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痴人の愛 [日本の近代文学]

 「痴人の愛」 谷崎潤一郎 (宝島社文庫)


 妻にするために育ててきた少女ナオミに、翻弄され破滅する男を描いた物語です。
 1924年当時、「ナオミズム」という言葉が生まれたほど、話題となった作品です。

 新潮文庫から出ているのが定番だと思います。角川文庫などからも出ています。
 しかし私は2016年の宝島文庫版で読みました。カバー写真がなかなか良いので。


痴人の愛 (宝島社文庫)

痴人の愛 (宝島社文庫)

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/02/19
  • メディア: 文庫



痴人の愛 (新潮文庫)

痴人の愛 (新潮文庫)

  • 作者: 潤一郎, 谷崎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/11/28
  • メディア: 文庫



 主人公は河合譲冶。28歳の真面目な電気技師で、女遊びなどはしないタイプです。
 しかし彼は、浅草のカフェで女給をしているナオミを見初めてから変わりました。

 河合は、理想の女にするために、まだ15歳のナオミを引き取って育て始めます。
 一緒にお風呂に入ってナオミの体を洗ってやる(!)など、とても大切にします。

 また、ナオミに色々習わせますが、能力もやる気も無くて、まるで上達しません。
 料理も掃除も洗濯せず、家は散らかし放題。しかも贅沢三昧で家計を圧迫します。

 甘やかされて何もできないくせに、ナオミの肉体だけは河合を魅了していきます。
 そしていつしか二人の立場は逆転し、ナオミは河合を翻弄するようになりました。

 ナオミには、浜田とか熊谷とかいう大学生の取り巻きができていて・・・
 河合はナオミに失望し、すっかりふっきったはずだったのだが・・・

 さてこの作品は、谷崎のヘンタイ趣味を、ほどよく味わうことができる傑作です。
 ナオミの足に口づけしたり、ナオミを背中に乗せてお馬さんごっこをしたり・・・

 しかし、世間で言われているほどのマゾヒズム小説ではありませんでした。
 ここに出ているのは、足フェチや性的依存傾向など、適度なヘンタイ感です。

 それにしても、どうしようもない結末です。河合は本当に情けない男ですね。
 相手を支配しようとして逆に支配され、しまいには完全降伏してしまいます。

 「ナオミ! ナオミ! もうからかうのは好い加減にしてくれ! よ! 何でも
 お前の云うことは聴く!」(P373)(こんなこと言ったらオシマイでしょう)

 「じゃあ己を馬にしてくれ、いつかのように己の背中へ乗っかってくれ、どうし
 ても否ならそれだけでもいい!」(P374)(・・・アホか)

 あまりにも情けないので、かえって河合が、とても愛らしく思えてしまいます。
 がんばれ、河合! 堕ちるところまで堕ちていけ!

 1967年の映画「痴人の愛」が、2020年12月7日まで、gyaoで見られるそうです。
 最後の有名な「お馬さんシーン」だけでも、見てみたいです。

 さいごに。(いつのまにかママより高くて)

 娘が妻と並んでいるところを見て驚きました。娘の方が少し高かったからです。
 確かに、最近の娘の成長は著しかったのですが、ママの身長を超しているとは!

 ブログを始めた当時、2歳でちんまりしていたことを懐かしく思い出しました。
 現在14歳。食欲旺盛なので、ますます大きくなっていきそうです。

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