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吶喊 [20世紀その他文学]

 「阿Q正伝・狂人日記」 魯迅 竹内好訳 (岩波文庫)


 「吶喊(とっかん)」は、魯迅の最初の作品集で、14の短編と自序から成っています。
 「故郷」等が教科書に載っているため、魯迅は本国よりも日本で多く読まれています。

 訳者の竹内は魯迅の有名な研究者なので、訳注がとても詳しくて参考になります。
 初版が1955年と古いため読みにくいのですが、竹内訳には根強いファンがいます。


阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊) (岩波文庫)

阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊) (岩波文庫)

  • 作者: 魯 迅
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/02
  • メディア: 文庫



 冒頭の「自序」は、自己の精神形成史を語ろうとした、半自伝的作品だそうです。
 日本の医科大学を突然退学し、小説家になった経緯が書かれていて興味深いです。

 「狂人日記」は、最初期の作品です。中国の近代文学の出発点となった名作です。
 伝統的な家族制度や儒教倫理の虚偽を、暴露することを意図していたと言います。

 しかし私は、中国を植民地化する西洋諸国への批判だと、ずっと思っていました。
 「人間を食う」というのは、中国を食いものにしていた西洋諸国のことなのでは?

 「孔乙己」は、わずか7ページですが、本好きにとっては愛すべき小品です。
 「窃書は盗みとは申せん・・・窃書はな・・・読書人のわざ」・・・(笑)

 「故郷」は魯迅の作品中最も広く読まれています。私は中学校の国語で習いました。
 30年前「ルントー」は自分にとって英雄でした。しかし、今は・・・泣けます。

 「阿Q正伝」は魯迅の最高傑作でしょう。50ページ以上あるのはこの作品だけです。
 「正伝」といっても、作者は阿Qの姓も知らなければ、出身や経歴も知りません。

 要するに阿Qは最下層の人間で、家はなく日雇いで働き、お金は酒に消えてしまう。
 そのくせプライドばかり高く、すぐに喧嘩をして常に負け続け、負け惜しみばかり。

 みんなにバカにされ、ある事件を契機に、街の人々から相手にされなくなります。
 しばらく姿を消していましたが、たいそう物持ちになって街に帰ってきて・・・

 笑える所が多いのですが、それは悲しい笑いです。笑ったあとで泣きたくなります。
 特に革命に自ら巻き込まれる結末は、うぬぼれが強いだけの無知な男の悲喜劇です。

 ほか、「吶喊」の作品はどれも重苦しく、悲しくなるような作品ばかりです。
 中国では日本ほど読まれていないらしいですが、その理由はこの暗さでしょうか。

 さて、10年ほど前に古典新訳文庫から、魯迅の読みやすい作品集が出ました。
 上記作品のほか「藤野先生」も収録されているベスト集です。魯迅の入門本です。


故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫)

故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/04/20
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(英検5級にチャレンジ)

 娘は、英検5級にチャレンジしています。時々私はリスニング問題を読みあげます。
 読むのが下手なので分かりにくいかと思いきや、「逆に分かりやすい」とのこと。

 塾で行なうリスニングテストは、「ネイティブに近いので聞き取りにくい」と言う。
 私はつっかえつっかえ読むので、かえって耳に残りやすいのだそうです。

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