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オデュッセイア2 [古代文学]

 「オデュッセイア(下)」 ホメロス作 松平千秋訳 (岩波文庫)

 (今回もネタばれが多めです)

 ギリシアの英雄オデュッセウスの、10年間の漂流から帰郷するまでの物語です。
 「イリアス」の続編で、最古期のギリシア叙事詩であり、最高傑作の一つです。

 岩波文庫から出ています。初版は1994年。比較的新しいため、読みやすいです。
 全24歌には、それぞれタイトルと梗概が補われていて、理解を助けてくれます。


ホメロス オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)

  • 作者: ホメロス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1994/09/16
  • メディア: 文庫



 オデュッセウスはパイエケス人に送られ、故郷イタケに帰ることができました。
 みすぼらしい物乞いの老人に変装して、忠僕の豚飼エウマイオスを訪ねました。

 そこへテレマコスが立ち寄り、20年ぶりに父子が再会することができました。
 オデュッセイアは息子だけに素性を明かし、ある計略を練って・・・

 冒頭では頼りなかったテレマコスが、驚くほど立派になって再登場しました。
 彼を大きく成長させたのは、父親探しの旅か、それとも父親の存在か?

 一方、妻の鑑とされるペネロペイアは、最後まで悲しいほどダメダメでした。
 彼女はただ貞淑なだけで、愛する夫を思い出しては泣き、そして眠ります。

 しかも、夫に会っても全く気付かないし、夫が名乗っても信じないし。
 本当に夫を愛していたのか? 本当はバカじゃないのか? 

 オデュッセウスが帰還するや否や、愛犬はその変装を見破って近寄りました。
 直後、安心したように死んでいくところは、ちょっといいエピソードでした。

 「イリアス」同様、この叙事詩は「死すべき宿命を担う唯の人間」の物語です。
 相変わらず、人間たちは神々に翻弄されている、みじめではかない存在です。

 人間が窮地に立つのは、落ち度によってではなく、神の怒りによってです。
 人間が窮地を脱するのは、知恵によってではなく、神の加護によってです。

 しかし、身のほどを知ったうえで全力で運命を切り開く姿に、感動があります。
 オデュッセウスをアテナイ神が支え続けるのは、彼の堅忍不抜さゆえでしょう。

 さて、「イリアス」と比べてみると、さまざまな相違点が目につきました。
 全体的に「オデュッセイア」の方が、良くも悪くも通俗的という感じでした。

 「イリアス」は、格調高い芸術的な叙事詩。
 「オデュッセイア」は、読んで楽しい娯楽的な読み物。という感じでした。

 「イリアス」で印象的だったのは戦闘の場面で、リアルで怖かったです。
 剣で脊髄を二つに切られるとか、槍で頭を突かれて脳髄が兜にあふれるとか。

 一方、「オデュッセイア」で印象的だったのは、漂流譚の怪物たちです。
 恐ろしい怪物が次々に現れましたが、空想的なのでむしろ怖くなかったです。

 二作品の内容は大きく違うので、はるか昔から偽作説がありました。
 ということが、上巻の解説に書かれてあったので、ありがたかったです。

 さいごに。(49歳)

 先日49歳になりました。いろいろな場面で歳を感じています。
 いつもこの時期、体重が65キロまで減るのですが、今年は67キロあります。

 特に、おなかまわりがゆるゆるになってきたのが気になります。
 少しずつ腹筋のトレーニングをしていますが、なかなか・・・

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