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叶えられた祈り [20世紀アメリカ文学]

 「叶えられた祈り」 カポーティ作 川本三郎訳 (新潮文庫)


 上流階級に紛れ込んだ男娼が、彼らの退廃的な生活を語る作品です。
 セレブたちから激怒され、未完に終わった遺作です。

 1999年に単行本として刊行されて、現在は新潮文庫から出ています。
 訳は分かりやすくて、活字は読みやすいです。


叶えられた祈り (新潮文庫)

叶えられた祈り (新潮文庫)

  • 作者: トルーマン カポーティ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/07/28
  • メディア: 文庫



 物語を語るのは、P・B・ジョーンズ。
 孤児院で育てられ、男娼として生きた男です。

 「実際、私は一種のハーシーの板チョコみたいな安手な男娼だった----五セント
 のチョコレートがもらえるのならなんでもするといってもよかった。」(P11)

 この男は、作者カポーティの分身だといいます。
 いったいどんな話が始まるのか。ワクワクします。

 登場するのは、男娼、淫売、ゲイ、レズビアン、アル中、ヤク中、変質者・・・
 そして、様々なゴシップが、次から次に、これでもかこれでもかと続きます。

 中でも注目は、夫殺しのポプキンス夫人。仮名ですが、彼女は実在の人物。
 あとがきによると、この作品の公表後に、本人は自殺したのだそうです。

 中には実名で出ている人もいます。女優、作家、実業家、王族、大統領・・・
 読み物としてはサイコー。でも、こんなこと書かれたら、そりゃ怒るでしょう。

 初期の頃「草の竪琴」で、少年のけがれなき世界を描いたカポーティが、
 晩年に総決算として、このような汚れきった世界を描いたことは興味深い。

 未完で終わってしまったことが、本当に残念です。
 どこかに続きの原稿が存在するという噂があります。存在してほしい。

 余談ですが、夫殺しといったら、モーリヤックの「テレーズ・デスケルー」。
 講談社文芸文庫から出ています。わずか200ページほどなのに983円。


テレーズ・デスケルウ (講談社文芸文庫)

テレーズ・デスケルウ (講談社文芸文庫)

  • 作者: フランソワ・モーリアック
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/05/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(錦織)

 錦織選手は、すごかった。優勝こそ逃しましたが、全米テニスで準優勝です。
 彼は、日本のテニスプレイヤーとして、新しい歴史を作ってくれました。

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