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オン・ザ・ロード [20世紀アメリカ文学]

 「オン・ザ・ロード」 ジャック・ケルアック作 青山南訳 (河出文庫)


 何かを求めて、あるいは何かから逃げて、アメリカ中を巡った若者たちの物語です。
 1957年に出てビートジェネレーションの聖典と呼ばれました。半世紀ぶりの新訳。


オン・ザ・ロード (河出文庫)

オン・ザ・ロード (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2010/06/04
  • メディア: 文庫



 若い作家のサル・パラダイスは、1947年、友人のディーンに会うため出発しました。
 ヒッチハイクやバスで、サルは西へ進みます。いろんな仲間と出会い、別れながら。

 ようやくデンヴァ―に着き、ディーンや仲間のカーロに再会してみると・・・
 ディーンは最初の妻メリールウと新しい女カミールの二人と付き合っていて・・・

 第一部は、ニューヨークからデンヴァー、サンフランシスコ、ロサンジェルスを通り、
 横長の楕円形のコースをたどりながら、再びニューヨークに帰るまでを描いています。

 特に前半は、ディーンを筆頭にろくでもない連中が、ろくでもないことをしています。
 家族を見捨て、女を泣かせ、友人を裏切り・・・いったい、何が自由だ?!

 全く共感できません。体だけ大人になったガキどもです。ただの現実逃避ではないか!
 しかし、メキシコ娘のテリーと出会ってからは、急に物語が面白くなってきました。

 テリーは夫から逃げてきた身ですが、主要な人物の中では、唯一まともな人間でした。
 恵まれない境遇の中でも、なんとか状況を打開し、前に向かって進もうとしています。

 テリーと娘とサルの3人、綿摘みを一日やって、わずか1ドル50セント受け取る日々。
 サルが3人のことを神に祈る場面は感動的で、最後に別れる場面は本当に悲しかった。

 「葡萄の列のあいだを歩いていった。おたがい十二歩進んでから振り返った、愛は決闘
 だから。これが最後とばかりに見つめあった。」(P163)

 ここは名場面でしょう。ビリー・ホリデイの「ラヴァー・マン」を聴きたくなります。
 テリーはかけがえのない女。一緒にどこまでも逃れてゆくという選択肢はなかったか?

 さて、「オン・ザ・ロード」は、第二部、第三部、第四部と続きます。
 しかし、私は第一部だけでお腹いっぱいでした。その後の物語を読む気になれません。

 第二部以降は、映画で見て良しとしました。アマゾンプライム動画は306円でした。
 映画は紆余曲折の末、2012年に公開された作品。これが、意外と良かったのです。



 映画の展開はとても速いです。テリーに会った直後には、もう綿摘みをしているし。
 次の場面では別れているし。原作を読んでいないと、理解できないかもしれません。

 しかし、サル役とディーン役はとってもかっこいいです。メリールウもかわいいです。
 それから、カーロ・マルクスやブル・リーも、なかなか良い味を出していました。

 ところで、カーロ・マルクスのモデルは、詩人のアレン・ギンズバーグだと言う!
 さらに、ブル・リーのモデルは、問題作「裸のランチ」のウィリアム・バロウズ!

 そしてディーンのモデルは、ヒッピーに大きな影響を与えた男、ニール・キャサディ。
 彼は何も書かなかったが、多くの文学作品の中に登場し、伝説となったのだそうです。

 これは、ケルアックの自伝映画である以上に、ニール・キャサディの映画でした。
 多くの人が、伝説のニール・キャサディに逢いたくて、この映画を見たのではないか?

オンザロード.jpg

 さいごに。(2月発売の気になる文庫本3冊)

 「聊斎志異」蒲松齢著 廣野由美子訳(光文社古典新訳文庫)
 → いくつの作品が収録されているか、どの作品を選出しているのか、気になる。

 「清張地獄八景」みうらじゅん(文春文庫)
 → 松本清張の大ファンのみうらによる案内本。読めば清張地獄に落ちる。買い。

 「麦と兵隊・土と兵隊」火野葦平(角川文庫)
 → 火野葦平の代表作二つ。これらの名作が、今まで文庫で読めなかった。買い。

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