SSブログ

悪徳の栄え [18世紀文学]

 「悪徳の栄え」 マルキ・ド・サド作 澁澤龍彦訳 (河出文庫)


 退廃的な貴族社会で悪に染まり、非道の限りを尽くすジュリエットの物語です。
 サドの代表作で、ジュスティーヌの物語「美徳の不幸」と対をなす作品です。

 河出文庫から、澁澤龍彦訳が、上下巻二分冊で出ています。
 活字が小さいですが、訳は読みやすかったです。


悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫)

悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫)

  • 作者: マルキ・ド サド
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1990/10
  • メディア: 文庫



悪徳の栄え〈下〉 (河出文庫)

悪徳の栄え〈下〉 (河出文庫)

  • 作者: マルキ・ド サド
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1990/10
  • メディア: 文庫



 ジュリエットに悪徳を教えたのは、修道院の院長デルベーヌ夫人でした。
 院長はジュリエットを禁断の世界へ導き、平然として言い放ちます。

 「この世には罪の享楽ほど楽しいものはなく、さらにこれに極悪非道を加えれば、
 それだけまた魅力が増すということを、あんたはまだ御存じないのね」(P26)

 やがて家は破産し、両親が相次いで死に、ジュリエットは修道院を出ます。
 そして、罪の享楽と極悪非道の遍歴が始まり・・・

 長い間、この作品は読まず嫌いでしたが、そのまま読まなければよかった!
 18世紀において無視できない作品ですが、そのまま無視しておけばよかった!

 おぞましい小説です。出てくるのはヘンタイばかり。
 人をいたぶることによって興奮し、クソで自分を汚すことによって快楽を味わう。

 上巻P71~P72で私は気持ち悪くなり、P101~P102で吐き気をもよおしました。
 P109~の残虐な場面で、とうとう挫折。げんなり。もう、まともに読めません。

 わいせつな場面はまだいいのですが、むごたらしい場面はいけません。
 それでも、こんな本に負けたくないと思い(アホか)、P170までがんばりました。

 この作品に比べたら、西鶴や谷崎のヘンタイ小説なんて、かわいいものです。
 こんな作品を書いたら、ナポレオンによって投獄されるのも、当然でしょう。

 一つ思ったことは、ヘンタイたちは皆、フランスの隠喩ではないかということ。
 殺人に興奮する者も、クソまみれで喜ぶ者も、当時のフランスのことではないか?

 ところで、本文の所々に一行の空きがあって、不自然に話が飛んでいました。
 不思議だったのですが、解説を読んで、抄訳であることを初めて知りました。

 原作は、この3倍の分量があるのだそうです。
 考えただけで、めまいがしてきます。

 さて、この作品の姉妹編「ジュスチーヌまたは美徳の不幸」は、岩波文庫です。
 現在、品切れ。復刊は望みません。


ジュスチーヌまたは美徳の不幸 (岩波文庫)

ジュスチーヌまたは美徳の不幸 (岩波文庫)

  • 作者: サド
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/01/16
  • メディア: 文庫



 澁澤龍彦によるサドの評伝は、評価が高いです。私は読みません。


サド侯爵の生涯 (中公文庫)

サド侯爵の生涯 (中公文庫)

  • 作者: 澁澤 龍彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1983/05
  • メディア: 文庫



 さいごに。(読まない本は買わないはずなのだが)

 毎月の書籍代を節約するために、絶対に読む本だけを買うというのが規則です。
 それなのに、スターンとサドと、6月はすでに二つの規則違反を犯しました。

 「これは違反じゃない。定年したら読むんだ」と、自分に言い聞かせていますが、
 どう考えても、サドはもう読まないでしょう。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。