オススメできないと思った3冊の本 [その他・雑感]
このブログでは基本的に、私のオススメの本ばかりを紹介しています。
しかし中には、あまりオススメできないけど、紹介したい本がいくつかあります。
その1 「ルビンの壺が割れた」 宿野かほる (新潮文庫)
30年前に結婚式をドタキャンされた男と、もと婚約者の女のメールのやり取りです。
2017年に刊行され、「何とも分類しようのない小説」として話題となりました。
一馬はフェイスブックで、かつての婚約者未帆子のアカウントを見つけました。
別れてから30年近くたっていましたが、思い切ってメッセージを送ってみました。
結婚式当日、あなたが現れなかったのは、いったいどうしてか?
未帆子とメールでやり取りする中で、ことのいきさつがしだいに明かされるが・・・
「衝撃の問題作」として売り出されたので、本屋で目について買ってしまいました。
式当日の花嫁の失踪には、何かロマンチックな理由があるのでは、と思いきや・・・
登場人物が抱えるおぞましい部分が、次から次に白日のもとにさらされていきます。
叔父、いいなずけ、未帆子、そしてなんと自分自身。実に後味の悪い作品でした。
結末は想定外。あっと驚く仕掛けがあります。しかし、コレ読んですっきりするか?
ただただびっくりしたいだけの人には、面白いかもしれませんが。
一般的にあまりオススメできません。というのも、私は吐きそうになったので。
娘がこの本に興味を持ちましたが、「読まない方がよい」とはっきり伝えました。
その2 「誰にもわかるハイデガー」 筒井康隆 (河出文庫)
ハイデガーの「存在と時間」を、分かりやすく解き明かした入門書です。2018年刊。
「文学部唯野教授・最終講義」とありますが、唯野教授の続編ではありません。
現存在、平均的日常、道具的存在者、事物的存在者、配慮的気遣い、実存、本来性、
共存在、世人、語り、頽落、未了、先駆、不安、世界内存在、時間内存在・・・
たとえば「現存在」を、「人間のこと」で「死ぬ存在」だと、簡潔に言い切ります。
「平均的日常」については、「人間がさしあたって生きている生き方」と言います。
このように、「存在と時間」の重要語句を分かりやすく定義しているところが良い。
ただし、筒井自身が述べているように、これで分かったつもりになってはいけない。
確かに本書は、「誰にもわかるハイデガー」です。
しかしそれは、誰にでもわかる部分しか説明していないからこそ成り立っています。
そういう意味で、少し中途半端な著書になってしまったように思いました。
私はむしろ、木田元の「ハイデガーの思想」(岩波新書)をオススメします。
その3 「忘れられた巨人」カズオ・イシグロ作 土屋政雄訳(ハヤカワepi文庫)
中世のブリテン島を舞台に、老夫婦が遠くにいる息子に会うため旅をする物語です。
2015年刊行。さまざまな寓意を持ち、賛否両論を巻き起こしたファンタジーです。
舞台はアーサー王が亡くなった直後のブリテン島です。ある村に老夫婦がいました。
その村では過去を語ることがありません。というより、村人の記憶が曖昧なのです。
「村人にとって、過去とはしだいに薄れていき、沼地を覆う濃い霧のようになってい
くもの。たとえ最近のことであっても、過去についてあれこれ考えるなど思いもよら
ないことだった。」(P17)
アクセルとベアトリスの老夫婦は、なぜ息子が一緒にいないかが思い出せません。
どこにいるのかさえ分からない息子を探して、あてのない旅に出かけますが・・・
面白そうな物語に思えるかもしれませんが、これほど眠くなる小説はありません。
話がぼんやりしていて分かりづらく、手ごたえが無いので実に頼りなく感じました。
もちろん、作者カズオ・イシグロは、それを狙ってやっているのだと思います。
だから最後まで読めば、納得できるのかもしれませんが、私は途中で挫折しました。
上記二冊は、読み終えた上でオススメできないと思ったので、すでに処分しました。
「忘れられた巨人」は3分の1も読んでいないので、しばらくはとっておきます。
以上の三冊は、私にその本の良さが分からないだけ、という可能性の方が高いです。
あくまで勝手な感想ですので、矛盾するようですが、ぜひ本を手に取ってください。
さいごに。(さいごの桜)
今年もさいごの桜が散りました。
昔は何も感じませんでしたが、年を取ったせいかしみじみ感じるようになりました。
しかし中には、あまりオススメできないけど、紹介したい本がいくつかあります。
その1 「ルビンの壺が割れた」 宿野かほる (新潮文庫)
30年前に結婚式をドタキャンされた男と、もと婚約者の女のメールのやり取りです。
2017年に刊行され、「何とも分類しようのない小説」として話題となりました。
一馬はフェイスブックで、かつての婚約者未帆子のアカウントを見つけました。
別れてから30年近くたっていましたが、思い切ってメッセージを送ってみました。
結婚式当日、あなたが現れなかったのは、いったいどうしてか?
未帆子とメールでやり取りする中で、ことのいきさつがしだいに明かされるが・・・
「衝撃の問題作」として売り出されたので、本屋で目について買ってしまいました。
式当日の花嫁の失踪には、何かロマンチックな理由があるのでは、と思いきや・・・
登場人物が抱えるおぞましい部分が、次から次に白日のもとにさらされていきます。
叔父、いいなずけ、未帆子、そしてなんと自分自身。実に後味の悪い作品でした。
結末は想定外。あっと驚く仕掛けがあります。しかし、コレ読んですっきりするか?
ただただびっくりしたいだけの人には、面白いかもしれませんが。
一般的にあまりオススメできません。というのも、私は吐きそうになったので。
娘がこの本に興味を持ちましたが、「読まない方がよい」とはっきり伝えました。
その2 「誰にもわかるハイデガー」 筒井康隆 (河出文庫)
ハイデガーの「存在と時間」を、分かりやすく解き明かした入門書です。2018年刊。
「文学部唯野教授・最終講義」とありますが、唯野教授の続編ではありません。
誰にもわかるハイデガー : 文学部唯野教授・最終講義 (河出文庫 つ 1-6)
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2022/03/05
- メディア: 文庫
現存在、平均的日常、道具的存在者、事物的存在者、配慮的気遣い、実存、本来性、
共存在、世人、語り、頽落、未了、先駆、不安、世界内存在、時間内存在・・・
たとえば「現存在」を、「人間のこと」で「死ぬ存在」だと、簡潔に言い切ります。
「平均的日常」については、「人間がさしあたって生きている生き方」と言います。
このように、「存在と時間」の重要語句を分かりやすく定義しているところが良い。
ただし、筒井自身が述べているように、これで分かったつもりになってはいけない。
確かに本書は、「誰にもわかるハイデガー」です。
しかしそれは、誰にでもわかる部分しか説明していないからこそ成り立っています。
そういう意味で、少し中途半端な著書になってしまったように思いました。
私はむしろ、木田元の「ハイデガーの思想」(岩波新書)をオススメします。
その3 「忘れられた巨人」カズオ・イシグロ作 土屋政雄訳(ハヤカワepi文庫)
中世のブリテン島を舞台に、老夫婦が遠くにいる息子に会うため旅をする物語です。
2015年刊行。さまざまな寓意を持ち、賛否両論を巻き起こしたファンタジーです。
舞台はアーサー王が亡くなった直後のブリテン島です。ある村に老夫婦がいました。
その村では過去を語ることがありません。というより、村人の記憶が曖昧なのです。
「村人にとって、過去とはしだいに薄れていき、沼地を覆う濃い霧のようになってい
くもの。たとえ最近のことであっても、過去についてあれこれ考えるなど思いもよら
ないことだった。」(P17)
アクセルとベアトリスの老夫婦は、なぜ息子が一緒にいないかが思い出せません。
どこにいるのかさえ分からない息子を探して、あてのない旅に出かけますが・・・
面白そうな物語に思えるかもしれませんが、これほど眠くなる小説はありません。
話がぼんやりしていて分かりづらく、手ごたえが無いので実に頼りなく感じました。
もちろん、作者カズオ・イシグロは、それを狙ってやっているのだと思います。
だから最後まで読めば、納得できるのかもしれませんが、私は途中で挫折しました。
上記二冊は、読み終えた上でオススメできないと思ったので、すでに処分しました。
「忘れられた巨人」は3分の1も読んでいないので、しばらくはとっておきます。
以上の三冊は、私にその本の良さが分からないだけ、という可能性の方が高いです。
あくまで勝手な感想ですので、矛盾するようですが、ぜひ本を手に取ってください。
さいごに。(さいごの桜)
今年もさいごの桜が散りました。
昔は何も感じませんでしたが、年を取ったせいかしみじみ感じるようになりました。
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