あしながおじさん [20世紀アメリカ文学]
「あしながおじさん」 ジーン・ウェブスター作 岩本正恵訳 (新潮文庫)
孤児院から大学生となったジュディが、支援者あしながおじさんに送った書簡集です。
作者は、マーク・トウェインの姪の娘だそうです。新潮文庫版は2017年の新訳です。
孤児院を出て高校を卒業したジュディは、特別に大学に進学することを許されました。
孤児院の評議員のひとりが、作家になる勉強をさせるためにお金を出すと言うのです。
ジュディは一瞬垣間見た影から、支援者をあしながおじさんと呼ぶようになりました。
その秋から大学4年間と数か月、ジュディはあしながおじさんに手紙を書き続けます。
あるとき、同室の友人ジュリアのもとに、叔父のジャービスさんが訪れました。
ジュディは、ジャービスさんといっしょに、短いながらも素敵な時間を過ごし・・・
物語の魅力は、ジュディの手紙の生き生きした内容です。まったく飾っていません。
時に喜び、時に悲しみ、おじさんを大好きだと言ったり、大嫌いだと言ったり・・・
「わたしはほんとうにひとりぼっちでーー壁を背にして世の中と戦っていますーーそ
のことを考えると、息が詰まりそうになります。けれども、それは頭から追い出して、
ふりを続けているのです。おじさま、どうぞご理解ください。わたしは必要以上のお
金は受け取れません。」(P126)
こんなふうに、ひょいと本心が垣間見えるところもまた、味わい深いです。
次のような言葉も、なかなか味わいがあります。
「おじさま、わたしはしあわせの真の秘密を発見しました。それは、今を生きるとい
うことです。いつまでも過去を後悔しつづけたり、未来に期待しつづけるのではなく、
今のまさにこの瞬間を可能なかぎり活かすのです。」(P184)
「たいていの人は、生きていません。競争しているだけです。」(P184)
ところが、わたしは長い間、名作と言われたこの小説を、敬遠していました。
「シンデレラストーリー」というより、「男の願望の作品だ」と言われるからです。
いったいあしながおじさんは、いつからジュディを好きになっていたのでしょうか。
好きになったから、大学入学を支援し、4年以上にわたってこっそり見守っていた?
無垢で純情な少女を、陰で観察しながら、自分の好みの女性に育てていく・・・
これは慈善事業というより、ヘンタイ趣味に近いですよ。
あしながおじさんの正体を知ったとき、ジュディはどのように思ったのでしょうか?
本当に、素直に喜んだのでしょうか? どこか気持ち悪く思わなかったでしょうか?
さて、サリーを主人公にした「続あしながおじさん」も、新潮文庫から出ています。
こちらも、たいへん読みやすく、評価の高い作品です。
さいごに。(「燃えよ剣」読み終わる)
先日娘が、司馬遼太郎の「燃えよ剣」上下巻を、読み終わりました。
学校の朝読書時間を中心に、半年ほどかけて少しずつ読み進めていたようです。
長編小説を読み通したのは初めてです。読書の楽しみを知ってくれると嬉しい。
ちなみに私は「燃えよ剣」を読んでいないので、感想の交換ができていません。
孤児院から大学生となったジュディが、支援者あしながおじさんに送った書簡集です。
作者は、マーク・トウェインの姪の娘だそうです。新潮文庫版は2017年の新訳です。
孤児院を出て高校を卒業したジュディは、特別に大学に進学することを許されました。
孤児院の評議員のひとりが、作家になる勉強をさせるためにお金を出すと言うのです。
ジュディは一瞬垣間見た影から、支援者をあしながおじさんと呼ぶようになりました。
その秋から大学4年間と数か月、ジュディはあしながおじさんに手紙を書き続けます。
あるとき、同室の友人ジュリアのもとに、叔父のジャービスさんが訪れました。
ジュディは、ジャービスさんといっしょに、短いながらも素敵な時間を過ごし・・・
物語の魅力は、ジュディの手紙の生き生きした内容です。まったく飾っていません。
時に喜び、時に悲しみ、おじさんを大好きだと言ったり、大嫌いだと言ったり・・・
「わたしはほんとうにひとりぼっちでーー壁を背にして世の中と戦っていますーーそ
のことを考えると、息が詰まりそうになります。けれども、それは頭から追い出して、
ふりを続けているのです。おじさま、どうぞご理解ください。わたしは必要以上のお
金は受け取れません。」(P126)
こんなふうに、ひょいと本心が垣間見えるところもまた、味わい深いです。
次のような言葉も、なかなか味わいがあります。
「おじさま、わたしはしあわせの真の秘密を発見しました。それは、今を生きるとい
うことです。いつまでも過去を後悔しつづけたり、未来に期待しつづけるのではなく、
今のまさにこの瞬間を可能なかぎり活かすのです。」(P184)
「たいていの人は、生きていません。競争しているだけです。」(P184)
ところが、わたしは長い間、名作と言われたこの小説を、敬遠していました。
「シンデレラストーリー」というより、「男の願望の作品だ」と言われるからです。
いったいあしながおじさんは、いつからジュディを好きになっていたのでしょうか。
好きになったから、大学入学を支援し、4年以上にわたってこっそり見守っていた?
無垢で純情な少女を、陰で観察しながら、自分の好みの女性に育てていく・・・
これは慈善事業というより、ヘンタイ趣味に近いですよ。
あしながおじさんの正体を知ったとき、ジュディはどのように思ったのでしょうか?
本当に、素直に喜んだのでしょうか? どこか気持ち悪く思わなかったでしょうか?
さて、サリーを主人公にした「続あしながおじさん」も、新潮文庫から出ています。
こちらも、たいへん読みやすく、評価の高い作品です。
さいごに。(「燃えよ剣」読み終わる)
先日娘が、司馬遼太郎の「燃えよ剣」上下巻を、読み終わりました。
学校の朝読書時間を中心に、半年ほどかけて少しずつ読み進めていたようです。
長編小説を読み通したのは初めてです。読書の楽しみを知ってくれると嬉しい。
ちなみに私は「燃えよ剣」を読んでいないので、感想の交換ができていません。
「マイ・フェア・レディ」とは違い、あしながおじさんはジュディに対して自分好みの教育は施していません。学費を出してやるのみですね。
見聞を広めにヨーロッパへ、という話もジュディは自分の意思で結局ははねつけています。
学費を出してやるのも、そもそも彼女の学習意欲と能力、何よりも自分の意思を持った人間である事(孤児院という画一的な人間となることを強いる非人道的な場所にいたにも関わらず)を見抜いていたからこそ。実際に会ってみたら、二人とも思いのほか気が合う、そして恋愛感情へ、という発展。無垢で純情な少女を自分好みに、というのとはかなり違う気がします。
続きの「親愛なる敵」をお読みになると、ジュディと親友サリーの意思的ない生き方が良く分かると思います。マクベスの引用もありますので。
by みみ (2021-02-02 18:46)
コメント、本当にありがとうございます。返信遅れてすみません。
普段ほとんどコメントが無いので、コメントのチェックをあまりしていないのです。(だから、コメントが少なくなったのですよね)
さて、確かにご指摘どおり、あしながおじさんはジュディを教育していいるとは言えませんね。続編も読みたいと思っています。
by ike-pyon (2021-02-14 06:43)