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西行物語 [日本の古典文学]

 「西行物語」 桑原博史訳注 (講談社学術文庫)


 生前から伝説的存在だった西行の、生涯と和歌について記した伝記物語です。
 説話や歌集をふまえて、鎌倉時代中期(十三世紀なかば)に成立しました。


西行物語 (講談社学術文庫)

西行物語 (講談社学術文庫)

  • 作者: 桑原 博史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1981/04/08
  • メディア: 文庫



 平安時代の終わり頃、鳥羽院の御時に、藤原憲清という武士がいました。
 あらゆる芸能に通じ、特に和歌の才に優れ、院から深く愛されていました。

 ところが親友の佐藤憲康が急死して、出家への思いがいっきに募りました。
 「年月をいかでわが身に送りけむ昨日見し人今日はなき世に」

 そして、幼い愛娘への執着を断ち切るため、娘を縁側から蹴落とし・・・
 憲清は西山の聖のもとで出家し、西行と名付けられ て・・・

 西行の一代記ですが、和歌が多いため、歌物語のような印象がありました。
 私は読みながら、「伊勢物語」を思い出すことが多かったです。

 特に東国の旅の場面は、「伊勢物語」の東下りと重なって興味深いです。
 「風になびく富士の煙の空に消えて行方も知らぬわが思ひかな」

 個人的に、さらに興味深いのは、実方中将の墓を訪れる場面です。
 「朽ちもせぬその名ばかりをとどめ置きて枯れ野の薄形見にぞ見る」

 のちに、実方の墓の薄(ススキ)を、形見のススキと呼ぶようになります。
 この500年後、松尾芭蕉も実方と西行を慕って、訪れようとしますが・・・
 「実方形見のススキ」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-01-16

 また、その最期も有名です。願っていたとおり、桜の時期に亡くなります。
 「願はくは花のもとにて春死なむその如月(きさらぎ)の望月の頃」

 西行、鳥羽院に寵愛されながらも、あえて出家し、仏門に入った男、
 放浪し、人生を和歌に捧げた男。彼が愛され続ける理由が分かります。

 その一方で、西行のわがままで自分勝手なところも、垣間見えます。
 たとえば、4歳の娘を縁側から蹴落とす(!)場面。これはひどい。

 西行は自分のエゴのために、家族を犠牲にしたとしか思えません。
 このエピソードは嘘であってほしい。

  西行は伝説的な存在だったため、「西行物語」にも虚構が混ざっています。
 本書の「鑑賞」において、実際の西行像が示されていて、参考になります。

 さて、西行関係の本で最も読みやすかったのが、白洲正子の「西行」です。
 西行の全体像をつかみたかったら、この本がオススメです。


西行 (新潮文庫)

西行 (新潮文庫)

  • 作者: 白洲 正子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1996/05/29
  • メディア: 文庫



 さいごに。(バッカスとラミー)

 ロッテのチョコレート、「バッカス」と「ラミー」がおいしいです。
 「バッカス」はコニャック入り、「ラミー」はラムレーズン入りです。

 近くのスーパーで売り出す時は、必ず買いに行きます。
 冬季限定なので、もうすぐ無くなるはず。買いだめしておかなくては。


ロッテ バッカス 12粒入×10個

ロッテ バッカス 12粒入×10個

  • 出版社/メーカー: ロッテ
  • メディア: 食品&飲料



ロッテ ラミー 2本入×10個

ロッテ ラミー 2本入×10個

  • 出版社/メーカー: ロッテ
  • メディア: 食品&飲料



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徒然草を読む [日本の古典文学]

 「徒然草を読む」 上田三四二(みよじ) (講談社学術文庫)


 「徒然草」を、時間・世間・人間など、さまざまな観点から論じた評論です。
 「徒然草」を論じながら、上田自身の死の問題をも扱っています。


徒然草を読む (講談社学術文庫)

徒然草を読む (講談社学術文庫)

  • 作者: 上田 三四二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1986/01/07
  • メディア: 文庫



 「人生は有限である。明日をも知れぬ命である」(先途なき生)
 「だから、この一瞬一瞬を生ききろう」(ただいまの一念)

 著者は、この二つを「徒然草」の核心であると考え、読み解いています。
 それゆえ、死の問題と生の時間が、本書の中心テーマとなっています。

 「人生の終着が死であるのではない。息がはてるところが往生なのではない。
 前世後世などといふ時間の問題とは次元が違ふところに死の問題がある。(
 中略)死は生の背後に、生を包んである。死の中で衆生群類は生き存在して
 ゐる。」(P46)

 そう、死は幻想ではなく、我々のすぐ近くに、隣り合わせで存在しています。
 生きる者は皆、死を包んでいますが、同時にまた、死に包まれてもいるのです。

 「そうして、そこにおいて時間が透明化し、均質化し、あたかも時間が時間を
 忘れて凝固し凍結したように見えるのは、生が死に曝されつつ、必死に自己を
 保とうと努力しているからだ。」(P79)

 そう、死から逃れるためには、生の一瞬一瞬を永遠化しなければなりません。
 そのとき時間は限りなく純粋となり、止まっているかのように感じられます。

 この本は、「徒然草」の単なる解説書ではありません。人生の書です。
 死とは何か、生きるとはどういうことか、ということを教えてくれます。

 「人間は限定された時間のうちにあって、限定の幅の不安定さに堪えながら、
 限定された限度を生きるしかない。」(P102)

 この本を読んでいて、ひとつだけ困ったことがありました。
 それは、仕事などさっさとやめて隠遁しなくては、と思ってしまうことです。

 「徒然草」としばしば比較されるのが、鴨長明の「方丈記」です。
 「徒然草を読む」の第一章は「『方丈記』から『徒然草』へ」です。


方丈記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

方丈記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ガラケーがない)

 ガラケーが水没したので、AUの店舗に行きましたが、「無い」とのこと。
 代わりに勧められたのが、ガラホです。もちろん、料金が跳ね上がります。

 私がほしいのはガラケーで、今までの料金で使いたいのですが・・・
 知らないうちに社会は変わっていく。おじさんは、ついていけない。

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徒然草2 [日本の古典文学]

 「マンガ日本の古典17 徒然草」 バロン吉元 (中公文庫)


 「徒然草」を、後醍醐天皇に対する批判の書と捉えて、漫画化した作品です。
 絵はきれいです。また、マンガでありながら、244段全てを訳しています。


徒然草―マンガ日本の古典〈17〉 (中公文庫)

徒然草―マンガ日本の古典〈17〉 (中公文庫)

  • 作者: バロン吉元
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/08/01
  • メディア: 文庫



 兼好はかつて宮仕えをしていましたが、30歳頃になぜか出家遁世しました。
 そのころ後醍醐天皇は親政を行い、真言密教立川流が大流行していました。

 「『徒然草』は、まさに後醍醐天皇とその治世に対する批判ではないか」
 「(兼好を)後醍醐天皇と正反対のキャラクターにすれば、すべて筋が通る」

 そのような考えから、バロン吉元版「マンガ徒然草」は生まれました。
 多様な内容が、後醍醐天皇に対する批判で貫かれ、一貫したものになりました。

 特に天皇が、真言密教立川流を信奉していることが、批判の的となっています。
 立川流は、男女の性的結合を即身成仏の秘術とする、性欲肯定の思想だと言う。

 ここでの後醍醐天皇は、煩悩の塊で、邪教に身を落とした嘆かわしい人間です。
 やや偏っていますが、なるほど、そういう解釈もあるのか、と思いました。

 さて、この本で最も感心したのは、わずか270ページで全訳している点です。
 妥協して抄訳などしなかった、このマンガ家のプライドを感じました。

 たとえば同じシリーズでも、「古事記」を担当したある大御所はひどかった。
 神代の巻だけを描き、後半部分は丸ごとカット。そんなの、ありか?

 それに比べると、全訳にこだわったバロン吉元の本には、誠実さを感じます。
 「マンガ徒然草」というより、「全【絵訳】徒然草」という感じがします。

 どの段に何が書かれているかを知りたいとき、私はこの本を使います。
 絵で描かれているので、一瞬のうちにその内容を知ることができて便利です。

 さいごに。(五輪は見どころがいっぱい)

 スケート女子団体追い抜きで、日本は圧倒的な強さで金メダルを獲得しました。
 しかも五輪記録。感動しました。また高木美帆はこれで、金銀銅の3つを獲得。

 勝因は空気抵抗を最小限にする高い技術力。一糸乱れぬ滑りが注目されました。
 また、その仲間が見守る中、高木菜那はマススタートでも金。すばらしかった!

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徒然草 [日本の古典文学]

 「徒然草」 兼好法師 (岩波文庫)


 世の中の無常をテーマに、多岐にわたる内容を記した、随筆文学の傑作です。
 中学や高校で必ず学ぶ古典なので、あらゆる出版社から関連本が出ています。

 私は、岩波文庫版で読みました。信頼できる本です。
 注釈はありますが、現代語訳はありません。原文で読む人にはオススメです。


新訂 徒然草 (岩波文庫)

新訂 徒然草 (岩波文庫)

  • 作者: 吉田 兼好
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1985/01/01
  • メディア: 文庫



 「つれづれなるままに」で始まる序段、みかんの木の囲い、えのきの僧正、
 木の上で居眠りをする人、花は盛りに、仁和寺の僧、猫また、亀山殿の池、
 高名の木登り、くさめくさめ、二本の矢を持つな、丹波に出雲といふ・・・

 今さら説明は不要でしょう。誰もが一度は学ぶ古典中の古典です。
 堅苦しいイメージですが、中には面白い段もあります。

 たとえば45段。「まんが日本昔ばなし」でも取り上げられた話です。
 「えのきの僧正」と呼ばれるのが嫌で、えのきを切ってしまうと・・・

 89段もまた、面白いです。「猫また」という妖怪(化け猫)が登場します。
 夜中に家に帰ると、いきなり「猫また(?)」が襲いかかって来て・・・

 236段は有名です。丹波の出雲神社で、獅子が逆方向を向いていたのを見て、
 聖海上人が、「あなめでたや」と感激し、その理由を尋ねたら・・・

 しかし、高校時代は、素直に面白がることができませんでした。
 退屈まぎれに書いた本が、受験生を苦しめると、反感すら抱いていました。

 しかも、言ってることが説教くさくて、やたら鼻につくし。
 世のすね者にそんなこと言われたくねーよ、とか思ったりして。

 さて、私が「徒然草」を見直すきっかけとなったのは、小林秀雄の随筆です。
 「無常ということ」や「徒然草」を読んで、いっきに引き込まれたのです。

 「(心が)紛れるどころか、眼が冴えかえって、いよいよ物が見え過ぎ、
 物が解りすぎる辛さを、『怪しうこそ物狂ほしけれ』と言ったのである。」

 冴えすぎているから、わけがわからなくなる、という逆説的な解釈が面白い。
 「無常ということ」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17

 「徒然草」を時々読み直すうちに、今まで気付かなかった魅力に気づきました。
 たとえば32段や44段などの、風流を感じさせる話の魅力は、新しい発見でした。

 そして最近は、次のような、老いと死を語る一節に、惹かれるようになりました。
 これらは、人生の宝となる言葉です。何度でもかみしめて、味わいたいです。

 「刹那覚えずといへども、これを運びて止まざれば、命終ふる期、忽ちに至る。」
 「ただ今の一念、空しく過ぐる事を惜しむべし。」(どちらも108段)

 「若きにもよらず、強きにもよらず、思ひ懸けぬは死期なり。今日まで遁れ来に
 けるは、ありがたき不思議なり。暫しも世をのどかに思ひなんや。」(137段)

 「死期は序(ついで)を待たず。死は、前よりしも来らず、かねて後に迫れり。人
 皆死ある事を知りて、待つことしかも急ならざるに、覚えずして来る。」(156段)

 ところで、私は岩波文庫版で読みましたが、この本には現代語訳がありません。
 私は、現代語訳兼要約として、「マンガ日本の古典17 徒然草」を利用しました。


徒然草―マンガ日本の古典〈17〉 (中公文庫)

徒然草―マンガ日本の古典〈17〉 (中公文庫)

  • 作者: バロン吉元
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/08/01
  • メディア: 文庫



 全244段収録されている本では、角川ソフィア文庫「徒然草」が読みやすいです。
 また、ちくま学芸文庫「徒然草」は、独特な意訳がされていて味わい深いです。


新版 徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

新版 徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 兼好法師
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
  • 発売日: 2015/03/25
  • メディア: 文庫



徒然草 (ちくま学芸文庫)

徒然草 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 島内 裕子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2010/04/07
  • メディア: 文庫



 全訳にこだわらなければ、角川のビギナーズクラシックス版がオススメです。
 中野孝次の「すらすら読める徒然草」も、気になっています。


徒然草 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

徒然草 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2002/01/01
  • メディア: 文庫



すらすら読める徒然草 (講談社文庫)

すらすら読める徒然草 (講談社文庫)

  • 作者: 中野 孝次
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: 文庫



 さいごに。(羽生選手、小平選手、感動をありがとう)

 羽生結弦選手、ソチ五輪に続いての連覇、おめでとう。感動をありがとう。
 けがを克服して、気迫のこもったすばらしい演技を見せてくれました。

 小平選手、1000mの銀に続いて、500mでの金メダル、おめでとう。
 堂々たる王者のレースで、オリンピック・レコード樹立。感動しました。

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伊勢物語 [日本の古典文学]

 「ビギナーズ・クラシックス 伊勢物語」 坂口由美子編 (角川ソフィア文庫)


 在原業平らしき色好みの主人公が、元服してから死ぬまでを描いた歌物語です。
 平安時代に書かれました。全125段です。色好みの理想像を作り出しました。


伊勢物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

伊勢物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2007/12/01
  • メディア: 文庫



 昔男がいた。その男は、その歌から考えて、在原業平と見なされています。
 業平は平安時代の貴族で、色好みで歌がうまかったと、言われています。

 元服早々大人を真似て歌を送り、長年求婚していた女を盗んで鬼に取られ、
 都から出て行ったかと思うと、狩の使いで伊勢へ行き禁断の恋をして・・・

 特に第69段、伊勢の斎宮との密通事件は衝撃的です。
 それゆえ書名が「伊勢物語」となった、という説が有力視されています。

 さて、多くの人びとに愛されている伊勢物語は、様々な訳が出ています。
 では、どの本で読んだらいいか。オススメは断然、角川ソフィア文庫版です。

 最初に訳が、次に原文があります。この順番がよい。訳を読み飛ばせます。
 また、余分な注が無い代わりに、興味をそそる補足説明やコラムがあります。

 抄訳なので、125段中56段しかありませんが、ビギナーズには充分です。
 入門者用といっても、とても充実しているので、内容には満足するでしょう。

 初段の「初冠(ういこうぶり)」では、元服と垣間見の説明があります。
 第9段の「東下り」では、業平の出生と都落ちの理由の説明があります。

 第6段の「芥川」では、「今昔物語集」の話との比較があります。
 第23段の「筒井筒」では、「大和物語」の話との比較があります。

 そしてもちろん、第69段の「伊勢の斎宮」では、禁断の恋の説明があります。
 「恋をすればすなわち身の破滅を招く」・・・

 というように、内容はもちろん、細かいところまで、目が行き届いています。
 たとえば、各章段に付けられた小見出しが凝っていて、キラリと光ります。

 「芥河はかなき女(ひと)は露と消え」とか、「隅田河問えど答えぬ都鳥」とか、
 「斎宮は忍び行けども夢うつつ」とか。思わず読みたくなるタイトルばかり。

 本当に丁寧に作られた本です。「伊勢物語」に対する愛を感じます。
 最後に、現代語訳「江勢物語」(清水義範作)の紹介まであったりして。

 さて、さらに読みたくなったら、俵万智の「恋する伊勢物語」がオススメです。
 面白く、分かりやすく紹介しています。「伊勢の斎宮物語」の部分は必読です。


恋する伊勢物語 (ちくま文庫)

恋する伊勢物語 (ちくま文庫)

  • 作者: 俵 万智
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1995/09/01
  • メディア: 文庫



 そして、全訳が読みたくなったら、「新版伊勢物語」があります。
 ビギナーズ・クラシックスと同じ角川ソフィア文庫から出ています。


伊勢物語―付現代語訳 (角川ソフィア文庫 (SP5))

伊勢物語―付現代語訳 (角川ソフィア文庫 (SP5))

  • 作者: 石田 穣二
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 1979/11/01
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ホワイト・ガトーショコラ)

 今年のバレンタインデーも、娘は友チョコ作りに忙しそうでした。
 ホワイトチョコで、ガトーショコラを作り、私にもくれました。余りを。
 でも、とてもおいしかったです。もっと食べたかった!

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萬葉集釋注 [日本の古典文学]

 「萬葉集 釋注」 伊藤博(はく) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)


 萬葉歌を歌群としてとらえて注釈し、物語として読まれることを狙った解説書です。
 田辺聖子に「萬葉時代小説でも読むよう」と評され、多くのファンを持つ名著です。

 集英社文庫から全10巻セット11,315円で出ています。高いって? とんでもない!
 以前、全巻約10万円の豪華本で出ていたことを考えると、むしろお買い得ですよ。


萬葉集釋注〈1〉巻第一・巻第二 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

萬葉集釋注〈1〉巻第一・巻第二 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

  • 作者: 伊藤 博
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/09/01
  • メディア: 文庫



萬葉集釋注 文庫版 全10巻完結セット (集英社文庫ヘリテージ)

萬葉集釋注 文庫版 全10巻完結セット (集英社文庫ヘリテージ)

  • 作者: 伊藤 博
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/02/01
  • メディア: 文庫



 「万葉集」を全巻通して読むのなら、伊藤博の「萬葉集 釋注」がオススメです。
 その理由は、なんといっても、読んでいて楽しいからです。面白いからです。

 歌を1首ずつばらばらに解説するのではなく、歌群のまとまりで解説しています。
 すると、歌と歌が有機的につながり、その歌が歌われた状況が浮かび上がります。

 私が読んだのは最初の二巻のみです。2005年に文庫化された直後に買いました。
 この二巻は「万葉集」巻一~巻四を収録。私の大好きな歌人たちが登場します。

 額田王と大海人皇子、大津皇子と大伯皇女、有間皇子、大伴旅人、柿本人麻呂・・・ 
 彼らの歌のやりとりが、まるで目の前で繰り広げられているかのようです。

 「万葉集」巻一の圧巻は、天武天皇と持統天皇の歌群(25歌~39歌)でしょうか。
 兄弟の乖離、大海人の吉野入り、壬申の乱、天武即位、持統即位、吉野行幸・・・

 「万葉集」巻二の圧巻は、大津皇子(105歌~109歌・163歌~16 6歌)でしょうか。
 大津の伊勢下向、大津と大伯、草壁の存在、謀反の発覚、刑死、二上山葬送・・・

 いずれも、実在した主人公の歌を中心に展開する「萬葉時代小説」です。
 ぞくぞくするくらい臨場感があって、面白いです。

 ただし、その分、良くも悪くも、伊藤博の個性が出てしまっています。
 これはもう、ただの「万葉集」ではなく、伊藤博の作品になっています。

 さて、もう少し伊藤博色を抑えた、オーソドックスな「万葉集」があります。
 角川ソフィア文庫の「万葉集」(全5巻)です。普通に読みたい人にオススメです。


新版 万葉集 一 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

新版 万葉集 一 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2009/11/25
  • メディア: 文庫



 さいごに。(3キロを18分)

 先日、陸上仲間5人で、駅伝大会に出ました。地元の小さな大会です。
 1人わずか3キロ。その3キロを、私は18分もかかってしまいました。

 1区が11分、2区が12分、そして3区の私でレースをぶち壊してしまった。
 でもその後の新年会は、楽しく飲みました。大会は飲むための口実なので。

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万葉集歌 [日本の古典文学]

 「万葉秀歌」 斎藤茂吉 (岩波新書)


 約4500首の「万葉集」から、約400首の秀歌を選び、簡潔な解説を加えた入門書です。
 著者の斎藤茂吉は、「万葉集」に傾倒し、その精神をふまえて歌風を確立しました。

 斎藤茂吉「万葉秀歌」上下二巻は、なんと1938年の岩波新書創刊時に出されました。
 そして現在も増刷され続けている驚異的な本です。手元の本は、2006年の第96刷!


万葉秀歌〈上巻〉 (岩波新書)

万葉秀歌〈上巻〉 (岩波新書)

  • 作者: 斎藤 茂吉
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1968/11/20
  • メディア: 新書



万葉秀歌〈下巻〉 (岩波新書)

万葉秀歌〈下巻〉 (岩波新書)

  • 作者: 斎藤 茂吉
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1968/11/20
  • メディア: 新書



 「万葉集」は約1300年前の奈良時代に成立した、日本最古の和歌集です。
 大伴家持が編集したもと言われています。全20巻、約4500首が収録されています。

 では、この「万葉集」をどの本で読むべきか。やはり全集で読むべきだろうか?
 そういえば私はかつて、万葉集のマイ・ブームの時に、全集に挑戦しました。

 当時は、小学館の新編日本古典文学全集という、5000円近くする本で読みました。
 「萬葉集」は4冊あったので、2万円近くお金をつぎ込んだことになります。

 あの頃は20代の独身時代。好きなことにはいくらでも、お金も時間もかけました。
 それなのに読み通せませんでした。3巻と4巻は新品同様で眠ったままです。

 これらの本は押入れで保存しています。場所を取るので本棚には置いていません。
 私が最近「万葉集」を読み返す時に使ったのは、本書「万葉秀歌」上下二巻です。

 刊行から80年。「万葉集入門として本書の右に出るものはいまだない。」と言う。
 この本の紹介文が、気合が入っていてなかなか良いです。

 「雄渾(ゆうこん)おおらかな古代の日本人の心にふれることにより、われわれは
 失われたものを取り戻す。」(!!)

 実はしかし、私が何より惹かれたポイントは、400首という収録数です。
 やはりこのぐらいが手ごろでしょう。新書2冊分というのもちょうどいい。

 ところがそのために、長歌を切り捨てるという思い切った方針をとりました。
 だから、柿本人麻呂の石見相聞歌も、山上憶良の貧窮問答歌も入っていません。

 そこを割り切ることができるのなら、斎藤茂吉の「万葉秀歌」は オススメです。
 簡潔にして的を射た解説と、薀蓄がさりげなく盛り込まれている点はサスガです。

 たとえば人麻呂の「ささの葉はみ山もさやに乱れども吾は妹おもふ別れ来ぬれば」
 3句目「乱れども」を「さやげども」ではなく「みだれども」と読んでいます。

 そして、「サ音とミ音と両方で調子を取っているのだ」と指摘します。
 なるほど。私は「さやげども」派ですが、思わず納得させられてしまいました。

 さて、類書で気になるのが、中西進の「万葉の秀歌」(ちくま学芸文庫)です。
 以前、講談社現代新書で出ていたものの文庫化です。収録数は252首。手ごろです。


万葉の秀歌 (ちくま学芸文庫)

万葉の秀歌 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 中西 進
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/07/01
  • メディア: 文庫



 なんといっても「万葉集」本の頂点は、伊藤博の「萬葉集釋注」全10巻でしょう。
 まだ最初の2巻しか読んでいません。全巻読み通すのは老後の楽しみです。


萬葉集釋注〈1〉巻第一・巻第二 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

萬葉集釋注〈1〉巻第一・巻第二 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

  • 作者: 伊藤 博
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/09/01
  • メディア: 文庫



萬葉集釋注 文庫版 全10巻完結セット (集英社文庫ヘリテージ)

萬葉集釋注 文庫版 全10巻完結セット (集英社文庫ヘリテージ)

  • 作者: 伊藤 博
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/02/01
  • メディア: 文庫



 著者である斎藤茂吉の代表作は、処女詩集の「赤光(しゃっこう)」でしょう。
 有名な「死にたまふ母」などが収録されています。


赤光 (新潮文庫)

赤光 (新潮文庫)

  • 作者: 斎藤 茂吉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/02/29
  • メディア: 文庫



 さいごに。(まだ3日目)

 沖縄のアルバム作りを、毎日少しずつ進めていますが、まだ旅行3日目です。
 3日目の夕食は、テビチ(豚足)、ミミガー(豚耳)、ラフテー(三枚肉)。 

 旅行で食べたものは、意外と思い出になるので、必ず記録を残しています。
 余計な心配だが、自動アルバム作成では、こういう写真は弾かれるのでは?

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万葉の人びと [日本の古典文学]

 「万葉の人びと」 犬養孝 (新潮文庫)


 万葉時代の人びとを中心に、万葉集の名歌を易しく解説したエッセイです。
 昭和48年にNHKで放送された原稿で、語り口がとても親しみやすいです。

 かつて新潮文庫から出ていましたが、現在は残念ながら絶版です。
 私の手元にある本は、平成元年の22刷で、ぼろぼろになってしまいました。


万葉の人びと (新潮文庫)

万葉の人びと (新潮文庫)

  • 作者: 犬養 孝
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1981/12/25
  • メディア: 文庫



 有間、額田、大海人、大津、持統、人麻呂、黒人、赤人、旅人、憶良、家持。
 万葉時代を代表する歌人たちにスポットを当てて、その歌の魅力に迫ります。

 有名どころは全て網羅していますが、中でも私のお気に入りは有間皇子です。
 いかにして謀反は仕組まれ、いかにして有間皇子ははめられたか?

 「磐代(いわしろ)の浜松が枝を引き結び真幸(まさき)くあらばまた還り見む」
 悲劇の背景を知っているからこそ、この歌は痛切に響きます。

 有間皇子と並んで痛ましいのが、大津皇子の悲劇です。
 「百(もも)伝ふ磐余(いわれ)の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ」

 大津皇子が葬られたと言われる二上山は、若い頃に登る機会がありました。
 山頂の大津皇子の墓にお参りして、胸がいっぱいになったのを思い出します。

 社会人3年目頃、私は「万葉の人びと」によって、万葉集にのめりこみました。
 この本を持って、万葉の人びとを探すかのように、奈良を歩き回りました。

 当時、ユースホステルで知り合った人が、二上山登山を勧めてくれたのです。
 「二上山はそのうち国で管理されるから、登れるのは今のうちだけだよ」と。

 しかし現在でも、何の不都合もなく、二上山登山はできるようです。
 騙された? とんでもない! 登るよう仕向けてくれたことに感謝しています。

 あのとき登らなかったら、登るチャンスは永遠に来なかったかもしれません。
 今となっては、自分だけで奈良へ出かけるなんて、とてもできませんから。

 さて、著者の犬養孝は、万葉集の魅力を多くの人々に伝えてくれました。
 万葉集を愛し、その歌を、独特の節回しで歌うことでも知られています。

 では、どんな節回しなのか? なんと、ユーチューブで聞くことができました。
 故・犬養孝(1998年没)の節回しと語り口調が聞けて、涙・涙・涙。



 万葉集の歌を、その時代の中へ置き、その風土の中へ置いて解釈する。
 この音声を聞くと、そういう犬養孝のこだわりが、よく分かります。

 著者の類書に、「万葉十二ヶ月」や「万葉のいぶき」などもあります。
 これら「犬養万葉三部作」は、昔も今も私の愛読書です。(現在絶版)


万葉十二ヵ月 (新潮文庫)

万葉十二ヵ月 (新潮文庫)

  • 作者: 犬養 孝
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1986/07
  • メディア: 文庫



万葉のいぶき (新潮文庫)

万葉のいぶき (新潮文庫)

  • 作者: 犬養 孝
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1983/06/25
  • メディア: 文庫



 またこの3冊を持って、自由気ままに旅をしたいなあ・・・
 犬養孝の言うように、その風土の中で、万葉集を味わいたいです。

 さいごに。(アルバム作り)

 沖縄旅行から帰って、はや10日。沖縄旅行はもう終わった? いいえ!
 毎日少しずつ写真の整理をして、沖縄旅行を楽しみ続けています。

 現在は、コンピュータで、機械まかせでアルバムが作れるという。
 なんともったいない! 自分でやるからこそ、アルバム作りは楽しいのに。

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竹取物語 [日本の古典文学]

 「ひかりナビで読む 竹取物語」 大塚ひかり (文春文庫)
 「ビギナーズ・クラシックス 竹取物語(全)」 (角川ソフィア文庫)


 竹から生まれたかぐや姫が、人間界で育ったのち、月へ帰るまでの物語です。
 9世紀後半から10世紀前半に成立した、日本最古の物語です。作者は未詳。


ひかりナビで読む 竹取物語 (文春文庫)

ひかりナビで読む 竹取物語 (文春文庫)

  • 作者: 大塚 ひかり
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/12/04
  • メディア: 文庫



 「ひかりナビで読む 竹取物語」は、「原文の味とリズムを生かした逐語訳」です。
 テンポが良くてとても分かりやすく、読んでいて楽しくなってくるような名訳です。

 この本の最大の特徴は、時々「ひかりナビ」で訳文を補足説明しているところです。
 古語について、登場人物のモデル、駄洒落の意味、時代背景等がよく分かります。

 「解説」もまた興味深いです。たとえば、翁とかぐや姫の間にある性的な匂い・・・
 羽衣伝説が原話だったとすると、翁とかぐや姫は夫婦だった(?)・・・

 ただし、原文は収録されていません。
 「竹取物語」の訳だけ読みたいのなら、「ひかりナビで読む」がオススメです。


竹取物語(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

竹取物語(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2001/09/01
  • メディア: 文庫



 「ビギナーズ・クラシックス 竹取物語」は、訳・原文・解説・コラムがあり、
 充実しています。「竹取物語」について深く知りたいのなら、こちらがオススメ。

 解説は、「ひかりナビ」以上にマニアックです。どちらかというと通好みです。
 冒頭から、竹の神秘性や、竹取の翁と神霊の関わりなど、興味深い解説です。

 さらにコラムでは、竹の空洞は異界と人間界を結ぶ非日常の交通路であるとか、
 かぐや姫は竹の空洞を通って人間界に来た聖女だとか、民俗学的考察がすごい。

 原文は短いですが、解説とコラムで倍以上に膨らみ、おなかいっぱいになります。
 読後は、知識欲が満たされて、とても充実した気分を味わうことができます。

 「竹取物語」は、様々な文庫から、たくさんの訳が出ています。
 その中で1冊だけ選ぶなら、「ビギナーズ・クラシックス」版がオススメです。


竹取物語 (角川文庫)

竹取物語 (角川文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/07/25
  • メディア: 文庫



 数ある訳の中で捨てがたいのが、角川文庫の星新一訳。分かりやすいです。
 また、各章の最後に書かれている解説(感想?)も、味わいがあります。


かぐや姫の罪 (新人物文庫)

かぐや姫の罪 (新人物文庫)

  • 作者: 三橋 健
  • 出版社/メーカー: 中経出版
  • 発売日: 2013/08/08
  • メディア: 文庫



 「竹取物語」の謎解きに興味を持ったら、「かぐや姫の罪」がオススメです。
 訳はバッサリと省略されているので、あくまで副読本として利用したいです。

 「第二章 謎解き『竹取物語』」、「第三章 消えたかぐや姫前世譚」、
 「第四章 かぐや姫が犯した罪の意味」など、興味深い内容ばかりです。

 特に、かぐや姫の前世譚を二つ紹介した第三章は、他では読めない内容です。
 神道的な視点から、かぐや姫の前世と罪について考察していて、すばらしい。

 ところで、平安時代に成立した「竹取物語」は、日本の中古文学になります。
 しかし、世界文学史的には「古事記」「日本書紀」同様「中世文学」でしょう。

 「竹取物語」はのちに、「源氏物語」などの長編物語につながっていきます。
 小品ではありますが、日本の物語文学の出発点として、記念碑的作品です。

 さいごに。(ようやくカエル組へ)

 水泳の授業で、クロール25メートル泳げて、娘はカエル組に昇格しました。
 しかし水泳はこれでおしまい。マグロ組以外は夏休みに水泳教室があるとのこと。

 平泳ぎなら50メートル泳げるというのに。
 落ち込んでいると思いきや、本人は意外にも水泳教室を楽しみにしているようです。

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古事記2 [日本の古典文学]

 「現代語 古事記」 竹田恒泰 (学研M文庫)


 「古事記」は、神代から推古朝までの神話や出来事を記した、日本最古の史書です。
 竹田によると、日本人の自然観・死生観・歴史観と大和心が分かる書物だそうです。

 竹田訳は「古事記」の数ある訳の中で、最も新しくて分かりやすいという評判です。
 角川文庫から二分冊で出ましたが、現在は絶版です。ポケット版は手に入ります。


現代語古事記: 神々の物語 (学研M文庫)

現代語古事記: 神々の物語 (学研M文庫)

  • 作者: 竹田 恒泰
  • 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
  • 発売日: 2013/07/09
  • メディア: 文庫



現代語古事記 ポケット版

現代語古事記 ポケット版

  • 作者: 竹田 恒泰
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2016/06/14
  • メディア: 単行本



 「『古事記』を楽しんで読むための最大の骨は、神様と人の名が出てきたらすぐに
 『忘れること』です。」(P3・はじめに)

 と、冒頭からいきなり、古事記をよむための驚くべきコツが、伝授されます。
 この竹田訳は、今までにない読み方を、我々に教えてくれました。

 本文では神名を、太字のものと太字でないものに、区別して表記しています。
 太字でないものはどんどん忘れていくことで、物語がすっきりと整理されます。

 しかし、本書の最大の工夫は、本文の区切りごとに解説が入っていることです。
 竹田によるこの解説が、実に興味深くて、我々を古事記の世界に引き込みます。

 伊耶那岐神(いざなきのかみ)の黄泉国下りでは、「黄泉国」の解説があります。
 黄泉国(よみのくに)とは何か? それは埋葬地か? それとも死後の世界か?

 そして須佐之男(すさのお)のところで、再び「黄泉国」について触れます。
 根之堅洲国(ねのかたすくに)とは何か? それは黄泉国とどう違うのか?

 読んでいて、古代の人々の精神に触れているようで、とてもワクワクしてきます。
 特に、神々の国生みから天孫降臨までの展開が、ドラマティックで面白いです。

 古事記を読み返すたびに、お気に入りのエピソードを見つけ(再発見し)ます。
 大物主神(おおものぬしのかみ)が、乙女に一目ぼれした逸話はサイコーです。

 大物主神は、赤く塗った矢に化けて、乙女がクソをする時、そのかわやへ・・・
 大らかな物語をそのまま語るところに、「神々の物語」の魅力があります。

 続巻の「天皇の物語」では、大和朝廷が全国を統一する過程が描かれています。
 「神々の物語」ほどの壮大さは無くなりますが、多くの興味深い逸話があります。

 倭建命(やまとたけるのみこと)の冒険の物語は、この巻の白眉です。
 ほか、神功皇后、応神天皇、雄略天皇、仁徳天皇などが登場します。

 たとえば雄略天皇に見初められた童女のエピソードは、とても印象に残ります。
 もう少し大人になったら宮中に迎えようと言われ、いつのまにか80年がたち・・・

 さて、「天皇の物語」になると急に和歌が多くなり、物語が停滞しがちです。
 だから、神名・人名同様、和歌が出てきたら読み飛ばすことをオススメします!

 和歌を読み飛ばすと、「天皇の物語」編で読むべきページは半減します。
 「天皇の物語」は買わないという選択ができるのが、二分冊の利点だったのだが。

 三浦 佑之の「口語訳 古事記」もオススメです。
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-05-17

 さいごに。(いまだメダカ組を脱出できず)

 娘の小学校では、水泳の時間、メダカ組、カエル組、マグロ組に分かれています。
 クロールで25m泳げるとカエル組へ、平泳ぎで25m泳げるとマグロ組へ進みます。

 うちの娘は平泳ぎで50m泳げるのに、クロールが苦手なため、いまだにメダカ組。
 先日の進級テストでも、疲れていたため25m泳げず、カエル組に進めませんでした。
 親としてはそういうことに、ヤキモキしてしまう。たいしたことでもないのに。

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