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生物と無生物のあいだ [理系本]

 「生物と無生物のあいだ」 福岡伸一 (講談社現代新書)


 分子生物学者が生命とは何かを考察しながら、動的平衡について解説しています。
 2007年に出るや大ベストセラーとなり、2008年第1回新書大賞に輝いた本です。


生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

  • 作者: 福岡 伸一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/18
  • メディア: 新書



 本書を終始貫いているのは、「生命とは何か」という問いです。
 生物と無生物を分けているものは、いったい何なのか?

 この問いの出発点となるのが、ウィルスです。
 「ウィルスは生物と無生物のあいだをたゆたう何者かである。」(P37)

 ウィルスは確かに自己複製を行います。しかし、生命特有の律動がありません。
 ウィルスを生物ではないと判断した著者は、改めて問います。生命とは何か?

 著者はこの問いに、「動的平衡」という概念を使って答えます。
 「生命とは、動的平衡にある流れである」(P167)と・・・

 さて、本書は「動的平衡」について分かりやすく述べられているのはもちろん、
 分子生物学の歴史や、研究者の事情や裏話なども描かれていて、とても面白い。

 エイブリー、キャリー・マリス、シュレディーガー、シェーンハイマーらは、
 愛情たっぷりに生き生きと描かれていて、彼らに会いたくなってしまいます。

 また、ポスドクの仕事や、死んだ鳥症候群など、メインでない話もまた面白い。
 ロックフェラー大学の図書館は24時間開いていると知って、感動したり・・・

 しかも、文章が良い。特に比喩を使って分かり やすくイメージさせるのがうまい。
 たとえば、次のような文章で、読者をどんどん引き込ませてくれます。(P8)

 「つまり私たち生命体の身体はプラモデルのような静的なパーツから成り立って
 いる分子機械ではなく、パーツ自体のダイナミックな流れの中に成り立っている。」

 という具合で、この本全体が、読み物としてとてもよくできています。
 著者福岡伸一は、非常に文章のセンスがある方だと思いました。

 なお、本書では、シュレディーガーがとても印象的に描かれていました。
 シュレディーがーの「生命とは何か」(岩波文庫)も読みたくなりました。


生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

  • 作者: シュレーディンガー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/05/16
  • メディア: 文庫



 福岡伸一の「もう牛を食べても安心か」(文春新書・絶版)もオススメです。
 私は「動的平衡」について、この本で初めて知ったので、本書以上に衝撃的でした。


もう牛を食べても安心か (文春新書)

もう牛を食べても安心か (文春新書)

  • 作者: 福岡 伸一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/12/01
  • メディア: 新書



 さいごに。(ディズニーの代わりにキッザニア?)

 娘の小学校の修学旅行は、ディズニーランドの代わりにキッザニアになりました。
 職業体験施設です。子供たちは失望していると思いきや、みな歓迎している様子。

 「ディズニーは家族で行くけど、キッザニアは行かないから」という理由らしい。
 うちは、ディズニーに行かせたかったです。家族でディズニーには行かないので。

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コメント 2

サンフランシスコ人

「ロックフェラー大学の図書館は24時間開いていると知って、感動したり・・・」

大学図書館ですか....私の学科の分館へは24時間行けました...
by サンフランシスコ人 (2018-04-27 06:31) 

ike-pyon

サンフランシスコ人さん、コメントをありがとうございます。
アメリカは進んでいるんですね。さすがです。
by ike-pyon (2018-04-27 06:56) 

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