SSブログ

北回帰線1 [20世紀アメリカ文学]

 「北回帰線」 ヘンリー・ミラー作 大久保康雄訳 (新潮文庫)


 パリで友人宅を転々としながら送った、自堕落でハチャメチャな生活を描いています。
 混沌とした捉えがたさゆえに批判され、過激な性描写ゆえに発禁となった問題作です。


北回帰線 (新潮文庫)

北回帰線 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/03/12
  • メディア: 文庫



  「パリへきてから、もう二度目の秋だ。ぼくは、いまだに推察できずにいるある理由
 から、この土地へ追いやられてきたのである。
  ぼくは金がない。資力もない。希望もない。ぼくはこの世でいちばん幸福な人間だ。
 ・・・」(P12)

 「ぼく」は理由も分からずパリに来て、お金がないから友人の家を転々としています。
 アメリカの妻から為替が届くと、さっそく娼婦を買いに行く。そりゃ、幸福でしょう。

 「(彼女は)大儀そうにぼくのほうへ歩みよってきて、いかにもいとおしげに彼女の
 小猫(プッシイ)をこすりはじめた。二本の手で、さすったり、愛撫したり、軽くた
 たいたりした。そのときの彼女のおしゃべりや、ぼくの鼻さきへあの薔薇のつぼみを
 押しつけるしぐさなどに、何か忘れられぬものが残った。」(P82)

 というような、過激な性描写が登場することで、有名になってしまった名作です。
 私もまた、「過激な性描写」に惹かれて(?)この本を手に取った読者のひとりです。

 (ちなみに上記引用部分は、猫を飼っているわけでも薔薇を育てているわけでもない。
 小猫には「プッシイ」とふりがながあります。念のため。)

 さて、それにしても主人公「ヘンリー・ミラー」は、どうしようもないクズ野郎です。
 時々バカバカしくなって、本をたたきつけたくなりました。

 しかし、そう思いながらも、先を読まずにはいられません。これこそ文学の力です。
 そしてしばらくすると期待どおりに、ろくでもなくて面白い場面に出会えるのです。

 たとえばP40。トイレに急に女が入ってきたので、一物を持ったまま挨拶すると・・・
 またP191~。カールが捕まえた金持ち女はもう40で、カールは4日も糞が出ず・・・

 さらに傑作は、P350~P352のイヴェット嬢です。夫に締め上げられると喜んで・・・
 そして不意に、次のようなちょっと気の利いた(?)文章に遭遇したり・・・

 「もしも、われらの最後の日、饗宴の卓の用意がととのい、ドラが鳴りわたり、そし
 てここに、不意に、全然警告もなしに出されたものが一枚の銀盆であり、その上に二
 つのでっかい糞塊ーーそれ以上でもそれ以下でもないことが盲人にでもわかる糞のか
 たまりがのっていたとしたら、どうだろう。ぼくは信じる、それこそ人間が探し求め
 てきた何ものにもまさる奇蹟ではないかと。」(P170)

 とはいえ、内容は玉石混淆状態です。面白い話もあれば、意味不明の話もあります。
 酔っぱらって吐いたとか、犬が小便したとか、そんなことを誰が読みたいと思うか?

 それから、急にごちゃごちゃわけの分からないことを言い始める癖はやめてほしい。
 「これが小説か」と言った批評家がいたそうですが、そのいら立ちが分かりますよ。

 正直に言って、私は後半に入ってからは、だいぶ読み飛ばしました。
 全部で530ページほどですが、ギュッと圧縮して300ページぐらいにしてほしいです。

 さいごに。(メガネはどこ?)

 老眼がひどくて、眼鏡を外して本を読むので、よくメガネをどこかに置き忘れます。
 メガネを探すときは、メガネをかけていないので、なかなか見つかりません。

 時々予想外の場所から出てきます。今日は職場のトイレの手洗い場で発見しました。
 どうして? そういえばそこで、メガネを外して顔を洗ったような・・・

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。