SSブログ

虚栄の市(四) [19世紀イギリス文学]

 「虚栄の市(四)」 サッカリー作 中島賢二訳 (新潮文庫)


 全四冊の四冊目です。ドビンの一途で純粋な愛に、決着がつきます。

 12年ぶりに戻ってきたドビンは、愛するアミーリアと、幸せな一時期を過ごします。
 しかし、レベッカをセドリ家に迎えたことで大げんかになり、ドビンは去っていく。
 離れ離れになった二人を、結びつけたのは、意外にも・・・

 「虚栄の市(四)」は、現在、岩波文庫で、辛うじて読むことができます。

虚栄の市〈4〉 (岩波文庫)
 全四冊ですが、(一)と(三)が品切れです。
 (四)も、いつ無くなるか分かりません。

 訳は読みやすく、挿絵も豊富で、楽しい本です。
 (四)には、訳者による解説も付いています。



 以前書きましたが、この小説の(三)を、私は買い損なったのです。
 突然、(一)と(三)が、品切れとなって、手に入らないのです。

 書店で(四)だけ購入しました。
 図書館で(三)を読んだ後、(四)を読む予定だったのですが…

 「ちょっとだけ」とスケベ心が出て、パラパラ見たら、もう止まりません。
 「もうちょっと、もうちょっと」と思ううちに、すっかり物語に入り込みました。

 なんと、アミーリアは未亡人になっていて、すでに12年がたっています。
 なぜか、ドビンは、アミーリアから遠く離れた所にいます。

 第58章の、ドビンとアミーリアの12年ぶりの再会から、目が離せません。

 相変わらず、アミーリアを陰で支えるドビンは、いい年になっています。
 相変わらず、ドビンの気持ちに応えないアミーリアは、すでに30歳です。

 「そろそろ二人もゴールインか」と、考えながら読み進めますが…
 しかし二人は、レベッカをセドリ家に迎えたことをきっかけに、大げんか。

 ずっとアミーリアに従順だったドビンが、意を決して去って行きます。
 この時のドビンのセリフは、ちょっと良いです。

 「ぼくが、あなたの愛の残り滓のために、自分の真実と情熱のすべてを
  安売りするおめでたい馬鹿者であることもわかっていました。
  でも、こんなことはもうやめにします。もう引っ込みます。」(P333)

 この言葉に感じ入ったのは、アミーリアだけではありません。
 レベッカもその一人でした。
 自分とドビンが敵対していることも忘れ、ドビンを「気高い男」だと認めます。

 レベッカは、ドビンの一途な愛を成就させたいと考えます。
 彼女はただの悪女ではありません。そして、運命の最終章へ。

 「心は寛(ひろ)く、変わらぬ真実を貫くのみか、
  その持ち前の誠実さを絶えず向上させ、
  卑しき思いとは一切無縁の質朴そのものの清らかな心で、
  高きにも低きにも隔てない男らしい同情を持って
  世間に正面から向かい合うことのできる人」(P215)

 作者はドビンについて、このように書いています。
 ああ、このような男に、私もなりたい。

 ドビン以外の主要な登場人物は、遺産によって人生を左右されています。
 アミーリアの夫も、レベッカの夫も、遺産をもらい損ねました。
 そして、人生が大きく変わってしまいました。

 やがて話が巡り巡って、アミーリアの子供も、レベッカの子供も、
 遺産を受け継ぐことになって、人生が明るく開けてくるのです。

 当時の上流イギリス人にとって、遺産は、重要な関心事だったのでしょう。
 そういえば、ディケンズには、「大いなる遺産」という小説があります。
 さっそく私は、書店で上下巻とも購入しました。これから読み始めます。 

 さいごに。

 昨夜は2ヶ月ぶりに、職場の飲み会に参加しました。
 生ビール2杯だけだったのに、今、頭がズキズキしています。

 それでも、今の職場になってからは、無理に飲ませられたりしません。 
 時代の流れでしょうか。それとも、私が年を取ったからでしょうか。
 いずれにしても、飲めない人間にとっては、ありがたいことです。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。