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スローなブギにしてくれ [日本の現代文学]

 「スローなブギにしてくれ」 片岡義男 (角川文庫)


 バイク好きの少年と、猫好きの少女との、奇妙な共同生活を描いた短編小説です。
 1981年に角川映画として上映され、南佳孝の歌う主題歌とともにヒットしました。

 以前は、角川文庫コーナーに、片岡義男の本が30冊ほど、ずらりと並んでいました。
 しかし、現在は絶版。古本屋で真っ黒になった本を、500円で手に入れました。


スローなブギにしてくれ (角川文庫 緑 371-4)

スローなブギにしてくれ (角川文庫 緑 371-4)

  • 作者: 片岡 義男
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 1979/06/01
  • メディア: 文庫



 18歳の高校生ゴローは、学校にも行かずに、ホンダCB500を乗り回しています。
 ある日、ムスタングから猫が放り出されたのを見て、バイクで追いかけると・・・

 次にムスタングから放り出されたのは何だったか?
 猫好きの少女さち乃は、ゴローにどんなことを頼んだのか?

 今回この作品を読んで、なかなか復刊されない理由が、分かったような気がします。
 時代が変わったせいでしょうか。主人公ゴローがとてもカッコ悪い。ダサいのです。

 1m63センチの背丈に50キロを割る体重。はき古したブルージーンズ。
 ジャケットの下はミッキーマウスのTシャツ(!)、髪はポマードでオールバック。

 素行が悪くて転校したのに、学校には行かないで、オートバイに逃避しているし、
 親のカネで一人暮らし、怠惰な生活を送り、行動は自分勝手だし。ダメなガキです。

 しかし、このダメな感じが、いかにも昭和っぽくて懐かしくて、良かったです。
 当時こういう連中は「ツッパリ」と呼ばれて、肯定的にとらえられていました。

 小さい体でめいっぱい虚勢を張って、つっぱっているゴローはある意味涙ぐましい。
 「大人は分かってくれない」みたいな泣きごとを言わない点には、好感さえ持った。

 ところで、そのころ中学生だった私は、この映画を見る機会がありませんでした。
 しかし、南佳孝の歌の影響か、お洒落でカッコいい映画だと勝手に思っていました。

 映画の先入観のため、原作を初めて読んでみたら、ギャップが大きかったです。
 ネコを好かない私でさえ、あの、ネコを放り出すシーンにはドン引きしました。

 さて、他の収録作品では、「ハートブレイクなんて、へっちゃら」が印象的でした。
 女の声で「トシ坊にかわって」と、お店に何度もかかって来る電話は・・・

 「モンスター・ライド」と「青春の荒野ってやつ」は、暴走族のリーダーものです。
 「ひどい雨が降って来た」は、男二人と女一人の奇妙な同棲生活を描いた短編です。

 さて、片岡義男には、ハードボイルドもあって、なかなか評判が良いようです。
 「ミス・リグビーの幸福」は現在も手に入るので、さっそく注文してみました。


ミス・リグビーの幸福―蒼空と孤独の短篇 (ハヤカワ文庫 JA カ) (ハヤカワ文庫JA―片岡義男コレクション)

ミス・リグビーの幸福―蒼空と孤独の短篇 (ハヤカワ文庫 JA カ) (ハヤカワ文庫JA―片岡義男コレクション)

  • 作者: 片岡 義男
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/06/10
  • メディア: 文庫



 さいごに。(「彼のオートバイ、彼女の島」)

 大学生になりたての頃、友人に誘われ、jazz映画「キャバレー」を見に行きました。
 そのときついでに見た映画が、同時上映の「彼のオートバイ、彼女の島」でした。

 主役は原田知世の姉、貴和子。当時は原田知世ブームだったので、注目されました。
 原作は片岡義男。当時のライダーのバイブルだったと、最近初めて知りました。

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