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寄宿生テルレスの混乱 [20世紀ドイツ文学]

 「寄宿生テルレスの混乱」 ムージル作 丘沢静也訳 (古典新訳文庫)


 全寮制の男子校を舞台にした、思春期の少年たちのいじめと同性愛を描いた小説です。
 「特性のない男」のムージルの処女作です。映画化もされました。

 現在、古典新訳文庫から出ています。とても分かりやすい訳です。
 ドイツの初版本にならって、章立てをしているところが良いです。


寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)

寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ローベルト ムージル
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/09/09
  • メディア: 文庫



 宮廷顧問官の息子テルレスは、全寮制の男子校で学んでいます。
 時々自己が引き裂かれるような、思春期特有の混乱を抱えています。

 あるとき、友人のひとりバニーニが、盗みを働きました。
 それをネタに、バイネベルクとライティングが、バジーニをいじめ始めました。

 そのいじめは陰湿で、そして性的な衝動と紙一重です。
 テルレスは、彼らから一歩距離を置いていましたが、しかし、あるとき・・・

 テルレスは、自分の中に起こったひずみを、絶えず意識しています。
 それを克服しようとしますが、もがけばもがくほど混乱に陥ります。 

 そして、最後までテルレスの混乱は混乱のまま。
 混乱を抱えたまま、静かに物語は終わります。

 「ある種のものが存在していて、それは、いわば二重の形で、われわれの人生に
 介入するよう定められています。」(P308)
 「ものごとは第二の、秘密の、ひっそりとした生を生きているのだ!」(P314)

 さて、訳者はこの作品を、今流行のボーイズ・ラブの古典だとも言っています。
 確かにそういう要素はありますが、そういう興味で読むのはいかがなものか。

 私的には、あまり再読したくない本です。
 寄宿学校という閉鎖的な空間で、欲求不満の少年たちがいかに屈折することか!

 とはいえ、ムージルの作品をひとつ読むのなら、これでしょう。
 傑作「特性のない男」は、長いし読みにくいし未完だし。文庫化もされていないし。


ムージル著作集 第1巻 特性のない男 1

ムージル著作集 第1巻 特性のない男 1

  • 作者: R. ムージル
  • 出版社/メーカー: 松籟社
  • 発売日: 1992/07
  • メディア: 単行本



 映画「テルレスの青春」は、カンヌで国際批評家賞を取ったほどの名作だそうです。
 が、いじめられっ子バジーニが、ジャガイモみたいなブ少年で、興をそがれるとか。

 さて、ムージルは雑誌編集者だった頃、無名のカフカに寄稿を依頼したそうです。
 送られた原稿は「変身」(!) しかし字数の関係で、掲載できなかったとのこと。
 「変身」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29 

 さいごに。(今度は新型?)

 娘の小学校では、インフルエンザの影響で、まだ学級閉鎖のクラスがあります。
 娘はA型にもB型にも感染しましたが、今度は新型が出始めたとか。やれやれ。

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