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マルタの鷹 [20世紀アメリカ文学]

 「マルタの鷹」 ダシール・ハメット作 小鷹信光訳 (ハヤカワ文庫)


 私立探偵サム・スペードを中心に、謎の黒い鷹の彫像を巡る傑作長編です。
 ハンフリー・ボガード主演の同名映画も、傑作として名高いです。

 ハヤカワミステリ文庫から、小鷹氏の名訳で「改訳決定版」が出ています。
 私が読んだのは、小高訳の旧版です。


マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ダシール ハメット
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/09/07
  • メディア: 文庫



 私立探偵サム・スペードの事務所に、美しい女の依頼人がやってきました。
 依頼を受けてスペードの相棒は、その妹と駆け落ちした男を尾行しました。

 ところが相棒は撃ち殺され、尾行の相手も何者かによって射殺されました。
 二つの殺人の嫌疑は 、スペードに向けられます。

 その後スペードのもとに、カイロと名乗る男が訪問し・・・
 さらに、ガットマンなる男も接触してきて・・・

 そして、女依頼人は、実は・・・
 彼らの狙いは、謎の黒い鷹の彫像にあって・・・

 私の中でサム・スペードは、ハンフリー・ボガードです。
 この映画を見たのは20年ほど前で、ボギーのカッコよさにしびれました。

 実際、この物語の魅力は、主役のサム・スペードによるものです。
 スペイドの魅力(?)を、モームが述べた文章がとても良いです。

 「彼は破廉恥な悪党であり、冷酷なペテン師である。彼自身犯罪人にも
 等しいところがあるために、彼と彼の扱う犯罪人とは、ほとんど区別が
 つき かねる。まったくけがらわしい代物だが、みごとに描かれている。」
 (「世界文学鑑賞辞典・第一巻」佐藤和夫氏の文章から)

 私がこの小説を読んだのは、10年ほど前のことで、当時入院していました。
 淡々とした語り口と、スパスパと切り替わる場面が、とても印象的でした。

 しかし、最も強い印象を残したのは、「フリットクラフトの寓話」です。
 何不自由なく暮らしていた男が、ある時すべてを捨てて失踪してしまう・・・

 「人生なんてものは、落ちてくる鉄梁によって、無差別に終止符を打たれて
 しまうものだ。」(P100)

 突然大きな病気が見つかって、数日後に手術を控えていた私に、
 「死は突然にやってくる」という言葉が、強烈に響きました。

 ところでこの挿話は、実際にハメットが関わった事件をもとにしているという。
 映画ではカットされたこの挿話に、重要な意味を見出そうとする人は多い。

 さて、私は現在出ている「改訳決定版」を、旧版の復刊だと思っていました。
 しかし、訳者が丁寧に訳を見直したものだそうです。これは手に入れなければ。

 さいごに。(ユルブリンナー)

 職場で同僚に、「ユルブリンナーに似てるね」と言われました。
 ハンフリー・ボガードのような男になりたいと思っていたのですが。(笑)

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