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コーヒーと恋愛 [日本の近代文学]

 「コーヒーと恋愛」 獅子文六 (ちくま文庫)

 テレビで活躍中の女優モエ子と、若い女と逃げた年下の夫を巡るドタバタ劇です。
 1962年に読売新聞で連載された小説で、2013年にちくま文庫から復刊されました。


コーヒーと恋愛 (ちくま文庫)

コーヒーと恋愛 (ちくま文庫)

  • 作者: 獅子 文六
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/04/10
  • メディア: 文庫



 舞台は昭和の高度成長期です。テレビ番組が始まって10年もたってない頃です。
 主人公坂井モエ子は、43歳の人気庶民派女優で、コーヒーを淹れるのがうまい。

 モエ子は8歳年下の夫と二人で暮らしています、というか亭主を養っています。
 モエ子がテレビドラマに出演して稼いだお金が、二人の生活費となっています。

 夫の塔ノ本勉は売れない舞台装置係ですが、仕事に対するプライドだけは高い。
 モエ子の稼ぎに頼りながらも、テレビドラマを見下しているところがあります。

 夫と一緒になって8年、二人の生活は、それなりにうまくいっていました。
 ところが、丹野アンナという若い女優と、亭主が接近したことによって・・・

 今から50年以上前の新聞小説です。上品で軽快で、とても楽しく読めました。
 昭和の懐かしい香りがしますが、当時は進歩的で洒落た小説だったそうです。

 主役がテレビ女優で、亭主がヒモ男という設定も、当時は珍しかったと思います。
 また、アンナのようなアバズレ女の存在も、この小説をより魅力的にしています。

 度々コーヒーが登場し、コーヒー談義が始まる点も、新しかったのでしょう。
 今でこそコーヒーは庶民のものになりましたが、当時は珍しかったはずです。

 コーヒー通が集まる「可否会」の場面が、この小説の味付けになっています。
 彼らの語るコーヒーの蘊蓄を聞いていると、コーヒーが飲みたくなりました。

 「男ごころってのは、正月の重箱みたいに底があるものが、重なってるんだ」
 「恋愛ってものが主体であって、結婚なんて、ヤキトリのクシのようなもんだ」

 という洒落たセリフが、ポンポン出てくるところもまた、この作品の魅力です。
 しかしサイコーだったのは、奇想天外な新劇「河馬」の第三幕でした。

 暴走し人々を恐怖のどん底に突き落とす河馬の群れは、近代精神であって・・・
 富豪の令嬢が、河馬のマスクを付けた、主役の「第一の河馬」に求婚して・・・

 さて、獅子文六の初期の代表作に「悦ちゃん」があります。戦前の作品です。
 少し前にNHKのテレビドラマになって、評判になりました。気になります。


悦ちゃん (ちくま文庫)

悦ちゃん (ちくま文庫)

  • 作者: 獅子 文六
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2015/12/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(デンマーク・クローネ)

 うちの妻が、自動レジで50円玉を入れたら、何度も戻ってきてしまいました。
 不思議に思って、そのコインを確かめたら、なんとデンマーク・クローネでした。

 デンマーク・クローネは、50円玉にそっくりなのです。しかし価値は18円程度。
 いったい、いつ、どこで紛れ込んだのやら。

skagen_1klonecoin.jpg


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