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ラテンアメリカ文学入門1 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「ラテンアメリカ文学入門」 寺尾隆吉 (中公新書)


 約100年にわたるラテンアメリカ文学の動向を、分かりやすくまとめています。
 現代ラテンアメリカ文学史の入門書の決定版。2016年に中公新書から出ました。

 今年は20世紀ラテンアメリカ文学を中心に読みたくて、この本を手に取りました。
 全6章のうち、今回はブーム前夜の第2章までを、ざっくりとまとめてみました。


ラテンアメリカ文学入門 - ボルヘス、ガルシア・マルケスから新世代の旗手まで (中公新書)

ラテンアメリカ文学入門 - ボルヘス、ガルシア・マルケスから新世代の旗手まで (中公新書)

  • 作者: 寺尾 隆吉
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/10/19
  • メディア: 新書



 第1章 リアリズム小説の隆盛

 20世紀半ばまで識字率が低かった南米各国では、読書は特権階級の贅沢でした。
 文学は首都(アルカディア)の特権階級に独占されて、その活動は貧弱でした。

 アルカディアによる文壇支配を揺るがしたのが、アヴァンギャルド文学です。
 1910年代から西洋の動きに呼応して始まり、型破りで破天荒な物語が出ました。

 1920年頃からは合衆国の南下政策に対抗して、各国で国土開発が始まりました。
 この国家統合の動きに呼応した地方主義小説が、公的庇護のもと広がりました。

 地方の社会不正を訴えた告発小説や、野蛮の克服を描いた文明化小説が出ました。
 これ以後、政府は小説の有用性に気づき、急速に政治に組み込んでいきました。

 1920年代には、メキシコの政権は革命を正当化するための政策を展開しました。
 政府は、メキシコ革命の様子を伝える革命小説を、国民の一体化に利用しました。

 地方主義小説も革命小説も、国家統合を進める政府と利害が一致していました。
 1930年以降、小説の地位は上がりましたが、自由な精神は失われていきました。

 地方主義小説も革命小説も、本来は、現実を写すリアリズム文学を標榜しました。
 しかし、政治的主張の伝達を重視したため、社会の実態からは離れていきました。

 第2章 小説の刷新に向かって

 長い間、南米は流れ者の漂着する場所であり、西洋の関心を引きませんでした。
 パリで活動する2人の作家によって、南米文学はようやく脚光を浴びました。

 1930年のパリで、アストゥリアスは「グアテマラ伝説集」を出しました。
 古代マヤ文化をもとにした幻想的物語で、魔術的リアリズムの最初の作品です。

 この路線を継承したのが、同じくパリで活動していたカルペンティエールです。
 1949年の「この世の王国」で、南米には日常的に驚異があることを伝えました。

 1953年に彼が「失われた足跡」を出し、仏語訳されて大きな反響がありました。
 この成功が、1960年代のラテンアメリカ文学ブームの到来を準備したのです。

 一方南米のアルゼンチンでは、1930年代の混乱期に、幻想文学が開花しました。
 人々は危うい現実世界において、自分を支えるフィクションを必要としたのです。

 1940年には、ビオイ・カサーレスの記念碑的傑作「モレルの発明」が出ました。
 1944年には「伝奇集」が出て、ホルヘ・ルイス・ボルヘス名がも広まりました。

 確かに魔術的リアリズムの世界は驚異的でしたが、現実世界に依拠していました。
 ところがアルゼンチン幻想文学は、現実世界を虚構化する文学を目指したのです。

 この二つの方向を統合したのが、パリで活動していたフリオ・コルタサルです。
 1956年には「遊戯の終わり」を出し、幻想で現実を豊かにしようと目論見ました。

 メキシコでは、1955年にフアン・ルルフォが「ペドロ・パラモ」を出しました。
 この小説の成功が、メキシコ革命小説を一段落させ、新しい展開を用意しました。

 ブックガイド(個人的に気になる本で主に文庫になっているもの)

 「ブラス・クーバスの死後の回想」マシャード → 古典新訳文庫
 「マクナイーマ」アンドラーヂ → 単行本
 「グアテマラ伝説集」アストゥリアス → 岩波文庫
 「大統領閣下」アストゥリアス → 単行本
 「この世の王国」カルペンティエール → サンリオ文庫(絶版)
 「失われた足跡」カルペンティエール → 岩波文庫
 「モレルの発明」カサーレス → 単行本
 「ルゴーネス幻想短編集」ルゴーネス → 古典新訳文庫
 「伝奇集」ボルヘス → 岩波文庫
 「アレフ」ボルヘス → 岩波文庫
 「砂の本」ボルヘス → 岩波文庫
 「遊戯の終わり」コルタサル → 岩波文庫
 「ペドロ・パラモ」フアン・ルルフォ → 岩波文庫

 なお、岩波新書から出ている「ラテンアメリカ十大小説」も読んでみたいです。
 ボルヘス、ガルシア・マルケス、パルガス・リョサらの作品が紹介されています。


ラテンアメリカ十大小説 (岩波新書)

ラテンアメリカ十大小説 (岩波新書)

  • 作者: 木村 榮一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/02/19
  • メディア: 新書



 さいごに。(マスクがない)

 1週間ほどの間に、街からマスクがみごとに消えました。うちでも不足しています。
 妻と娘は、1日2枚使っていた日々を後悔し、1日1枚でしのいでいます。

 私はマスクをまったく使っていません。しなくても、めったに風邪をひかないので。
 しかし今、マスク着用がマナーになりつつあります。した方がいいかな・・・

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