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西部戦線異状なし [20世紀ドイツ文学]

 「西部戦線異状なし」 レマルク作 秦(はた)豊吉訳 (新潮文庫)


 第一次大戦の西部戦線において、ドイツ青年兵が戦死するまでを描いた作品です。
 1929年に出て世界的ベストセラーとなり、翌年映画化されて評判になりました。

 現在、新潮文庫で読むことができます。初版は1955年で、訳はもう少し古いもの。
 古いわりに、分かりやすい訳です。2007年に改版されて、活字は読みやすいです。


西部戦線異状なし (新潮文庫)

西部戦線異状なし (新潮文庫)

  • 作者: レマルク
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1955/09/27
  • メディア: 文庫



 ある日学校の先生に引率されて、ボイメルは多くの仲間と一緒に志願兵となりました。
 彼らは青春の入り口で、いきなり戦場へ投げ込まれてしまったのです。

 「僕らは十八歳であった。この世界と生活とを愛しはじめていた。
 しかるに僕らはその世界と生活とに向って鉄砲を射たなければならなかった。
 その第一発として射ちこんだ爆弾は、実は僕らの心臓に当たっているのだ。」(P127)

 塹壕戦に投入された青年たちが見た激しい戦闘。砲弾、戦車、飛行機、毒ガス、疾病。
 そして、ひとりひとりと減っていく仲間たち。

 当たり前のように、人が次々と死んでいく。戦線では異常なことばかり。
 しかし、司令部の報告は、「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」・・・

 作者レマルクもまた、教師の熱弁に従って、18歳の時旧友と一緒に志願したのです。
 そして、西部戦線の塹壕戦における激戦を体験し、負傷してしまいました。

 主人公ボイメルと違うのは、レマルクが生きて帰って、この小説を発表したこと。
 そして、この小説で戦闘の実態をおおやけにし、戦争の愚劣さと虚しさを訴えたこと。

 「僕らがここで習ったことは、四巻のショーペンハウエルよりも、よく光らしたボタン
 一個のほうが大事だということである。」(P35)

 という具合に、文体はとてもさめています。戦争が青年を、年寄りにしてしまった。
 ボイメルが言うように、この戦争を防げないとしたら、過去千年の文化は無価値です。

 ところで、「西部戦線異状なし」は、「武器よさらば」と比べられることが多いです。
 どちらも、第一次大戦を扱い、戦争に翻弄される青年を描きました。

 そして、どちらの小説も、アメリカで映画化されました。
 映画作品においては、明らかに「西部戦線」の方に、軍配が上がるのだとか。

 ところで、レマルクとヘミングウェイの、不思議な因縁を教えてくれたのは妻です。
 それは、森瑤子の「美女たちの神話」(講談社文庫・品切れ)に書かれています。

 「嘆きの天使」の女優マレーネ・ディートリッヒは、ヘミングウェイの女神でした。
 「海流のなかの島々」には、ヘミングウェイが彼女を口説く場面が描かれています。

 彼女(マレーネ)は彼(ヘミングウェイ)に、「良い人」がいるからと言って、拒みます。
 その「良い人」とは、レマルクのことらしいのです。
 そしてレマルクもまた、「凱旋門」の中で、マレーネらしい人を描いているそうです。


美女たちの神話 (講談社文庫)

美女たちの神話 (講談社文庫)

  • 作者: 森 瑶子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 文庫



凱旋門 (1955年) (新潮文庫)

凱旋門 (1955年) (新潮文庫)

  • 作者: E.M.レマルク
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1955
  • メディア: 文庫



 名作「凱旋門」もまた、品切れで読めません。(映画も有名ですよね)
 文庫での新訳を、強く強く望んでいます。

 さいごに。(花見)

 桜が満開です。家族で、近所の桜並木を歩きました。

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