしく交代してきました。
 しかし中巻に入ってからは、「宋江」を中心にして物語が進んでいきます。

 特に、宋江が九天玄女から天書を授かる場面は、とても印象に残りました。
 宋江は特別な存在で、彼こそ「水滸伝」の主人公であることが分かります。

 ちなみに宋江は実在の人物で、北宋時代末に反乱を起こしたのだそうです。
 なるほど。宋江の伝承から「水滸伝」は生まれたのでしょうか。

 ところが、「水滸伝」で描かれる宋江は、意外にもカッコ悪いです。
 体は小さく太っていて、色が黒い。武芸は弱くて、簡単にやられてしまう。

 それなのに主役となれたのは、義侠心に篤くて弱者を助ける人柄ゆえです。
 「及時雨宋江」といえば、誰でも畏まって土下座します。まるで黄門さま。

 「わたしとして、上は天の理にさからい、下は父の教えにそむいて、不忠不孝
 の人間となってしまったのでは、生きていたとて何になりましょう?」

 そう言って梁山泊入りを拒んだ男を、その首領とするところに、物語の皮肉と
 面白さがあります。そしてこの逆説的な展開に、水滸伝の核心があると思う。

 ところで私は、宋江が九天玄女に会う辺りから、物語に少し飽き始めました。
 生け捕った敵の大将に平伏し、相手を感激させて味方にする、その繰り返し。

 しかも、梁山泊の連中はしだいに無茶をするようになるし・・・
 秦明や朱ドウや蘆俊義らを仲間に引き入れるため、どんな卑怯なことをしたか!

 サイテーなのは、「白状すれば命を助けないこともない」と言っておきながら、
 白状した相手を、あっさり斬り殺すところでしょう。この手を何度使ったか!

 だから、彼らが悲劇的な結末を迎えた時に、素直に泣けないのです。
 そりゃあ、仕方がないよなあ、と私は思ってしまいました。

 横山光輝の漫画「水滸伝」は、少年向けに美しくカッコよく描かれていて良い。
 また、北方謙三の「水滸伝」は、全19巻と長いが、非常に評価の高い小説です。


水滸伝6巻セット 漫画文庫

水滸伝6巻セット 漫画文庫

  • 作者: 横山 光輝
  • 出版社/メーカー: 潮出版社
  • 発売日: 2005/04/01
  • メディア: 文庫



水滸伝 文庫版 全19巻+読本 完結BOXセット (集英社文庫)

水滸伝 文庫版 全19巻+読本 完結BOXセット (集英社文庫)

  • 作者: 北方 謙三
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/04/23
  • メディア: 文庫



 さいごに。(最近は気難しくて)

 小学6年生になってから、娘は気難しい日が多いです。
 妻と娘の会話に、私が入ろうとすると、「パパは黙っていて」と言うことが多い。

 妻と娘がTVを見ている所に、私が入っていくと、「パパは来ないで」と言うし。
 そういうお年頃なのでしょうか。

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水滸伝1 [中世文学]

 「水滸伝(上)」 施耐庵作 松枝茂夫編訳 (岩波少年文庫)


 梁山泊に集まった108人の英雄が、様々な活躍する姿を描いた伝奇歴史小説です。
 講談として広まった多くの話を、明代に施耐庵が集大成して出来上がりました。

 現在、井波律子訳の講談社学術文庫版が定番ですが、全5冊で1万円になります。
 岩波少年文庫は、5分の1に圧縮された抄訳で、テンポよく読めました。


水滸伝 (一) (講談社学術文庫)

水滸伝 (一) (講談社学術文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/09/12
  • メディア: 文庫



水滸伝 上 (岩波少年文庫 541)

水滸伝 上 (岩波少年文庫 541)

  • 作者: 施 耐庵
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/06/18
  • メディア: 単行本



 水滸伝の予備知識なしで読んだため、最初は少し戸惑いました。
 話はあっちこっちに飛ぶし、梁山泊はいつまでたっても出てこないし。

 主人公が次々にバトンタッチされて、誰が誰なのか分からなくなります。
 ネタバレになってしまいますが、物語を簡単に整理してみましょう。

 高俅(こうきゅう)が王進を迫害する → 逃げる王進が史進に武芸を教える →
 史進が旅で魯提轄(ろていかつ)らに会う → 魯提轄が林沖と義兄弟になる →
 林沖が梁山泊で楊志に会う → 楊志が宝を晁蓋(ちょうがい)らに奪われる →
 楊志が魯提轄と一緒に二竜山をのっとる → 宋江が晁蓋にことの急を告げる →
 晁蓋らが林沖と出会い梁山泊をのっとる・・・

 主人公が次々に移り変わるのは、もともと独立した英雄談だったからでしょう。
 編者(?)の施耐庵が、それぞれの英雄談を、ゆるやかにつなげています。

 上巻の最後の方で、ばらばらだった英雄たちが、梁山泊にまとまり始めました。
 しかしこの時点では、冒頭の108の妖魔を逃がす場面の意味が、分かりません。

 さて、上巻ラストでは武松(ぶしょう)が登場し、虎を退治しました。
 潘金蓮と西門慶の運命は、「水滸伝」と「金瓶梅」では全く違います。

 この岩波少年文庫の「水滸伝」初版は、1959年。言い回しが古い所もあります。
 挿絵も渋い。少年向けと言うより、大人向けです。そのまま文庫化してほしい。

 さいごに。(担任が変わる)

 娘のクラス担任が変わりました。娘は昨年と同じ先生が良かったのだそうです。
 新しい先生も、なかなか評判のよい先生です。父親参観は、ぜひ行きたいです。

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金瓶梅4 [中世文学]

 「金瓶梅4」 蘭陵笑笑生作 村上知行訳 (ちくま文庫)


 悪徳の限りを尽くす富豪「西門慶」を中心に、腐敗した社会を描いた小説です。
 村上訳第4巻は、第66回~第100回(全体の三分の一ほど)を収録しています。


金瓶梅〈4〉情炎の果てに (ちくま文庫)

金瓶梅〈4〉情炎の果てに (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫



 西門慶は、副典獄から典獄に昇進し、その権勢は絶頂に達しました。
 しかし潘金蓮が、眠っている西門慶に丸薬を多量に与えてしまって・・・

 死を覚悟した西門慶は、月娘に最後の忠告を与えます。
 「けっして散り散りになり、世間の笑いものにはなってくれるな」(P172)

 ところが、西門慶亡きあとは、一門の転落の勢いはすさまじく・・・
 「大官人が死んでからは、風が砂にとぶように、みんなばらばら」(P269)

 主人公の西門慶が亡くなるのが第79回で、さらにあと21回も続きます。
 この間、西門一家の転落が、これでもかこれでもかと描かれています。

 この西門一門の破滅の過程に、「人の無情」と「世の無常」を感じました。
 ろくでなしの西門慶も、いなくなるととても寂しい。

 だが、西門慶は物語から、完全に退場したわけではありませんでした。
 ラストの第100回で、西門慶に関わるとても意外な展開が!

 さて、第3巻まで存在感が薄かった春梅ですが、第4巻でブレイクします。
 李瓶児はすでに亡く、潘金蓮の非業の死のあと、春梅の時代が来ますが・・・

 この物語に登場するのは、女も男も、カネに縛られた者ばかりです。
 この物語が官能小説でありながら、悲哀を感じさせる理由がここにあります。

 「金瓶梅」を読み終えたら、次はぜひ「水滸伝」を読みたいです。
 「水滸伝」も「金瓶梅」同様、冗長な部分を省いた抄訳で読みたいです。


水滸伝 上 (岩波少年文庫 541)

水滸伝 上 (岩波少年文庫 541)

  • 作者: 施 耐庵
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/06/18
  • メディア: 単行本



 さいごに。(娘は小学6年生)

 4月から、うちの娘は、とうとう小学6年生になります。
 上級生に連れられて登校していたのが、ついこのあいだのように感じます。

 今では、1年生や2年生を連れて登校しています。頼もしくなったものだ。
 一年後には中学生か、と今からもう来年のことを、考えてしまっています。

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金瓶梅3 [中世文学]

 「金瓶梅3」 蘭陵笑笑生作 村上知行訳 (ちくま文庫)


 悪徳の限りを尽くす富豪「西門慶」を中心に、腐敗した社会を描いた小説です。
 ちくま文庫から村上知行による抄訳が4巻で出ていましたが、現在は絶版です。


金瓶梅〈3〉色道無残 (ちくま文庫)

金瓶梅〈3〉色道無残 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2000/02
  • メディア: 文庫



 ちくま文庫版の第3巻に入ると、西門慶はますます好調です。
 塩の専売で儲け、悪党から賄賂を取り、贈り物で蔡大師の義子になってしまう。

 財産は増え、権力は増し、その勢いはとどまることを知りません。
 やりたい放題、し放題で、面白おかしく、愉快に暮らしています。

 特に、遍歴の怪僧からもらった強精剤の威力は見逃せません。
 「この薬を用いたなら、天上の不老不死の世界、永遠の春の世界に遊べる」!

 この丸薬を得て、西門慶は精力絶倫。化け物めいた雰囲気さえ漂ってきます。
 そしてこの丸薬が、彼ら一門の運命を、大きく変えてしまうのですが・・・

 また、正妻の呉月娘(ごげつじょう)も、怪しげな尼僧と接触しています。
 初産の赤子の胞衣(えな)を使えば、子供が授かると言われて・・・

 一方、潘金蓮は、飼っている大きな猫に、絹で包んだ生肉を与えています。
 なぜわざわざ絹に包むのか? そこには、とんでもない計略が・・・

 李瓶児はとうとう病気になり、死に際に男の姿を目にするようになります。
 死んだ我が子を抱え、「一緒に暮らそう」と言うその男は・・・

 潘金蓮のような毒婦を、さっさと追い出せないのが、西門慶の運の尽きです。
 巻末までいくと、西門慶の運が少しずつ傾き出したのを感じるようになります。

 タイトルの「金瓶梅」は、潘金蓮・李瓶児・春梅の名前を取ったものです。
 李瓶児は亡く、春梅は出番が少なく、潘金蓮だけが、圧倒的な存在感です。

 さいごに。(UNO)

 UNOを買ってきたので、時々家族3人でやっています。
 UNOは、子供でもすぐにルールを覚えられるところがいいですね。


ウノ UNO カードゲーム B7696

ウノ UNO カードゲーム B7696

  • 出版社/メーカー: マテル(MATTEL)
  • メディア: おもちゃ&ホビー



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金瓶梅2 [中世文学]

 「金瓶梅2」 蘭陵笑笑生作 村上知行訳 (ちくま文庫)


 悪徳の限りを尽くす富豪の「西門慶」を中心に、腐敗した社会を描いた小説です。
 ちくま文庫から村上知行による抄訳が出ていました。オススメですが絶版です。


金瓶梅〈1〉奸婦潘金蓮 (ちくま文庫)

金瓶梅〈1〉奸婦潘金蓮 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 文庫



 「金瓶梅」は、北宋末期、1112年から1127年までの15年間が描かれています。
 この間に、西門慶が情欲の限りを尽くし、最後には死んでしまうらしい。

 しかし、第2巻の時点では、西門慶(せいもんけい)は絶好調です。
 李瓶児(りへいじ)を第六夫人とし、6人の夫人がそろいしました。

 西門慶は、さらに蕙蓮(けいれん)にも御執心です。
 蕙蓮は、使用人の来旺(らいおう)の妻で、気が利いて美しい女です。

 なんとかして、蕙蓮を我がものにしたい。西門慶が考え付いた手段は・・・
 今後も、蕙蓮をずっとそばに置いておきたい。 西門慶がとった計略は・・・

 西門慶は自分の欲望のために、平気で人を陥れ、破滅させてしまいます。
 そして、その裏にはいつも、潘金蓮(はんきんれん)の姿が見え隠れします。

 女の魅力で人を操り、他人を不幸にして喜ぶ。そして自分は決して表に出ない。
 こういう女が、最もタチが悪い。

 また西門慶は、潘金蓮ら女たちに言われるがままに行動しています。
 こういう男が、一番しょうもない。

 「九尾の狐がのさばりかえり、ばかとのさまをだまくらかして勝手放題、仕放題。」
 「世の中の仕組みは複雑、怪奇、そして愚劣なものである。」

 さて、「金瓶梅」は、1582年から1602年には、写本が伝わっていたそうです。
 書かれたのはおそらく16世紀の終わり頃なので、中世文学に分類しておきます。

 これほど有名な作品でありながら、作者について、ほとんど分かっていません。
 発禁処分を受けた猥書です。処分をおそれて、作者は名前を隠したようです。

 「金瓶梅」は、作者について、内容について、世界中で研究がされています。
 その研究を「金学」というのだそうです。(土屋英明「中国艶本大全」より)

 土屋英明が同書で説明している「西門慶の七つ道具」も、金学の一端か。
 私的には、男たちが纏足の小さな足に欲情する場面などが、興味深かったです。


中国艶本大全 (文春新書)

中国艶本大全 (文春新書)

  • 作者: 土屋 英明
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/06/20
  • メディア: 新書



 さいごに。(現状認識)

 右ひざを治すために、最近リハビリを始めました。
 先生に、片足で30秒立っているように言われて、衝撃を受けました。

 30秒も立っていられないのです。10秒でフラフラして倒れてしまうのです。
 若い頃、片足立ちなど屁でもなかった。それが、今では・・・

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