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若き数学者のアメリカ [日本の現代文学]

 「若き数学者のアメリカ」 藤原正彦 (新潮文庫)


 アメリカに単身で渡り、数学研究に従事した青年の、瑞々しい異文化体験記です。
 藤原正彦はエッセイストでもあり、2005年に「国家の品格」がブームとなりました。


若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1981/06/29
  • メディア: 文庫



 1972年、「私」は数学の大家ルイス教授に誘われて、ミシガン大学に赴きました。
 言葉の壁を克服し、セミナーの発表を成功させて、少しずつなじんでいきました。

 ところが、ひとりで迎えたミシガンの冬は厳しく、ノイローゼになってしまい・・・
 医者に勧められるまま、フロリダに長期旅行に出かけ、いろんな人と出会って・・・

 特に、金髪の女子学生バフィーとの出会いが、印象的でした。
 彼女は、ヘッセの小説の主人公になぞらえて、「私」を「デミアン」と呼びました。

 彼女や、彼女の祖母とのふれあいが、「私」の心を少しずつ回復させていきました。
 わずか数日の滞在でしたが、別れの場面は哀切で、特に祖母の言葉が良かったです。

 「デミアン。貴方が素晴らしい人だということは初めからわかっていたんですよ。
 年老いたおばあちゃんというのはそういったことを見抜くことができるんでね。」

 人は、人とのふれあいによって、癒されるんだなあと、今さらながら思いました。
 「第5章フロリダーー新生」は、この本のクライマックスでしょう。

 さて、私にこの本を教えてくれたのは、齋藤孝の「読書入門」(新潮文庫)でした。
 その中で特に興味深かったのは、藤原正彦が述べている次のような考え方です。

 世の中の事象のほとんどはグレーゾーンで成り立っているから、数学的な論理力だけ
 ではなく、情緒のような曖昧なものを的確に言葉にする力が必要なのである、と。

 実際、「若き数学者のアメリカ」に登場する、若き日の藤原正彦の感受性はすごい。
 たとえば、「第4章太陽のない季節」では、「アメリカには涙がない」と言い・・・

 また、「第10章アメリカ、そして私」は、読んでいてしみじみしてきます。
 第1章から第10章まで読み通したとき、心があたたかくなっているのを感じました。

 さて、藤原正彦には、「国家の品格」という大ベストセラーがあります。
 「はじめに」の次のような言葉に、著者の意気込みがよく表れています。

 「欧米支配下の野卑な世界にあって、『孤高の日本』でなければいけません。
 『孤高の日本』を取り戻し、世界に範を垂れることこそが、日本の果たしうる、
 人類への世界史的貢献と思うのです。」


国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/20
  • メディア: 新書



 さいごに。(アリーナ中止)

 先日、 hey! Say! JUMP のアリーナ公演が中止となり、娘は落ち込みました。
 今度こそはぜひ見に行きたいと言って、はりきっていたので。

 「どうせチケットは当たらないんだから、カンケーないだろ」と思うのですが、
 娘にとっては、そういう問題ではないらしくて、ただただ落ち込んでいました。

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