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オン・ザ・ロード2 [20世紀アメリカ文学]

 「オン・ザ・ロード」 ジャック・ケルアック作 青山南訳 (河出文庫)


 何かを求めて、あるいは何かから逃げて、アメリカ中を巡った若者たちの物語です。
 1957年に出てビートジェネレーションの聖典と呼ばれました。半世紀ぶりの新訳。


オン・ザ・ロード (河出文庫)

オン・ザ・ロード (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2010/06/04
  • メディア: 文庫



 前回「オン・ザ・ロード」の第二部以降は読まないと宣言しましたが、方針転換。
 映画を見たら続きを読みたくなり、結局、第二部から第五部まで読み切りました。

 物語の第二部以降、ディーン(=ニール・キャサディ)の登場がぐっと増えました。
 これをディーンの物語として読んだとき、第一部はただのイントロダクションです。

 物語を通して、ディーンの無鉄砲は相変わらずです。彼は、完全に狂っています。
 ディーンを、ある種の聖者と見なすか、ただのクズと断じるかは、微妙なところです。

 しかし、そういうよく分からないミステリアスな面こそ、ディーンの魅力でしょう。
 実は私も、映画のディーンの悪魔的な魅力に惹かれて、先を読むことにしたのです。

 第二部ではニューヨークからサンフランシスコへ、第三部では逆にニューヨークへ。
 第三部は一転、南下してメキシコへ。この間ほとんどディーンと一緒に走っています。

 「神はなにも気にしちゃいないんだよ。おれたちはいまこうして走ってるが、すべて
 はなるようになるとおれにははっきりわかってる・・・」(P192)

 皆がディーンに惹かれるところは、彼の即興的で神がかり的な熱狂なのだと思います。
 皆はおそらくディーンの中に、自分では決してつかめない神秘的なものを見たのです。

 170キロのスピードで、他人のキャデラックを、何時間も飛ばしていくディーン・・・ 
 思うに、皆が少しずつディーンから離れていくのもまた、神がかり的な熱狂ゆえです。

 ディーンの生きざまは、「ジャズ的」と言っても良いかもしれません。
 ディーンもジャズミュージシャン同様、「アレ」をつかまえようとしたのではないか。

 「聴いているほうはヤアヤア言いながらノッてくる、そしたらそこで運命に任せて昇
 っていくんだ。運命に負けないように吹いていく。すると、いきなりコーラスの真ん
 中で、アレが現れるんだ—みんなが見上げ、納得する。耳を傾ける。あとはそのアレ
 をつかまえて離さない。時間は止まる。」(P331)

 サックス同様彼らの物語も、クライマックスに向かってどんどん加速していきます。
 メキシコでの熱狂、狂乱、エクスタシー! ディーンのような連れがほしい!

 ディーンことニール・キャサディは、1968年に42歳で亡くなりました。
 メキシコの線路上で、裸で死んでいたというが、なぜか殉教した聖者を思わせます。

 「とつぜんぼくは気づいた、ディーンは山のように罪を重ねたがために、馬鹿者に、
 愚者に、仲間たちの聖者になったのだ、と。」(P310)

 キャサディの死の翌年、1969年にケルアックもまた亡くなりました。
 飲みすぎが原因だったようだが、キャサディのあとを追ったように思えてならない。

 さいごに。(耳年齢チェック)

 夏の人間ドックで、耳の聞こえが悪くなったと言われたので、気を付けています。
 私は10000ヘルツが聞こえるときと聞こえないときがあります。耳年齢は60歳。



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