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血の婚礼 [20世紀その他文学]

 「血の婚礼」 ガルシーア・ロルカ作 牛島信明訳 (岩波文庫)


 「血の婚礼」は、婚礼の日に2人の若者が、因縁のが果たし合いをする物語です。
 ほか、「イェルマ」「ベルナルダ・アルバの家」の二つの戯曲を収録しています。

 1992年に出ました。訳が比較的新しくて、分かりやすいです。
 カバーのロルカ自身によるカットがいいです。また、全三作入っていてお得です。


三大悲劇集 血の婚礼 他二篇 (岩波文庫)

三大悲劇集 血の婚礼 他二篇 (岩波文庫)

  • 作者: ガルシーア ロルカ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1992/07/16
  • メディア: 文庫



 花むこは花嫁をとても愛していますが、その母親は花嫁に対して懐疑的でした。
 というのも、花嫁がかつてある男と恋愛関係にあったという噂があるからです。

 その男というのが、よりによって・・・両家には忘れられない過去があり・・・
 婚礼の日、花嫁は失踪して・・・そして二人の青年は因縁の対決で・・・

 最初は花婿側から描かれていたので、レオナルドを悪党だと思っていました。
 ところがしだいに、愛を語るレオナルドこそ、陰の主役だと分かってきます。

 「あんたは、時間が火傷をいやし、壁がふたをしてくれると思ってるだろうが、
 それは違う、そうじゃないんだ。人の心と体の奥底まで入り込んでしまったもの
 は、決して引き抜くことはできないのさ。」(P54)

 レオナルドは、人生を踏み外しました。しかし、彼は大事なことに気付きます。
 だから、彼の言葉は生き生きとしていて、情熱的で説得力があります。

 一方、花むこはただのお人よしです。花嫁のことを最後まで理解していません。
 そういう意味で、花むこと花嫁とレオナルドの三人は、悲劇の共犯者です。

 さて、この戯曲で大切なことを伝えるのは、なぜか物語に関係のない木こりたち。
 「血を腐らせたまま生きながらえるより、血を流して死ぬほうがはるかにましさ。」

 アンダルシア特有の、情熱のほとばしりを感じました。
 メリメの「カルメン」を思い出します。
 「カルメン」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-01-27

 次の「イェルマ」は、子どもができなくて悩む妻イェルマの苦悩を描いています。
 同時に、家に閉じ込められて生きる女性を、社会から解放することを訴えています。

 「あたしが人生から学んだ唯ひとつのことを教えてあげる。それはね、みんな好き
 でもないことをしながら、家のなかに閉じこめられているってこと。」(P163)

 なお、戯曲の所々から、子のできない原因が夫にあることが、示唆されています。
 「畑の喜びを淀ませてしまうような腐れ種しかもたらさない男たちの・・・」

 そしてここに、ゲイであるゆえに子供を持てなかったロルカ自身が重ねられます。
 つまりこの戯曲には、女性の苦悩とロルカ自身の苦悩の二つが描かれているのです。

 三つめの「ベルナルダ・アルバの家」は、ベルナルダと6人の娘たちの物語です。
 ベルナルダは60歳。長女アングスティアスは39歳、末娘アデーラは20歳です。

 ベルナルダの夫が死に、遺産の多くは長女のアングスティアスに贈られました。
 すると効果てきめん、このオールドミスの長女に、突然婚約者が現れたのです。

 婚約者は25歳の美丈夫。これをきっかけに、一家は悲劇的結末に向かっていきます。
 もちろん男の狙いは遺産で・・・彼が愛したのは・・・そしてアデーラは・・・

 さて、ロルカは20世紀スペインを代表する詩人ですが、文庫で読めませんでした。
 その三大悲劇を、このように文庫で読めるようになって、本当にありがたいです。

 さいごに。(運動会)

 昨日は娘の小学校の運動会でした。とても楽しそうにやっていました。
 ただし、もっとも気合いを入れていたクラス対抗全員リレーはビリ。

 娘が走るところでは、競り合いでなくてよかったです。
 もし相手チームに抜かれたら、また落ち込むので。

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